入院してもすぐに居室がなくなるわけではありません。ただし、費用の扱いと居室を確保できる期間は施設の種類と契約によって異なります。

中川 優美Yumi Nakagawa
まず知っておきたいこと
施設から「救急車で搬送しました」と連絡を受けたあと、少し落ち着いた頃にわいてくるのが、費用と居室の心配です。二重に払うことになるのではないか、部屋を引き払うことになるのではないか——そう考えるのは自然なことです。
先にお伝えしたいのは、入院したからといって、すぐに居室がなくなるわけではないということです。施設には、退院後に再び戻れるようにするための定めがあります。
ただし、その定めの強さも、入院中にかかる費用の考え方も、施設の種類によって別のものです。ここを混ぜて理解してしまうと、話がかみ合わなくなります。
| 種類 | 入院中の主な費用 | 居室の扱いの根拠 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(介護保険施設) | 居住費が中心。介護サービス費は外泊時の費用に切り替わる | 運営の基準で、おおむね3か月以内の退院見込みなら円滑な再入所が義務 |
| 介護老人保健施設・介護医療院(介護保険施設) | 同上 | 退院可能になったら速やかに再入所できるよう努める |
| 介護付き有料老人ホーム | 家賃・管理費は発生。介護サービス費はかからない | 契約による。指針で速やかな再入居に努めることが求められる |
| 住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅 | 家賃・管理費は発生。外部の介護サービス費はかからない | 同上 |
| グループホーム | 契約による | 契約による |
以下、それぞれ順に見ていきます。
介護保険施設の場合の費用
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)、介護老人保健施設、介護医療院は、いずれも介護保険の施設サービスを提供する施設です。ここでは費用が3つに分かれます。
- 介護サービス費(1割〜3割の自己負担)
- 食費
- 居住費(部屋代)
入院すると、この3つがそれぞれ次のように変わります。
介護サービス費は「外泊時の費用」に切り替わる
入院している間は、施設の介護サービスを受けていません。そのため、通常の施設サービス費に代えて、外泊時の費用として低い単位数が算定される仕組みになっています。その分、自己負担も下がります。
この外泊時の費用を算定できるのは、1か月につき、入院した日の翌日から起算して6日が限度です(1回の入院で月をまたぐ場合は、最大で連続12日まで)。また、その居室をショートステイに活用した日は、外泊時の費用を算定できないとされています。
食費は原則かからない
入院中は施設で食事の提供を受けませんので、その分の食費はかからないのが一般的です。ただし精算の方法は施設によって異なりますので、契約書と重要事項説明書をご確認ください。
居住費は引き続きかかることがある
ここが分かりにくい点です。厚生労働省の Q&A では、入院・外泊の際の居住費について、施設と利用者の契約により定められるべき事項としたうえで、居室がその方のために確保されているような場合は、引き続き居住費の対象として差し支えないとされています。
つまり、部屋を空けたまま押さえておいてもらう以上、部屋代は発生しうる、という考え方です。逆に言えば、その居室を他の方に使ってもらうことに同意した場合など、扱いが変わることもあります。ここは施設との相談になります。
負担限度額の軽減は入院が長引くと及ばなくなる
見落とされやすいのが、食費・居住費の軽減(特定入所者介護サービス費、いわゆる負担限度額認定)の扱いです。
同じ Q&A では、低所得の方への補足給付が及ぶのは、外泊時の費用を算定できる期間に限られるとされています。この期間は原則として1か月に6日が限度ですから、入院が長引くと軽減が及ばない日が出てきて、居住費の負担が上がることがあります。
負担限度額認定を使っている方ほど、この差は大きく感じられます。入院が決まった時点で、施設に「入院中の請求はいくらになるか」を確認しておくことをおすすめします。食費・居住費の軽減そのものの仕組みは、別記事「高額介護サービス費と負担限度額認定」で詳しくお伝えしています。
有料老人ホーム・サ高住の場合の費用
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、介護保険施設とは費用の考え方が異なります。こちらは住まいの契約が土台にあり、そこに介護サービスが乗る形です。
家賃・管理費は発生するのが一般的
居室を空けたまま確保している以上、家賃(または部屋代にあたる利用料)と管理費は入院中も発生するのが一般的です。住まいを借り続けている状態と考えると分かりやすいかもしれません。
有料老人ホームの家賃は、施設の整備に要した費用や修繕費、管理事務費などを基礎として算定するものとされており、入居している日数に応じて増減する性質のものではありません。
食費は契約による
食事は提供されませんので、食費は日割りなどで精算される契約が多く見られます。ただし、あらかじめ月額に含めている契約もあります。ここは契約書の記載によりますので、確認が必要です。
介護サービス費はかからない
介護サービスを受けていない期間は、その分の自己負担はかかりません。ただし、どのサービスが止まるかは施設の種類で違います。
- 介護付き有料老人ホーム・介護型サービス付き高齢者向け住宅:特定施設入居者生活介護を受けていないため、その自己負担はかかりません
- 住宅型有料老人ホーム・一般型サービス付き高齢者向け住宅:外部の訪問介護やデイサービスなどを個別に契約して使っています。入院中はそれらを利用しませんので、その自己負担はかかりません
なお、住まいと介護サービスの契約が分かれている点については、別記事「サービス付き高齢者向け住宅と住宅型有料老人ホームの違い」で整理しています。
医療費のほうも確認しておく
入院中は、施設の費用と入院医療費が重なります。医療費には高額療養費の仕組みがあり、同じ月にかかった医療費の自己負担には上限が設けられています。さらに、1年間(8月から翌年7月まで)の医療保険と介護保険の自己負担を合わせて軽減する高額医療・高額介護合算療養費の仕組みもあります。
適用の可否や金額は所得の区分や加入している医療保険によって異なります。お住まいの市区町村の窓口や、加入している医療保険(健康保険組合・協会けんぽ・後期高齢者医療広域連合など)にご確認ください。
居室は確保されるのか
「入院したら退去」と一律に決まっているわけではありません。ただし、確保の根拠と強さは種類によって違います。
特別養護老人ホームは「しなければならない」
指定介護老人福祉施設の運営の基準では、次のように定められています。
入所者について、病院又は診療所に入院する必要が生じた場合であって、入院後おおむね三月以内に退院することが明らかに見込まれるときは、その者及びその家族の希望等を勘案し、必要に応じて適切な便宜を供与するとともに、やむを得ない事情がある場合を除き、退院後再び当該指定介護老人福祉施設に円滑に入所することができるようにしなければならない
(指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準 第19条第1項)
「おおむね3か月以内に退院できる見込み」が条件になっている点と、「やむを得ない事情がある場合を除き」という但し書きがある点が大切です。3か月という数字がひとり歩きしがちですが、3か月間は必ず部屋が空いたまま確保される、という意味ではありません。退院の見通しが立たない場合の扱いは、施設との相談になります。
介護老人保健施設・有料老人ホームは「努める」
介護老人保健施設の運営の基準では、入院した入所者の病状が軽快して退院が可能となった場合には、再び速やかに入所させることができるよう努めなければならないとされています。期間の定めはありません。
有料老人ホームについても、厚生労働省の設置運営標準指導指針で、入居者が入院した後に病状が軽快して退院が可能となった場合には、再び速やかに入居させることができるよう努めることが求められています。
いずれも「努める」という表現であり、特別養護老人ホームの定めより弱いものです。実際にどうなるかは契約書の記載によりますので、入院が決まった段階で早めに確認してください。
契約書のどこを見るか
入居契約書には、契約解除の要件とその場合の対応を明示することが求められています。次の3点を探してみてください。
- 施設側から契約を解除できる条件(入院や長期不在に触れた条項があるか)
- 居室を確保する期間の定め(「◯日を超えたとき」といった記載があるか)
- 入院中の利用料の扱い(家賃・管理費・食費のそれぞれについて)
契約書の読み方そのものについては、別記事「重要事項説明書の読み方8項目」も参考にしてください。
入院が長引きそうなときに確認すること
退院の見通しが立たないときは、次の順で確認していくと整理しやすくなります。
1. 病院で確認すること
- 退院のおおよその見通し
- 退院後に必要になる医療的な処置(たん吸引、経管栄養、インスリン注射、在宅酸素など)
- 介護の必要度が入院前と変わりそうか
病院には医療ソーシャルワーカー(MSW)がいます。退院に向けた調整や、地域の相談先の案内を担当する職種です。ただし、MSW はケアマネジャーの代わりに施設を探してくれる立場ではありません。役割の違いを知ったうえで相談すると、話が進みやすくなります。
2. 施設で確認すること
- 居室をいつまで確保できるか
- その間の請求額(家賃・管理費・居住費・食費のそれぞれ)
- 退院後に必要になる医療的な処置に、その施設で対応できるか
3. 早めに判断すること
退院後に必要になる処置が増えると、元の施設では受け入れられないことがあります。その場合、退院日が決まってから探し始めると時間が足りません。退院の見通しが見えた段階で、次の住まいの検討を並行して始めておくと、選択肢を比べる余裕が生まれます。
医療的な処置がある方の施設探しについては、別記事「医療依存度が高い親の入居先の探し方」でお伝えしています。
4. 誰が決めるかを整理しておく
契約の解除や住み替えは、ご本人の住まいに関わる決定です。ご本人が理解して意思を示せる状態かどうかをまず確かめ、難しい場合は、ご家族に契約に関する適切な代理権があるかを整理したうえで進めます。判断が難しい状態が続くときは、成年後見の仕組みを検討することもあります(別記事「成年後見制度と入居契約」)。
退去を求められたときの相談先
入院をきっかけに、施設側から退去を求められることがあります。まずは契約書のどの条項に基づく話なのかを、施設に説明してもらってください。
有料老人ホームの設置運営標準指導指針では、入居契約書に定める設置者側の契約解除の条件は、信頼関係を著しく害する場合に限るなど、入居者の権利を不当に狭めるものとなっていないこととされています。契約解除の要件とその場合の対応を契約書に明示しておくことも求められています。
説明を受けても納得できないときは、次の窓口に相談できます。それぞれ守備範囲が異なりますので、内容に応じて選んでください。
| 窓口 | 相談できること | できないこと |
|---|---|---|
| 都道府県・政令市・中核市の有料老人ホーム担当課 | 運営や法令への適合の確認と、事業者への指導 | 賠償額や契約上の責任を確定すること |
| 市区町村の介護保険担当課 | 介護保険サービスに関する相談 | 住まいの賃貸借契約そのものの判断 |
| 消費生活センター | 契約に関する消費者としての相談 | 事業者への行政指導 |
| 法テラス(日本司法支援センター) | 弁護士への相談の案内、収入に応じた費用の立替え | 個別の紛争の代理そのもの(弁護士に依頼します) |
苦情の伝え方と窓口の使い分けは、別記事「施設への不満・苦情の伝え方と相談先」でも詳しくお伝えしています。
なお、退去を求められている状況とは別に、身体的な拘束や虐待が疑われるときは、施設内での話し合いを待たずに、市区町村の高齢者虐待の窓口に直接ご相談ください。生命や身体に差し迫った危険があるときは、救急(119)や警察(110)への連絡を優先してください。
よくあるご質問
Q. 入院している間も、施設の費用は払い続けるのですか。
A. 施設の種類によって扱いが分かれます。特別養護老人ホームなどの介護保険施設では、入院中は介護サービス費が 外泊時の費用 に切り替わり、その分の自己負担は下がります。食事は提供されないため食費はかからないのが一般的です。一方、居室をそのまま確保しておく場合の 居住費 は、引き続き負担の対象として差し支えないとされており、施設との契約によります。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、居室を確保している間の 家賃と管理費 は発生するのが一般的です。実際の扱いは契約書と重要事項説明書に書かれています。
Q. 入院すると部屋は引き払うことになりますか。
A. 入院したからといって、すぐに居室がなくなるわけではありません。特別養護老人ホームでは、入院後 おおむね3か月以内 に退院することが明らかに見込まれるときは、やむを得ない事情がある場合を除き、退院後に再び円滑に入所できるようにしなければならないと定められています。介護老人保健施設や有料老人ホームでは、退院が可能になったときに速やかに再び入所・入居できるよう 努める ことが求められています。入院が長引いたときの扱いは契約によりますので、早めに施設へ確認してください。
Q. 負担限度額認定を受けています。入院中も軽減は続きますか。
A. 介護保険施設の場合、食費・居住費の軽減が入院中も及ぶのは、外泊時の費用を算定できる期間 に限られます。この期間は原則として1か月に6日が限度とされているため、入院が長引くと軽減が及ばない日が出てきて、居住費の負担が上がることがあります。入院が決まった時点で、施設に請求額を確認しておくと安心です。
Q. 入院が長引きそうです。何をしておけばよいですか。
A. まず病院で、退院の見通しと、退院後に必要になる医療的な処置を確認します。そのうえで施設に、居室をいつまで確保できるか、その間の費用がいくらになるかを尋ねてください。元の施設に戻ることが難しそうなときは、退院日が決まる前 から次の住まいの検討を始めると、選択肢を比べる余裕が生まれます。契約の解除や住み替えはご本人の暮らしに関わる決定ですので、ご本人が意思を示せる状態かを確かめ、難しい場合はご家族の代理権を整理したうえで進めます。
Q. 入院を理由に退去してほしいと言われました。
A. 有料老人ホームの契約解除の条件は、信頼関係を著しく害する場合に限る など、入居者の権利を不当に狭めるものであってはならないとされています。まず契約書の解除条項を確認し、どの条項に基づく話なのかを施設に説明してもらってください。納得できないときは、都道府県・政令市・中核市の有料老人ホーム担当課 に相談できます。担当課は運営や法令への適合を確認して指導する窓口で、賠償額や契約上の責任を確定する窓口ではありません。契約の効力を争う段階では、消費生活センターや法テラスを通じて弁護士に相談する方法があります。
まとめ
入居中の入院について、大切な点を振り返ります。
- 入院しても すぐに居室がなくなるわけではありません。ただし確保の根拠と強さは施設の種類で異なります
- 介護保険施設では、介護サービス費が 外泊時の費用 に切り替わって自己負担は下がり、食費はかからないのが一般的です。一方 居住費は引き続きかかることがあります
- 負担限度額の軽減が及ぶのは外泊時の費用を算定できる期間まで(原則1か月に6日が限度)。入院が長引くと居住費の負担が上がることがあります
- 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅では、家賃と管理費は発生するのが一般的で、介護サービスを受けていない分の自己負担はかかりません
- 特別養護老人ホームは おおむね3か月以内の退院見込みなら円滑な再入所が義務、介護老人保健施設や有料老人ホームは 速やかな再入所・再入居に努める とされています
- 退院後に必要な処置が増えそうなときは、退院日が決まる前から 次の住まいの検討を始めます
入院中は、体調の心配と手続きが重なり、費用のことまで気が回らないものです。それでも、施設に確認する項目を絞っておけば、話は前に進みます。退院後の住まいで迷われたときは、ご家族だけで抱え込まず、お気軽にご相談ください。
参考文献・公的資料
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)第19条第1項(入院期間中の取扱い)(e-Gov 法令検索、2026年8月閲覧)
- 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)第30条第5項(協力病院等)(e-Gov 法令検索、2026年8月閲覧)
- 厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」(老発第0718003号、令和6年12月6日改正)9 サービス等・12 契約内容等
- 厚生労働省「平成17年10月改定関係Q&A」(平成17年9月7日 全国介護保険指定基準・監査担当者会議資料)問46 — 入院・外泊時の居住費および補足給付の取扱い
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.153(平成15年6月30日)介護報酬に係るQ&A(vol.2)— 外泊時費用の算定日数の取扱い
