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コラム施設の基礎知識ご家族向け

老健(介護老人保健施設)とは
入所条件・費用・3か月ルールの実際— 社会福祉士が整理 —

「老健は3か月で出されるんですよね」——見学や相談の場で、必ずと言っていいほど出てくる言葉です。 ですが、法令に「3か月で退所」という定めはありません。省令が求めているのは、居宅で暮らせるかどうかを定期的に検討して記録することです。一方、厚生労働省の解釈通知は、その検討を少なくとも3か月ごとに行うとしています。3か月は検討の周期であって、退所の期限ではありません。本記事では、入所条件と費用、そして誤解されやすい「3か月ルール」の実際、退所を求められたときの動き方までを整理しました。
掲載日:2026.08.21|監修:社会福祉士・入居相談員
この記事の答え

老健は在宅に戻ることを目指す施設です。「3か月で退所」という定めは法令になく、解釈通知が求めているのは在宅に戻れるかを少なくとも3か月ごとに検討することです。検討の周期であって、退所の期限ではありません。

介護老人保健施設(老健)は、医師の管理のもとでリハビリを行い、在宅での生活に戻ることを目指す施設です。入所の条件は要介護1以上で、年齢は65歳以上が基本、40歳から64歳の方も加齢に伴う特定の病気により要介護認定を受けていれば対象になります。病状が安定していて入院での治療を必要としない状態であることが前提です。よく言われる「3か月ルール」については、省令に退所の期限の定めはありません。省令が定めているのは「入所者の心身の状況、病状、その置かれている環境等に照らし、その者が居宅において日常生活を営むことができるかどうかについて定期的に検討し、その内容等を記録しなければならない」ことです。一方、その運用を示す厚生労働省の解釈通知(老企第44号)では、この検討を入所後早期に行い、その後も少なくとも3か月ごとには行うこととされています。つまり3か月という数字には根拠がありますが、それは検討の周期であって退所の期限ではありません。3か月を超えて入所を続けることもあれば、在宅に戻れる状態になって早く退所することもあります。ただし、老健は特養のように長期の生活の場を主目的とする施設ではなく、在宅復帰を支援することを目的としています。費用は介護保険施設ですので負担限度額認定の対象になります。金額は要介護度・居室の種類・加算・地域区分などで変わりますので、個別の見積もりで確認してください。
中川 優美(社会福祉士・入居相談員)
この記事の監修者

中川 優美Yumi Nakagawa

社会福祉士。ふれあい入居サポートセンター葛飾相談室にて、入居相談を担当。老健からの住み替えのご相談も多く承っている。
社会福祉士(国家資格)ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室高齢者向け住まい紹介事業者届出 25-0881
編集ポリシー:本記事は、介護保険法および介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)に基づいて執筆しています(2026 年 8 月に確認)。入所期間の運用、受け入れられる状態、費用は施設によって異なります。医療上の判断は主治医に、介護保険サービスの適用は担当のケアマネジャーおよびお住まいの市区町村にご確認ください。本記事内の事例はイメージで、特定の個人を表すものではありません。

まず知っておきたいこと

介護老人保健施設(老健)は、介護保険の施設サービスを提供する施設のひとつです。特別養護老人ホーム、介護医療院と並びます。

いちばん大切なのは、目的が違うということです。

施設目的
特別養護老人ホーム長期的な生活の場
介護老人保健施設(老健)在宅に戻ることを目指す。医療の管理とリハビリを提供する
介護医療院長期的な医療と介護の両方が必要な方の生活の場

老健には原則として常勤の医師が配置され、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などのリハビリ専門職が配置されています(サテライト型など、配置に特例のある類型もあります)。看護・介護職員についても、医学的管理やリハビリを前提とした人員配置の基準が設けられています。

つまり老健は、病院と自宅の間をつなぐ施設という位置づけです。入院して体力が落ちた、退院はできるがすぐには自宅で暮らせない——そうした場面で使われます。

ここを押さえておくと、後で出てくる「3か月ルール」の話も理解しやすくなります。特養のように長期の生活の場を主目的として作られた施設ではない、ということです。

入所条件

要介護度

要介護1以上の認定を受けていることが条件です。要支援の方は対象になりません。

特別養護老人ホームが原則要介護3以上であるのに対し、老健は要介護1から入れます。ここは実務上、大きな違いです。

年齢

65歳以上が基本です。ただし、40歳から64歳の方でも、加齢に伴う特定の病気(介護保険の特定疾病)により要介護認定を受けている場合は対象になります。

病状

急性期の入院治療を必要とせず、老健の医療・看護・介護の体制で対応できる状態であることが前提です。老健にも医師がいて必要な医療を提供しますので、「治療が必要なら入れない」ということではありません。病状が重く老健では対応できない場合に、病院などへの紹介が行われます。

「まだ治療が必要」という段階では対象になりません。逆に「治療は終わったが、すぐに自宅では暮らせない」という段階が、老健の想定する状態です。

施設ごとの受け入れ条件

制度上の条件を満たしていても、施設によって受け入れられる状態は異なります。たんの吸引や経管栄養などの医療的な処置、認知症の症状、感染症の状態については、個別に確認が必要です。

医療的な処置がある方については、別記事「胃ろう・痰の吸引がある親の入居先」もご覧ください。

「3か月ルール」の実際

ここが本記事でいちばんお伝えしたい部分です。

「老健は3か月で出される」と言われますが、法令に「3か月で退所」という定めはありません。

ただし、「3か月」という数字そのものに根拠がないわけでもありません。 ここは2段階に分けて見ると、正確に理解できます。

1段目:省令が定めているのは「検討して記録すること」

介護老人保健施設の運営の基準(省令)には、次のように定められています。

介護老人保健施設は、入所者の心身の状況、病状、その置かれている環境等に照らし、その者が居宅において日常生活を営むことができるかどうかについて定期的に検討し、その内容等を記録しなければならない。

(介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準 第8条第4項)

省令が定めているのは「期間」ではなく「定期的に検討して記録すること」です。 ここに退所の期限はありません。

2段目:解釈通知が「少なくとも3か月ごと」と示しています

一方、この基準の具体的な運用を示した厚生労働省の解釈通知には、次のようにあります。

医師、薬剤師(配置されている場合に限る。)、看護・介護職員、支援相談員、介護支援専門員等による居宅における生活への復帰の可否の検討は、入所後早期に行うこと。また、その検討は病状及び身体の状態に応じて適宜実施すべきものであるが、少なくとも三月ごとには行うこと。

(介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について 平成12年3月17日 老企第44号)

つまり「3か月」は、検討の周期として示されている数字です。 これが「3か月で退所」という意味で受け取られ、いわゆる「3か月ルール」として広まっている面があります。

だから、こうなります

  • 3か月ごとに求められているのは「検討」であって、「退所」ではありません
  • 3か月を超えて入所を続けることもあります。 あらかじめ3か月の入所期限があって、それを延長する、という制度ではありません
  • 逆に、3か月いられると決まっているわけでもありません。 在宅に戻れる状態になれば、それより早く退所することもあります
  • ただし、老健は特養のように長期の生活の場を主目的とする施設ではなく、在宅復帰を支援することを目的としています。「ずっといられますか」という前提で入所すると、後で行き詰まります

家族が確認しておきたいこと

入所するときに、次のことを確認しておいてください。

  1. 検討はどのくらいの頻度で行われるか
  2. どういう状態になれば在宅復帰と判断されるか
  3. 在宅に戻ることが難しい場合、どのくらいの期間まで対応してもらえるか
  4. 退所の話が出るとき、どのくらい前に知らせてもらえるか

とくに4番目は必ず聞いてください。次の住まいを探すには時間がかかります。「来月まで」と言われてから動くと、選択肢がほとんど残りません。

費用の考え方

老健は介護保険施設ですので、費用の構成は特別養護老人ホームや介護医療院と同じ形になります。

  • 介護サービス費の自己負担(1割〜3割)
  • 食費
  • 居住費
  • 日用品費など(実費)

負担限度額認定の対象になります

所得や資産の要件を満たして負担限度額認定を受けると、食費と居住費が軽くなります。これは介護保険施設とショートステイが対象の仕組みで、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では使えません。

金額と区分については、別記事「介護費用を軽くする 2 つの制度|高額介護サービス費と負担限度額認定」にまとめています。

費用は条件で変わります

「老健は特養より高い」と言われることがありますが、同じ条件で比べないと成り立ちません。 実際の自己負担額は、要介護度・居室の種類・基本報酬の区分・各種の加算・地域区分・食費・居住費・負担限度額認定の有無によって大きく変わります。老健にはリハビリや在宅復帰支援に関する加算がつく場合もあります。候補ごとに見積もりを取って比べてください。

また、在宅復帰の実績などに応じて施設に区分があり、区分によって費用が変わります。リハビリの体制も区分によって差があります。

金額は要介護度、居室の種類(多床室か個室か)、加算の有無、地域によって変わります。施設に見積もりを出してもらってください。 そのとき、負担限度額認定を受けられそうかもあわせて確認すると、実際の負担額が見えてきます。

特養・介護医療院との違い

介護保険施設は3つあります。混同されやすいので、表で整理します。

特別養護老人ホーム介護老人保健施設(老健)介護医療院
目的生活の場在宅復帰を目指す長期の医療と介護
入所条件原則要介護3以上要介護1以上要介護1以上
医師の位置づけ配置基準あり医学的管理を前提とした配置医学的管理を前提とした配置
リハビリ機能訓練指導員理学療法士等のリハビリ専門職が配置提供される
想定される期間長期的な生活在宅復帰を目指す期間長期
費用施設・居室・加算等により異なる施設・居室・加算等により異なる施設・居室・加算等により異なる
負担限度額認定対象対象対象

特別養護老人ホームを待つ間、老健を使うという進め方をされる方がいらっしゃいます。実際に、特養に申し込みながら老健を利用しているケースはあります。ただし老健は、医学的管理のもとでの介護や機能訓練などが必要な方を対象とし、入所の必要性は施設が判断します。「特養の待機場所として使うこと自体」を目的にした施設ではありません。入所するときに、老健としての入所の必要性と、退所後の見通しを施設と共有しておいてください。

特養との違いをさらに詳しく知りたい方は、別記事「特養と介護付き有料老人ホームの違い」「特養の入居条件」もご覧ください。

申し込みと退所のとき

申し込み

  1. 要介護認定を受ける(まだの場合。別記事「要介護認定の申請から結果までの流れ」)
  2. 地域の老健を調べる … 入院中であれば病院の医療ソーシャルワーカー、在宅であれば担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談します
  3. 施設に直接申し込む … 診療情報提供書など、医療の情報が求められることがあります
  4. 面談・判定 … ご本人の状態を確認したうえで、受け入れの可否が判断されます

入院中に申し込む場合、退院の日程との調整が必要になります。病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)は、退院支援や社会資源との調整を担う窓口です。どこまで施設探しを支援するかは、医療機関の体制によって異なります。候補を提示してくれる病院もあれば、方向性の整理までという病院もあります。役割を確認したうえで相談すると、話が進みやすくなります。

退院の期日が迫っている場合の進め方は、別記事「退院期日が迫る場合の施設選び」をご覧ください。

退所の見通しが示されたとき

まず、次の2つを具体的に確認してください。

  • いつまでに、という見通し
  • その理由(在宅復帰が可能と判断されたのか、施設として対応が難しくなったのか)

そのうえで、在宅に戻るのか、別の施設に移るのかを検討します。

  • 在宅に戻る場合 … 担当のケアマネジャーと一緒に、在宅サービスを組み直します。住宅改修や福祉用具も検討します
  • 別の施設に移る場合 … 退所の期日が決まってから動くと間に合わないことがあります。 見通しが見えた段階で並行して始めてください

老健には支援相談員がいます。 退所後の生活について、本人・家族や、担当のケアマネジャー・関係機関との調整を担う職種です。まず相談してみてください。ただし、どこまで具体的な施設探しを支援するかは施設によって異なりますので、候補を幅広く比べたいときは入居相談の窓口も併せて使う方法があります。

老健からの住み替えについては、別記事「老健からの住み替え|退所後の住まいの選び方」で詳しくお伝えしています。

よくあるご質問

Q. 老健の入所条件を教えてください。

A. 要介護1以上の認定を受けていることが条件です。年齢は65歳以上が基本で、40歳から64歳の方も加齢に伴う特定の病気により要介護認定を受けていれば対象になります。加えて、病状が安定していて入院での治療を必要としない状態であることが前提です。要支援の方や、入院治療が必要な状態の方は対象になりません。

Q. 3か月で退所しなければならないのですか。

A. 法令に「3か月で退所」という定めはありません。 基準が求めているのは、居宅で日常生活を営むことができるかどうかを定期的に検討し、その内容を記録することです。実務ではおおむね3か月ごとに検討が行われることが多く、そこから「3か月ルール」と言われるようになりました。状態によって延びることもあれば、早く在宅に戻る方もいます。 ただし在宅復帰を目的とする施設ですので、長く暮らす場としては想定されていません。

Q. 特別養護老人ホームとは何が違いますか。

A. 目的が違います。 特別養護老人ホームは生活の場で、原則として終身にわたって暮らせます。老健は在宅に戻ることを目指す施設で、医師が常勤で配置され、理学療法士や作業療法士などによるリハビリが提供されます。入所条件も違い、特養は原則要介護3以上、老健は要介護1から対象です。費用は、医療とリハビリの体制があるぶん老健のほうが高くなりやすい傾向があります。

Q. 費用はどれくらいかかりますか。

A. 介護保険施設ですので、介護サービス費の自己負担・食費・居住費・日用品などがかかります。所得や資産の要件を満たして負担限度額認定を受けると、食費と居住費が軽くなります。金額は要介護度、居室の種類、基本報酬の区分、加算の有無、地域区分によって大きく変わりますので、施設に見積もりを出してもらってください。「老健は特養より高い」と言われることがありますが、同じ条件で比べないと成り立ちません。候補ごとに見積もりを取って比べてください。

Q. 退所を求められたらどうすればよいですか。

A. まず、いつまでにという見通しと、その理由を具体的に確認してください。あわせて、在宅復帰の可否をどのように検討しているのか、在宅に戻るには何が必要なのかも聞いておくと、次の手が決めやすくなります。そのうえで、在宅に戻るのか、別の施設に移るのかを検討します。在宅なら担当のケアマネジャーとサービスを組み直します。別の施設を探す場合は、退所の期日が決まってから動くと間に合わないことがありますので、見通しが見えた段階で並行して始めてください。老健の支援相談員にも相談してください。

まとめ

老健について、大切な点を振り返ります。

  1. 老健は 在宅に戻ることを目指す施設。原則として常勤の医師が配置され、リハビリ専門職が配置されています
  2. 入所条件は 要介護1以上。特養(原則要介護3以上)より入りやすい面があります
  3. 急性期の入院治療を必要とせず、老健の体制で対応できる状態であることが前提です
  4. 「3か月で退所」という定めは法令にありません。 省令が求めているのは定期的に検討して記録することです
  5. 一方、解釈通知は「少なくとも3か月ごとに検討する」としています。3か月は検討の周期であって、退所の期限ではありません
  6. ただし、老健は特養のように長期の生活の場を主目的とする施設ではありません。「ずっといられる」前提で入所しないでください
  7. 入所時に 「退所の話はどのくらい前に知らせてもらえるか」を確認しておくと安心です
  8. 費用は 負担限度額認定の対象。金額は要介護度・居室・加算・地域区分で変わるため、同じ条件で見積もりを比べてください
  9. 退所の話が出たら、期日が決まる前から次の住まいの検討を始めます

老健は、在宅復帰に向けて心身の状態を整え、その後の暮らしを考える大切な期間にもなります。在宅復帰が難しく、別の住まいを検討する必要が出てきたときは、お気軽にご相談ください。

参考文献・公的資料

  1. 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)第8条(入退所)第4項、第24条の2 — 居宅において日常生活を営むことができるかどうかの定期的な検討および記録(厚生労働省法令等データベース、2026年8月閲覧)
  2. 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について(平成12年3月17日 老企第44号)第四 運営に関する基準 三 入退所 — 居宅における生活への復帰の可否の検討は入所後早期に行い、病状及び身体の状態に応じて適宜実施すべきものであるが、少なくとも三月ごとには行うこと(厚生労働省法令等データベース、2026年9月閲覧)
  3. 介護保険法(平成9年法律第123号)— 介護老人保健施設の定義および特定疾病(e-Gov 法令検索、2026年8月閲覧)
  4. 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」— 介護老人保健施設のサービス内容および人員配置(2026年8月閲覧)

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