原則は要介護3以上ですが、要介護1・2でも特例入所が認められることがあります。そして申し込みは順番待ちではなく、必要性を点数にして判定されます。

中川 優美Yumi Nakagawa
まず知っておきたいこと
特別養護老人ホーム(特養。介護保険法上の正式な名称は介護老人福祉施設)は、費用を抑えやすく、終身にわたって暮らせる施設として、多くのご家族が最初に検討されます。
調べ始める前に、2つのことを知っておいてください。この2つを知らないまま進めると、遠回りになります。
1つめは、要介護1・2でも入れる道があること。 「要介護3以上でないと申し込めない」と思い込んで、あきらめてしまう方がいらっしゃいます。原則はそのとおりですが、特例入所という仕組みがあります。
2つめは、申し込みが順番待ちではないこと。 「早く申し込んだほうが有利」と考えて、とりあえず名前だけ出しておく方がいらっしゃいます。ですが実際には、必要性を点数にして判定されます。あとから申し込んだ方が先に入ることもあります。
つまり、大切なのは早さではなく、実際の困りごとを漏れなく、具体的に伝えることです。以下、順に見ていきます。
入居条件
要介護度
原則として要介護3以上が対象です。要支援1・2の方、要介護1・2の方は、原則としては対象になりません(要介護1・2の特例は次の章で説明します)。
年齢
65歳以上が基本です。ただし、40歳から64歳の方でも、加齢に伴う特定の病気(介護保険の特定疾病)によって要介護認定を受けている場合は対象になります。
施設ごとの受け入れ条件
制度上の条件を満たしていても、施設ごとに受け入れられる状態が違います。とくに次の点は、施設によって対応が分かれます。
- たんの吸引、経管栄養、インスリンの注射などの医療的な処置
- 認知症の症状(ひとり歩き、大きな声が出るなど)
- 感染症の状態
- 看取りへの対応
制度の条件だけを見て「入れるはず」と考えると、実際の打診で止まることがあります。医療的な処置がある方については、別記事「胃ろう・痰の吸引がある親の入居先」もご覧ください。
特養とほかの施設の違い
費用や介護体制の違いは、別記事「特養と介護付き有料老人ホームの違い」で詳しく整理しています。
要介護1・2の特例入所
要介護1または要介護2の方でも、居宅で日常生活を営むことが困難で、やむを得ない事情がある場合には、特例的に入所が認められることがあります。
厚生労働省の指針では、次の4つの事情が示されています。
| やむを得ない事情 | |
|---|---|
| 1 | 認知症である方で、日常生活に支障を来すような症状・行動や、意思疎通の困難さなどが頻繁に見られること |
| 2 | 知的障害・精神障害などを伴い、日常生活に支障を来すような症状・行動や、意思疎通の困難さなどが頻繁に見られること |
| 3 | 家族等による深刻な虐待が疑われることなどにより、心身の安全・安心の確保が困難であること |
| 4 | 単身世帯である、同居家族が高齢または病弱であるなどにより家族等による支援が期待できず、かつ地域での介護サービスや生活支援の供給が不十分であること |
該当しそうな場合は、申し込みのときにその事情を具体的に伝えてください。 書類に「認知症あり」とだけ書いても、頻度や具体的な様子が伝わらなければ判断ができません。
とくに 3の虐待が疑われる場合は、申し込みを待つのではなく、市区町村の高齢者虐待の窓口に直接ご相談ください。 緊急に保護が必要なときは、市町村の判断で施設に入所させる措置の制度もあります。身の危険が差し迫っているときは、救急(119)や警察(110)への連絡を優先してください。
なお、特例入所に該当するかどうかは、施設と市区町村が個別に判断します。上の4つに当てはまりそうだからといって、必ず入所できるわけではありません。まずは担当のケアマネジャーに相談し、市区町村の窓口にも確認してください。
申し込みは順番待ちではない
ここがいちばん誤解されているところです。
特別養護老人ホームでは、定期的に入所判定の会議が開かれます。そこで、申し込んだ方それぞれの状況を点数にして総合的に評価し、必要性の高い方から入所していただく形になっています。
評価されるのは、おおむね次のような項目です。
| 項目 | 見られること |
|---|---|
| ご本人の状態 | 要介護度、認知症の症状、医療的な処置の必要性 |
| 介護する方の状況 | 介護する方がいるか、その方の健康状態・就労状況、介護の負担 |
| 待っている場所 | 自宅か、病院か、ほかの施設か |
| 在宅サービスの利用状況 | どれだけ使ってなお足りないか |
| 住まいの環境 | 段差、階段、住宅改修の可否 |
要介護度が高いほど優先度は上がりますが、それだけで決まるわけではありません。 介護する方の状況や、待っている場所も見られます。
判定の基準は、都道府県や市区町村が指針を定めています。埼玉県、千葉県、北九州市など、多くの自治体が独自の入所指針を公表しています。地域によって基準が違いますので、お住まいの自治体の指針を一度見ておくとよいでしょう。
判定の頻度や方法も施設・自治体によって異なりますので、申し込むときに「どのくらいの頻度で判定していますか」と聞いてみてください。
申し込みの手順と伝え方
手順
- 要介護認定を受ける(まだの場合。別記事「要介護認定の申請から結果までの流れ」)
- 地域の特養を調べる … 市区町村の高齢福祉の窓口、地域包括支援センター、担当のケアマネジャーに相談します
- 申込書を取り寄せる … 施設へ直接、または自治体経由です(自治体により異なります)
- 申し込む … 複数の施設に申し込める場合があります。申し込み先を広げることは現実的な手です
- 状況が変わったら連絡する … 判定の材料が変わります
伝え方
「早く入るためのこつ」を探される方が多いのですが、点数を上げるための工作という話ではありません。 大切なのは、実際の困りごとを漏れなく、具体的に書くことです。
書類の欄が小さいと、つい要約してしまいます。ですが、判定する側は書かれたことしか分かりません。
具体的に書きたいこと
- 夜間に何回起きるのか、そのたびに誰が対応しているのか
- 介護している方の健康状態(持病、通院、腰痛など)
- 仕事との両立の状況(休職している、時短にしている、退職を考えている)
- 在宅サービスをどれだけ使っていて、なお何が足りないのか
- 住まいの環境(階段、段差、トイレまでの距離)
- ご本人の症状のうち、頻度が高いもの
書ききれない事情は、担当のケアマネジャーに相談して補ってもらってください。 ケアマネジャーは、日々の記録という形で状況を把握しています。施設への情報提供という形で伝えてもらえることがあります。
なお、ご本人の意思も大切です。 ご家族が入所を希望していても、ご本人がどう考えているかは別に確かめ、書類にも書き分けてください。
待つ間の選択肢
待機の期間は地域によって大きく異なります。 申し込んですぐ入れる地域もあれば、長く待つ地域もあります。
大切なのは、待つ前提で、その間の暮らしを組み立てることです。何もしないまま待っていると、その間に介護している方が倒れてしまうことがあります。
考えられる方法は、次のとおりです。
- 在宅サービスを組み直す … 訪問介護、デイサービス、訪問看護の回数や組み合わせを見直します
- ショートステイを定期的に使う … 介護する方が休む時間を作ります(別記事「ショートステイとは」)
- 介護老人保健施設を使う … 在宅復帰を目的とした施設ですが、状況によっては選択肢になります(入所条件と「3か月ルール」の実際は別記事「老健とは」、退所後の住まいは「老健からの住み替え」)
- 費用を抑えた施設を一時的な住まいにする … ケアハウスや、費用の低い住宅型有料老人ホームなど(別記事「費用を抑えて入れる老人ホームの探し方」)
状況が変わったときは、申し込んだ施設に必ず連絡してください。 要介護度が上がった、介護している方が入院した、在宅サービスが足りなくなった——こうした変化は判定の材料になります。連絡しなければ、古い情報のまま判定され続けます。
よくあるご質問
Q. 特別養護老人ホームの入居条件を教えてください。
A. 原則として要介護3以上の方が対象です。年齢は65歳以上が基本ですが、40歳から64歳の方でも、加齢に伴う特定の病気により要介護認定を受けている場合は対象になります。要介護1・2の方でも、やむを得ない事情がある場合には特例入所が認められることがあります。ただし施設によって医療的な処置への対応の可否などが異なりますので、個別の確認が必要です。
Q. 要介護1・2でも入れる特例入所とは何ですか。
A. 厚生労働省の指針で4つのやむを得ない事情が示されています。①認知症により日常生活に支障を来す症状や意思疎通の困難さが頻繁に見られること ②知的障害・精神障害などを伴い同様の状態にあること ③家族等による深刻な虐待が疑われ心身の安全の確保が困難であること ④単身世帯である・同居家族が高齢または病弱などにより家族の支援が期待できず地域のサービスも不十分であること——の4つです。該当しそうな場合は、申し込みのときに事情を具体的に伝えてください。
Q. 申し込んだ順に入れるのですか。
A. 順番待ちではありません。 施設では定期的に入所判定の会議が開かれ、申し込んだ方それぞれの状況を点数にして総合的に評価します。要介護度だけでなく、介護する方の状況、今どこで待っているか、在宅サービスの利用状況なども見られます。つまり、あとから申し込んだ方が先に入ることもあります。判定の基準は都道府県や市区町村が指針を定めており、地域によって違います。
Q. 早く入るにはどうすればよいですか。
A. 点数を上げるための工作をするという話ではありません。大切なのは、実際の困りごとを漏れなく、具体的に伝えることです。夜間に何回起きるのか、介護している方の健康状態、仕事との両立、在宅サービスをどれだけ使ってなお足りないのか。書ききれない事情は担当のケアマネジャーに相談して補ってもらってください。また、複数の施設に申し込める場合がありますので、申し込み先を広げることも現実的な手です。
Q. 待っている間はどうすればよいですか。
A. 待機の期間は地域によって大きく異なります。待つ前提で、その間の暮らしを組み立ててください。 在宅サービスを組み直す、ショートステイを定期的に使う、介護老人保健施設や費用を抑えた施設を一時的な住まいとして使うなどの方法があります。状況が変わったときは、申し込んだ施設に必ず連絡してください。判定の材料が変わります。
まとめ
特養の入居条件について、大切な点を振り返ります。
- 原則は要介護3以上。年齢は65歳以上が基本で、40〜64歳も特定の病気なら対象です
- 要介護1・2でも、4つのやむを得ない事情があれば特例入所が認められることがあります
- 虐待が疑われるときは、申し込みを待たず市区町村の窓口へ。緊急時は119・110を優先します
- 申し込みは順番待ちではありません。必要性を点数にして判定されます
- 判定の基準は自治体ごとの指針で定められています。一度見ておくとよいでしょう
- 大切なのは早さではなく、実際の困りごとを漏れなく具体的に伝えることです
- 複数の施設に申し込める場合があります
- 待つ前提でその間の暮らしを組み立てます。状況が変わったら施設に連絡します
制度の条件を満たしていても、施設ごとに受け入れられる状態は違います。申し込みながら並行して選択肢を持っておきたいときは、お気軽にご相談ください。
参考文献・公的資料
- 厚生労働省「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」(平成26年12月12日 老高発第1212001号)— 特例入所の要件および入所の判定(2026年8月閲覧)
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1141(令和5年4月7日)— 特例入所に係る指針の改正について(2026年8月閲覧)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)— 介護老人福祉施設の入所対象および特定疾病(e-Gov 法令検索、2026年8月閲覧)
