足立区は特別養護老人ホームが 41 か所あり、23 区でいちばん多い数です。ただし数の多さは待ちやすさを意味しません。申し込みを早めに出しつつ、結果が出るまでの住まいを同時に考えておくのが現実的です。

中川 優美Yumi Nakagawa
足立区にある施設の数
まず、区内にどの種類が何か所あるのかを見てみましょう。
| 施設の種類 | 足立区内の数 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設) | 41 |
| 介護老人保健施設(老健) | 14 |
| 介護付有料老人ホームなどの特定施設 | 30 |
| グループホーム(認知症対応型共同生活介護) | 36 |
| 合計 | 121 |
目を引くのは、特別養護老人ホームの 41 と 介護老人保健施設の 14 です。どちらも介護保険の施設サービスにあたり、費用が抑えられやすい種類になります。この 2 つが厚いことが、足立区の特徴です。
23 区の中での足立区の形
同じ公的データで 23 区すべてを数え、特徴の出る区を抜き出しました。特別養護老人ホームの数が、介護付有料老人ホームなどの特定施設の数の何倍になるかを右に置きました。
| 区 | 特養 | 特定施設 | 特養は特定施設の何倍か |
|---|---|---|---|
| 荒川区 | 7 | 4 | 1.75 |
| 葛飾区 | 20 | 13 | 1.54 |
| 豊島区 | 10 | 7 | 1.43 |
| 足立区 | 41 | 30 | 1.37 |
| 江東区 | 18 | 14 | 1.29 |
| (中略) | |||
| 練馬区 | 38 | 80 | 0.47 |
| 世田谷区 | 26 | 82 | 0.32 |
| 大田区 | 18 | 59 | 0.31 |
| 文京区 | 4 | 16 | 0.25 |
値が 1 より大きいほど、特養のほうが数が多いことになります。23 区のうち、1 を超えるのは 8 区(荒川区・葛飾区・豊島区・足立区・江東区・台東区・墨田区・北区)です。残りの区では、介護付有料老人ホームなどのほうが多くなっています。
足立区について、23 区すべてを数えて分かったことが 2 つあります。
- 特別養護老人ホームの 41 は、23 区でいちばん多い数です。2 番目は練馬区の 38、3 番目は世田谷区と江戸川区の 26 でした
- 介護老人保健施設の 14 も、練馬区と並んで 23 区で最も多い数です
つまり足立区は、介護保険の施設サービスにあたる種類が、23 区でいちばん厚い区だと言えます。費用を抑えられる種類から探し始められる、という意味では有利な条件です。
なお、公表されているデータには各施設の定員も載っているのですが、記録されていない施設が種類によって大きく違うため(足立区では特養の 76 パーセント、特定施設の 50 パーセントにしか定員が入っていません)、本記事では定員どうしの比較はしていません。施設数だけが、欠けのないかたちで比べられる数字だからです。
数が多いことと、入りやすいことは別です
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
施設の数は、その区で介護を必要としている方の数と切り離しては読めません。41 か所あるということは、それだけの必要があるということでもあります。数が多いから待たずに入れる、とは言えません。
東京都の調査によると、都内の特別養護老人ホームへの入所申込者は 20,650 人でした(令和 7 年 4 月 1 日時点)。このうち要介護 3 以上の方が 18,776 人、在宅で要介護 3 以上かつ入所の優先度が高いと判定された方が 2,888 人です。同じ資料では、都内の施設定員が 54,104 人、令和 6 年度の 1 年間に新しく入所した方が 19,394 人と示されています。
この数字の読み方には、押さえておきたい点が 3 つあります。
- 申し込みは着いた順ではありません。 区市町村や施設が、介護の必要の程度、ご家族の状況、居宅サービスの利用の状況などを勘案して、入所の優先度を判定します。ですから「何番目だからいつ」という見通しは立ちません
- 1 人で複数の施設に申し込んでいる場合は重複を除いた数です。上の 20,650 人は名寄せ済みの人数です
- これは東京都全体の数字です。足立区の待ち時間を表すものではありません。区ごと・施設ごとの内訳は公表されていません
申し込みの条件と、要介護 1・2 の方でも申し込める特例入所については、別記事「特養の入居条件|特例入所と申し込みの実際」で詳しく扱っています。
運営しているのはどんな法人か
同じデータで法人名を見ると、種類ごとに分かれていました。
| 施設の種類 | 運営している法人 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム(41) | 社会福祉法人 40、その他 1 |
| 介護老人保健施設(14) | 医療法人 14 |
| 特定施設(30) | 営利法人 28、医療法人 1、社会福祉法人 1 |
| グループホーム(36) | 営利法人 23、医療法人 9、社会福祉法人 3、特定非営利活動法人 1 |
特別養護老人ホームはほとんどが社会福祉法人、介護老人保健施設は 14 か所すべてが医療法人でした。制度のうえでそうなりやすい分かれ方です。
足立区で目立つのは、グループホーム 36 か所のうち 9 か所を医療法人が運営している点です。葛飾区では医療法人のグループホームは 1 か所でしたので、この区の特徴と言えます。医療法人が母体の場合、併設または近くの医療機関と連携しやすいことがあります。ただし連携の中身は施設ごとに違いますので、どこまで対応できるかは個別に確かめてください。
費用はどれくらいか
ここまでは施設の数を見てきました。次は費用です。東京都は、都内の有料老人ホームの一覧を毎月公表していて、そこには各施設が届け出た代表的な料金プランの実額が載っています。足立区のぶんを集計しました。
| 施設数 | 月額の中央値 | いちばん安い〜高い | 前払金 | |
|---|---|---|---|---|
| 介護付有料老人ホーム | 31 | 199,500 円 | 85,000 円〜419,580 円 | あり 11/なし 20 |
| 住宅型有料老人ホーム | 38 | 152,044 円 | 100,000 円〜214,000 円 | あり 1/なし 37 |
同じ資料で 23 区の介護付有料老人ホーム 618 施設を集計すると、月額の中央値は 252,250 円でした。足立区の 199,500 円は、それより 5 万円ほど低い水準です。ただし足立区の介護付は 8.5 万円から 41.9 万円まで幅が大きく、中央値だけを見て判断できる区ではありません。
住宅型の前払金についても、はっきりした傾向があります。都内の住宅型 326 施設のうち、前払金があるのは 46 施設(14 パーセント)だけで、残りは前払金なしです。一方で介護付は 873 施設のうち 557 施設(64 パーセント)に前払金があり、前払金があるところの中央値は約 910 万円でした。前払金の返金の計算式は施設ごとに違いますので、契約前に必ず確かめてください。読み方は別記事「重要事項説明書の読み方」にまとめています。
この区での探し方の順番
ここまでの数を踏まえて、足立区での進め方を 3 つにまとめます。
1. 特別養護老人ホームの申し込みを、早めに出しておく
区内に 41 か所あり、申し込み自体に費用はかかりません。複数の施設に申し込むこともできます。結果が出るまで時間がかかる可能性がありますので、他の準備と並行して先に出しておくのが現実的です。
2. 待つ間の住まいを、同時に考えておく
ここが抜けやすいところです。介護老人保健施設を使う、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に移る、いったん自宅に戻って訪問介護を組む——いくつかの形があります。どれが合うかはご本人の状態と費用で変わりますので、「待つ間はこうする」を先に決めておくことをおすすめします。
要介護度ごとの考え方は別記事「要介護度別の施設の選び方」に、医療の処置がある場合は「胃ろう・痰の吸引がある親の入居先」にまとめています。
3. 介護老人保健施設の使い方を知っておく
足立区は介護老人保健施設が 14 か所と多く、この区で使いやすい選択肢です。ただし老健は在宅復帰を目指す施設という位置づけで、住み続ける前提の場所ではありません。「3 か月で退所」とよく言われますが、その期間は法令で決まっているものではなく、施設ごとの運用です。考え方は別記事「老健とは」で整理しました。
費用の負担を軽くする制度もあります。詳しくは別記事「介護費用を軽くする 2 つの制度」をご覧ください。まだどこにも相談していない段階でしたら、まずお住まいの地域の地域包括支援センターに連絡してみるのがよいでしょう。相談の切り出し方は「ケアマネ・地域包括への最初の相談」で扱っています。
区の外を候補から外さない
足立区は埼玉県の川口市・草加市・八潮市と接していて、区内でも荒川と隅田川に挟まれた地域と、北の地域とでは、通いやすさがかなり違います。「区内なら近い」とは限りません。
介護保険には住所地特例という決まりがあります。他の市区町村にある対象の施設へ移って住民票をそちらに移した場合でも、介護保険は移る前の市区町村が引き続き行う、という仕組みです。つまり足立区にお住まいの方が区外の施設に移っても、介護保険の窓口は足立区のままになる場合があります。
ただし、対象になる施設の種類は決まっていますし、生活保護を受けている場合など手続きが変わることもあります。詳しくは別記事「入居と住民票・住所地特例」で整理しました。実際の取り扱いは、お住まいの区市町村の窓口にご確認ください。
同じ公的データで、足立区と隣り合う市区もあわせて数えてみました。
| 範囲 | 特養 | 老健 | 特定施設 | グループホーム | 計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 足立区内だけ | 41 | 14 | 30 | 36 | 121 |
| 隣り合う市区を足す (葛飾・江戸川・墨田・北・荒川・草加・八潮・三郷・川口) | 172 | 54 | 188 | 214 | 628 |
特養は 41 か所でも 23 区で最多ですが、介護付有料老人ホームなどの特定施設は、区内の 30 か所が、通える範囲では 188 か所になります。とくに江戸川区は 45 か所、川口市は 43 か所と多く、どちらも足立区から遠くありません。
大切なのは「区内かどうか」ではなく、ご家族が無理なく通える範囲かどうかです。電車やバスで実際にかかる時間を測ってみると、区外のほうが近いことも珍しくありません。
よくあるご質問
Q. 足立区には特別養護老人ホームがいくつありますか。
41 か所です。このほかに介護老人保健施設が 14、介護付有料老人ホームなどの特定施設が 30、グループホームが 36 あり、合わせて 121 か所になります。ただしこの数え方には、介護保険の事業所ではない住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅が入っていません。実際に選べる住まいは、この数より多くなります。
Q. 足立区は特別養護老人ホームが多い区なのでしょうか。
23 区でいちばん多い数です。2 番目が練馬区の 38、3 番目が世田谷区と江戸川区の 26 でした。ただし数が多いことと入りやすいことは別の話です。施設の数は、その区で介護を必要としている方の数と切り離しては読めません。41 か所あるのは、それだけの必要があるからでもあります。施設の数だけで待ちやすさを判断することはできません。
Q. 特別養護老人ホームは、申し込んでからどれくらい待ちますか。
待つ期間は施設ごとに大きく違い、まとまった形では公表されていません。申し込みは着いた順ではなく、介護の必要の程度やご家族の状況などを勘案して優先度が判定されます。「何番目だからいつ」という見通しは立ちませんので、待つ間の住まいを別に考えておくことが現実的です。
Q. 足立区の施設は、どんな法人が運営していますか。
特別養護老人ホーム 41 か所はうち 40 か所が社会福祉法人、介護老人保健施設 14 か所はすべて医療法人、特定施設 30 か所は 28 か所が株式会社などの営利法人でした。グループホーム 36 か所は営利法人が 23、医療法人が 9、社会福祉法人が 3 などです。足立区は医療法人が運営するグループホームが 9 か所あり、葛飾区の 1 か所と比べて多くなっています。
Q. 区外の施設に申し込んでもよいのですか。
申し込めます。介護保険には住所地特例という決まりがあり、他の市区町村にある対象の施設へ移って住民票を移した場合でも、介護保険は移る前の市区町村が引き続き行います。ただし対象になる施設の種類は決まっていますし、手続きが変わる場合もありますので、区市町村の窓口にご確認ください。
まとめ
足立区の施設を、数から整理してきました。
- 区内には特別養護老人ホーム 41、介護老人保健施設 14、介護付有料老人ホームなどの特定施設 30、グループホーム 36 があります(住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は別にあります)
- 特養の 41 は23 区でいちばん多い数です。老健の 14 も練馬区と並んで最多で、費用を抑えられる種類から探し始められる区です
- ただし数が多いことと入りやすいことは別です。申し込みは優先度で判定されるため、待つ期間は読めません
- 申し込みを早めに出しつつ、待つ間の住まいを同時に決めておくのが現実的です
- 介護老人保健施設が 14 か所と多いのもこの区の特徴ですが、老健は住み続ける前提の場所ではありません
数を知っておくと、限られた時間をどこに使うかが決めやすくなります。それでも、ご本人の状態と費用を突き合わせて絞り込む作業は、ご家族だけでは負担の大きいところです。迷われたときは、お気軽にご相談ください。ふれあい入居サポートセンターでは、社会福祉士などの専門の相談員が無料でご相談を承っています。
参考文献・公的資料
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」のオープンデータ(2026 年 9 月取得)。本記事の施設数は、介護老人福祉施設・介護老人保健施設・特定施設入居者生活介護・認知症対応型共同生活介護の各データから東京都足立区分を集計したもの。なお同データの定員欄は未記入の施設が種類によって大きく異なるため、本記事では定員による比較は行っていない。
- 東京都「特別養護老人ホームへの入所申込等に関する調査結果」(令和 7 年 12 月 26 日公表・調査基準日 令和 7 年 4 月 1 日)。都内の入所申込者 20,650 人、うち要介護 3 以上 18,776 人、在宅・要介護 3 以上かつ優先度高 2,888 人。参考値として都内施設定員 54,104 人(令和 7 年 4 月 1 日)、令和 6 年度中の新規入所者 19,394 人。1 人で複数の施設に申し込んでいる場合は名寄せ済み。
- 介護保険法(平成 9 年法律第 123 号)第 13 条(住所地特例対象施設に入所又は入居中の被保険者の特例)。対象となる住所地特例対象施設は、同条第 1 項各号により介護保険施設・特定施設・老人福祉法第 20 条の 4 に規定する養護老人ホーム(第 3 号は老人福祉法第 11 条第 1 項第 1 号の入所措置がとられた者に限る)。e-Gov 法令検索で条文を確認(2026 年 9 月)。
- 出典:東京都福祉局「東京都内有料老人ホーム一覧」(令和 8 年 9 月 1 日現在。毎月更新)。都内 1,199 施設の届出情報から集計しました。月額は各施設が届け出た代表的な料金プランの額であり、居室のタイプ・要介護度により変わる。介護保険の自己負担は含まない。
- 施設数は公表データの基準時点のものです。開設・廃止により変わります。費用・空き状況・受け入れの条件は施設ごとに大きく異なりますので、各施設・区市町村の窓口にご確認ください。
