要介護5は施設の選択肢が広い一方で、実際の可否を決めるのは要介護度より医療的な処置の内容です。「療養型病院」のうち介護保険のものは2024年3月末に廃止され、介護医療院に移っています。

中川 優美Yumi Nakagawa
まず知っておきたいこと
要介護5の認定が出ると、ご家族はいくつもの判断を一度に迫られます。このまま自宅で見られるのか、施設に移るのか、費用はいくらかかるのか。順に整理していきますが、その前に2つだけお伝えしておきたいことがあります。
1つめは、要介護5は施設の選択肢がむしろ広いということです。 特別養護老人ホームは原則要介護3以上が対象ですので、要介護5の方は制度上の条件を満たしています。介護老人保健施設や介護医療院も対象です。「介護が重いから入れない」ということはありません。
2つめは、実際に受け入れてもらえるかどうかを決めるのは、要介護度ではないということです。 たんの吸引や経管栄養、在宅酸素といった医療的な処置の内容と、施設の夜間の体制。この2つのほうが結果を左右します。要介護5の方は医療的な処置を伴うことが多いため、ここでつまずきやすくなります。
ですから、施設を探すときは「要介護5でも入れますか」ではなく、処置の名前を挙げて聞くほうが早く進みます。「たんの吸引は夜間もできますか」「経管栄養に対応していますか」というように尋ねてみてください。
要介護5とはどういう状態か
要介護5は、要介護認定のなかでもっとも介護の必要度が高い区分です。日常生活のほぼ全般で介助が必要になり、ご自身の力だけで生活を送ることが難しい状態を指します。
判定は、心身の状況についての調査と主治医の意見書をもとに、介護にかかる手間の量を推計して行われます。病名で決まるものではありません。同じ要介護5でも、寝たきりに近い方もいれば、認知症の症状が重く介助に時間がかかる方もいらっしゃいます。
ご家族にとっては、次のような変化が重なる時期にあたることが多いようです。
- 食事、排せつ、入浴のいずれにも手を添える必要が出てきた
- 夜間に何度も起きて対応することが増えた
- 通院の付き添いが体力的に難しくなってきた
- 医療的な処置が加わり、覚えることが増えた
これまで葛飾相談室でお会いしてきたご家族を思い返しても、要介護5は在宅と施設のあいだで揺れる時期にあたります。どちらが正しいという話ではありませんので、判断の材料は別記事「在宅を続けるか、施設にするか」も参考になさってください。
候補になる施設
要介護5で候補になる施設を、介護保険上の位置づけごとに整理します。
| 施設 | 対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 原則要介護3以上 | 費用を抑えやすく、長く暮らせます。地域によって待つことがあります |
| 介護老人保健施設(老健) | 要介護1以上、病状が安定していること | 医師が常勤し、リハビリの体制があります。在宅に戻ることを目指す施設です |
| 介護医療院 | 要介護1以上 | 長期の療養と生活の場を兼ねます。医療の必要度が高い方が対象です |
| 介護付き有料老人ホーム | 施設によります | 施設の職員が介護を提供します。費用の幅が広い類型です |
| 住宅型有料老人ホーム・サ高住 | 施設によります | 外部の訪問介護・訪問看護を使います。使う量に応じて費用が積み上がります |
| グループホーム | 認知症の診断があり要支援2〜要介護5 | 少人数の共同生活の場です。身体の介護が重くなると続けにくい場合があります |
特養の申し込みの仕組みは別記事「特養の入居条件」、老健については「老健とは」で詳しく整理しています。要介護度ごとの見方は「要介護度別の施設の選び方」もご覧ください。
制度上の条件と、実際の受け入れは別です
表のとおり、制度のうえでは多くの施設が候補になります。ですが、施設ごとに受け入れられる状態は違います。とくに次の処置は、施設によって対応が分かれやすいところです。
- 経管栄養(胃ろう、経鼻)、中心静脈栄養
- たんの吸引(とくに夜間)
- 在宅酸素、人工呼吸器の管理
- インスリンの注射、褥瘡(じょくそう。床ずれ)の処置
- 人工透析の通院
処置ごとの見極め方は、別記事「胃ろう・痰の吸引がある親の入居先」でまとめています。
なお、施設が「医療対応型」と名乗っていても、それは制度上の類型ではありません。夜間に看護職員が施設内にいるのか、電話で呼ぶ体制なのかは施設によって違いますので、呼び名ではなく体制を確かめてください。
「療養型病院」を探している方へ
要介護5の住まいを調べていると、「療養型病院」という言葉によく出会います。ここは制度が動いたところですので、ていねいに整理します。
介護保険の「療養型」は廃止されました
かつて、介護保険を使って長期に療養できる**介護療養型医療施設(介護療養病床)**という施設がありました。この類型は段階的に縮小され、経過措置の期限が2024年3月31日に終わって廃止されています。
移行先として設けられたのが介護医療院です。厚生労働省の公表によると、2024年4月1日時点で926施設・53,183療養床となっています。転換したもとをみると、介護療養病床をもつ病院が543施設(58.6%)、診療所が86施設(9.3%)で、医療療養病床から移ったところも一定数あります。
医療保険の「療養型」は続いています
ややこしいのは、「療養型病院」という言い方が2つのものを指してきたことです。
| 呼ばれ方 | いま | どの保険を使うか |
|---|---|---|
| 介護療養型医療施設(介護療養病床) | 2024年3月末で廃止。介護医療院へ | 介護保険でした |
| 医療療養病床 | 続いています | 医療保険 |
医療療養病床は、医学的な治療が必要な方が入院する病床で、いまも各地の病院にあります。ですので、「療養型病院はもうない」という理解も正確ではありません。探しているのが介護の場なのか、治療の場なのかで、行き先が変わります。
判断に迷われる場合は、いま入院中であれば病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)に、在宅であれば担当のケアマネジャーに、主治医が治療の継続を必要と考えているかどうかを確かめたうえで相談してみてください。
ただし、それぞれの相談先にできることには範囲があります。病院のMSWは退院後の行き先の調整が役割で、退院してからの住み替えは範囲の外になることがあります。担当のケアマネジャーは在宅のサービスの組み立てが本来の役割で、すべての施設の空き状況を把握しているわけではありません。地域包括支援センターは総合的な相談窓口ですが、個別の施設を紹介する機関ではありません。どこに何を頼めるかを分けて考えると、話が早く進みます。
費用の積み上がり方
要介護5の費用については、金額そのものより、積み上がり方の違いを先に押さえておくと比べやすくなります。大きく2つの形があります。
定額に近い形(施設サービス・介護付き有料老人ホーム)
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院といった施設サービスと、介護付き有料老人ホーム(特定施設)では、介護のサービス費が要介護度に応じた定額に近い形になります。そこに次の費用が加わります。
- 居住費(部屋代)
- 食費
- 日常生活費
- 施設によっては上乗せのサービス費、医療費、おむつ代など
要介護5は要介護度が高いぶん介護のサービス費も高くなりますが、使った量で青天井に増える形ではありません。
使った分だけ積み上がる形(住宅型有料老人ホーム・サ高住・自宅)
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、そして自宅で暮らす場合は、使った分だけ介護保険のサービス費が積み上がります。家賃や管理費はそれとは別にかかります。
要介護5のように介護の量が多いと、この形のほうが高くなることがあります。「家賃が安いほうが総額も安い」とは限りませんので、月々の合計で比べてください。
具体的な金額について
施設ごとの月額の目安は、要介護度、所得の区分、居室の種類、地域、加算の有無で大きく変わります。この記事では代表的な数字を並べることはせず、正確な最新の金額をまとめている記事へご案内します。
- 施設類型別の月額の目安は「費用を抑えて入れる老人ホームの探し方」
- 負担を軽くする仕組みは「介護費用を軽くする 2 つの制度」
実際に比べるときは、「標準的な月額」ではなく、ご本人の要介護度・所得区分・希望の居室で見積もりを出してもらうことをおすすめします。入院したときの扱いもあわせて確かめておくと安心です(別記事「入居中に入院したら費用と居室はどうなる」)。
在宅を続ける場合
施設に移らず、自宅で暮らし続ける選択もあります。その場合に知っておきたいのが、介護保険で使えるサービスの上限です。
要介護5の上限は月36,217単位
自宅で訪問介護やデイサービス、福祉用具の貸与などを使う場合、要介護度ごとに月の上限(区分支給限度基準額)が決まっています。要介護5は月36,217単位です。
標準的な地域で1単位10円として計算すると、月362,170円分のサービスにあたります。自己負担が1割の方なら、月36,217円が自己負担の上限の目安になります。2割・3割負担の方はその倍・3倍です。この上限を超えて使った分は全額自己負担になります。
この単位数は、令和6年度(2024年度)の介護報酬改定でも据え置かれた値です。次の改定は令和9年度(2027年度)が予定されていますので、改定の時期にはあらためて確認してください。
要支援1から要介護4までを含めた単位数の一覧は、別記事「介護保険サービスを使い始めるまで」にまとめていますので、ほかの区分もご覧になりたい場合はそちらをご参照ください。
施設に入るとこの上限の話ではなくなります
ここは誤解されやすいところです。特別養護老人ホームなどの施設サービス、介護付き有料老人ホーム(特定施設)、グループホームは、この区分支給限度基準額の対象外です。別の仕組みで費用が決まります。
ですから、「要介護5は月36万円分まで使えるから施設もそのくらい」という計算は成り立ちません。在宅の話と施設の話を混ぜないようにしてください。
在宅の負担が重くなってきたとき
要介護5で在宅を続ける場合、介護をされるご家族の負担が大きくなりがちです。次のような方法で、負担を分けることができます。
- ショートステイを定期的に組み込む進め方があります。数日間預かってもらうことで、休む時間を確保できます(別記事「ショートステイとは」)
- 訪問看護と在宅医療を組み合わせる進め方があります。医療的な処置がある場合、専門職に入ってもらうことで安全性が上がります
- 福祉用具の貸与や住宅改修を見直す方法もあります。介助する側の体の負担が減ります
ご家族が限界を感じているときは、ご本人の納得を待たずに一時的な支援を使っていただいてかまいません。倒れてしまっては元も子もありませんので、担当のケアマネジャーに率直にお伝えください。
なお、意識がはっきりしない、けいれんしている、急に体の片側が動かなくなったなど、**急を要する様子があるときは、相談の順番を待たずに救急(119)**を呼んでください。介護の相談と、医療の緊急対応は別のことです。
ご本人の意思を確かめる
住まいを変えるかどうかは、ご本人にとって大きな出来事です。要介護5の方はご自身で意思を伝えることが難しい場合もありますが、ご家族の判断だけで決めてよいということにはなりません。
契約の場面では、ご本人が内容を理解して意思表示できるか、難しい場合にご家族などに適切な代理権があるかを確かめることになります。判断が難しい状態が続いている場合は、成年後見の制度を使う進め方もあります。表情や以前おっしゃっていたことも手がかりになりますので、ご本人の希望とご家族の希望を分けて考えてみてください。
よくあるご質問
Q. 要介護5だとどんな施設に入れますか。
A. 選択肢は広いほうです。 特別養護老人ホームは原則要介護3以上が対象ですので、要介護5の方は対象になります。介護老人保健施設や介護医療院も要介護1以上が対象です。介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅も候補になります。ただし、制度上の条件を満たしていても、医療的な処置の内容によっては受け入れが難しい施設があります。要介護度よりも、必要な処置と夜間の体制のほうが実際の可否を左右します。
Q. 「療養型病院」を探しているのですが、いまもありますか。
A. 「療養型病院」と呼ばれてきたもののうち、介護保険が使えた介護療養型医療施設(介護療養病床)は、経過措置の期限が2024年3月31日に終わり、廃止されました。移った先が介護医療院です。厚生労働省の公表では、2024年4月1日時点で介護医療院は926施設・53,183療養床となっています。一方で、医療保険が使われる医療療養病床は別の仕組みとして続いています。同じ「療養型」でも中身が違いますので、探すときはどちらの話かを分けてお考えください。
Q. 要介護5だと介護保険をいくらまで使えますか。
A. 自宅で暮らしながら訪問介護やデイサービスなどを使う場合、要介護5の区分支給限度基準額は月36,217単位です。標準的な地域で1単位10円として計算すると月362,170円分にあたり、1割負担の方なら自己負担は月36,217円が上限の目安になります。超えた分は全額自己負担です。ただし、特別養護老人ホームなどの施設サービス、介護付き有料老人ホーム、グループホームはこの限度額の対象外で、別の仕組みで費用が決まります。
Q. 施設に入ると費用はどう変わりますか。
A. 積み上がり方が変わります。 特別養護老人ホームなどの施設サービスや介護付き有料老人ホームでは、介護のサービス費が要介護度に応じた定額に近い形になり、そこに居住費・食費・日常生活費が加わります。一方、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、家賃や管理費に加えて、使った分だけ介護保険のサービス費が積み上がります。要介護5のように介護の量が多い場合、外部のサービスを使う形のほうが高くなることがあります。
Q. 要介護5でもグループホームに入れますか。
A. 制度のうえでは対象になります。グループホームは認知症の診断を受けた要支援2から要介護5の方が対象です。ただし、少人数で共同生活を送る場が本来の姿ですので、身体の介護が重くなったり医療的な処置が増えたりすると、そのまま暮らし続けることが難しくなる場合があります。また、原則として施設のある市区町村に住民票が必要です。入居を考えるときは、どういう状態になったら住み替えが必要になるかを、先に確かめておいてください。
Q. 特養に申し込んでいますが、待っている間はどうすればよいですか。
A. 待つ前提で、その間の暮らしを組み立てておくと安心です。在宅サービスを組み直す、ショートステイを定期的に使う、介護老人保健施設や費用を抑えた施設を一時的な住まいとして使うといった方法があります。要介護5の方は判定で優先度が上がりやすい一方、申し込みは順番待ちではありませんので、介護をする方の状況や在宅での困りごとを具体的に伝えることが大切です。状況が変わったときは、申し込んだ施設に必ず連絡してください。
まとめ
要介護5の施設と費用について、大切な点を振り返ります。
- 要介護5は制度上の選択肢が広い区分です。特養も対象になります
- 実際の可否を決めるのは要介護度ではなく、医療的な処置の内容と夜間の体制です
- 施設に聞くときは「要介護5でも入れますか」ではなく、処置の名前を挙げて尋ねます
- 介護保険の「療養型病院」=介護療養型医療施設は、2024年3月末で廃止されました
- 移行先は介護医療院です(2024年4月1日時点で926施設・53,183療養床)
- 医療保険の医療療養病床は別の仕組みとして続いています。混同しないようご注意ください
- 費用は「定額に近い形」と「使った分だけ積み上がる形」に分かれます
- 家賃が安いほうが総額も安いとは限りません。月々の合計で比べます
- 在宅の上限は要介護5で月36,217単位。ただし施設サービスや介護付き有料はこの上限の対象外です
- ご家族が限界を感じているときは、ご本人の納得を待たずに一時的な支援を使ってかまいません
要介護5の住まい探しは、条件が重なるぶん時間がかかります。処置の内容から候補を絞り込みたいときは、お気軽にご相談ください。
参考文献・公的資料
- 介護保険法(平成9年法律第123号)— 要介護状態区分および施設サービスの対象(e-Gov 法令検索、2026年8月閲覧)
- 厚生省告示第33号 — 居宅介護サービス費等区分支給限度基準額(要介護5は月36,217単位。令和6年度改定でも据え置き。2026年8月閲覧)
- 厚生労働省「介護療養型医療施設の廃止に伴う留意点について」(令和6年3月29日事務連絡)— 経過措置期限の終了(2026年8月閲覧)
- 厚生労働省「介護医療院の開設状況等」(令和6年8月30日公表、令和6年4月1日時点)— 926施設・53,183療養床および転換元の内訳(2026年8月閲覧)
- 厚生労働省「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」(平成11年厚生省令第40号)— 老健の入所要件(e-Gov 法令検索、2026年8月閲覧)
