サ高住と有料老人ホームは、同じ並びの二択ではありません。多くのサ高住は有料老人ホームでもあります。比べるべきは名前ではなく、介護が付くか・契約の形・費用の出方の 3 点です。

中川 優美Yumi Nakagawa
この 2 つは並んだ選択肢ではありません
「サ高住と有料老人ホーム、どちらがよいですか」というご相談をよくいただきます。まずお伝えしたいのは、この 2 つは同じ土俵に並んでいるものではないということです。
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) は、高齢者住まい法にもとづく 住まいの登録の制度 の名前です
- 有料老人ホーム は、老人福祉法にもとづく 施設の分類 の名前です
高齢者住まい法は、サ高住として登録できるものを「高齢者向けの賃貸住宅、または有料老人ホーム」と定めています(同法第5条第1項)。つまり、有料老人ホームがサ高住として登録されることは、制度がはじめから想定していることです。
さらに、サ高住の登録を受けた有料老人ホームについては、老人福祉法の届出の規定が適用されない、という定めもあります(高齢者住まい法第23条)。2 つの制度は、重ならないように分けられているのではなく、重なったときの扱いまで決めてあります。
ですから、パンフレットに「サ高住」と書かれていても「有料老人ホーム」と書かれていても、それだけでは中身は決まりません。次の章から、中身の見方を順に整理します。
有料老人ホームは 3 種類あります
「有料老人ホーム」はひとまとまりの名前に見えますが、介護の受け方によって、大きく 3 つに分けて説明されます。ここを分けずに比べると、話がかみ合いません。
| 種類 | 介護は誰がするか | 想定されている方 |
|---|---|---|
| 介護付有料老人ホーム | 施設の介護サービスとして提供(介護保険の特定施設入居者生活介護の指定を受けている) | 介護が必要な方 |
| 住宅型有料老人ホーム | 外部の訪問介護などを個別に契約して利用する | 自立から介護が必要な方まで、施設により幅がある |
| 健康型有料老人ホーム | 介護が必要になった場合は住み替えが前提 | 自立している方。数は多くありません |
いちばん大きいのは、この 3 つのなかでは介護付だけが、施設の介護サービスとして介護を提供するという点です。介護保険法では、有料老人ホームなどを「特定施設」と呼び、そこで行われる介護を特定施設入居者生活介護と定めています(同法第8条第11項)。この指定を受けているかどうかで、介護の受け方も費用の出方も変わります。
なお、介護付のなかにも、施設の職員が介護をする一般型と、施設が外部の事業者に委託する外部サービス利用型があります。どちらも施設の介護サービスとして提供される点は同じですが、実際に介助にあたる職員の所属が変わりますので、見学のときに確かめておくとよいでしょう。
住宅型の場合、建物の中に訪問介護の事業所があっても、住まいとは別に契約するのが原則です。同じ建物の中だから自動的に介護が付く、ということではありません。
サ高住は住まいの登録の制度です
サ高住は、高齢者住まい法にもとづいて都道府県知事の登録を受けた住まいです。登録にあたっては、いくつかの基準を満たすことが求められます(同法第7条第1項)。基準はほかにもありますが、ご家族の立場で知っておくと役に立つのは、次の 4 つです。
- 床面積とバリアフリーの基準があること
- 状況把握サービス(安否の確認)と生活相談サービスを提供すること
- 契約が書面であり、居住する部分が明示されていること
- 家賃・敷金・サービスの対価のほかに、権利金などの金銭を受け取らないこと
さらに、前払金を受け取る場合は、その算定の基礎と返金の計算方法を契約に明示すること、返金に備えて保全の措置を講じることも求められています。また、入院などを理由に事業者の側から居室を変えたり契約を解約したりできないことも基準に入っています。
登録は 5 年ごとに更新が必要です(同法第5条第2項)。
なお、有料老人ホームの側にも似た定めがあります。老人福祉法は、有料老人ホームの設置者が家賃・敷金・介護等の対価のほかに権利金などを受け取ってはならないと定め(同法第29条第8項)、前払金を一括して受け取る場合の保全措置も求めています(同条第9項)。片方だけが守られている、という関係ではありません。
名前ではなく、この 3 点を比べる
ここまでを踏まえると、比べるべきものが見えてきます。類型の名前ではなく、次の 3 点です。
1. 介護が付くかどうか
いちばん結果を左右するのがここです。確かめ方は単純で、特定施設入居者生活介護の指定を受けているかを聞きます。
- 指定を受けている(介護付有料老人ホーム、介護型のサ高住など) → 施設の職員が介護をします。介護保険の自己負担は、要介護度に応じた月ぎめの形になります
- 指定を受けていない(住宅型有料老人ホーム、一般型のサ高住など) → 外部の訪問介護などを個別に契約します。使った分だけ自己負担が増えていきます
どちらが有利かは、必要な介護の量と施設ごとの料金によって変わりますので、一般論では決まりません。いまの要介護度での総額と、要介護度が上がった場合の総額を、候補それぞれについて同じ条件で出してもらい、その見積もりどうしを比べてください。月ぎめか、使った分だけかという違いは、この見積もりの形で表れます。
2. 契約の形
住まいを使う権利の持ち方が違います。
- 賃貸借契約(サ高住に多い形)— 家賃を払って部屋を借ります。敷金と前払家賃という形になります
- 利用権方式(有料老人ホームに多い形)— 入居一時金などを払い、居室と共用部分を使う権利を得ます
大切なのは形の名前よりも、退去を求められるのはどういう場合かと、払ったお金がどう戻るのかです。とくに前払金は、入居して間もない時期に契約が終わった場合の扱いが法律で定められていますが、戻るのは全額ではありません。老人福祉法は、前払金から厚生労働省令で定める方法により算定される額を差し引いた額を返す契約を結ばなければならない、としています(同法第29条第10項)。差し引かれる額があることが前提の定めです。
短期間で退去することになったときのお金の扱いは、別記事「入居後すぐ「合わない」と感じたら」で詳しく整理しています。
3. 費用の出方
月額の総額だけを見比べても、判断を誤ることがあります。見るべきは出方です。
| 見る場所 | 確かめること |
|---|---|
| 月額に含まれるもの | 家賃・管理費・食費・水道光熱費のどこまでが入っているか |
| 別にかかるもの | 介護保険の自己負担、おむつ代、医療費、理美容、レクの実費 |
| 介護が重くなったら | 自己負担がどう増えるか。上限はあるか |
| 最初にかかるもの | 前払金・敷金の額と、その返金の計算式 |
介護保険の自己負担が重くなったときに使える制度もあります。ただし、特別養護老人ホームなどの食費・居住費を軽くする負担限度額認定は、サ高住も有料老人ホームも住まいの費用については対象外です。詳しくは別記事「介護費用を軽くする 2 つの制度」をご覧ください。
タイプ別の早見表
ここまでの整理を、ひとつの表にまとめます。名前の列ではなく、右の 2 列を見てください。
| 住まいの呼ばれ方 | 介護をどう受けるか | 契約の形(多い例) |
|---|---|---|
| 介護付有料老人ホーム | 施設の介護サービスとして受ける | 利用権方式 |
| 住宅型有料老人ホーム | 外部の事業所と個別に契約する | 利用権方式 |
| 健康型有料老人ホーム | 介護が必要になると住み替えが前提 | 利用権方式 |
| サ高住(一般型) | 外部の事業所と個別に契約する | 賃貸借契約 |
| サ高住(介護型) | 施設の介護サービスとして受ける | 賃貸借契約 |
こうして並べると、サ高住か有料老人ホームかという線よりも、介護が付くか付かないかという線のほうが、暮らしへの影響が大きいことが分かります。
同じ介護が付く側でも、特別養護老人ホームとは費用も入居条件も違います。その比較は別記事「特養と介護付き有料老人ホームの違い」で整理しました。また、介護が付かない側どうしの比較は、別記事「サ高住と住宅型有料老人ホームの違い」で詳しく扱っています。
見学で確かめる 5 つのこと
最後に、見学のときにそのまま聞ける形で並べます。
- 特定施設入居者生活介護の指定を受けていますか 受けていれば介護は施設の職員が、受けていなければ外部の事業所が行います
- 夜間は誰が何人いますか。何時から何時までですか 職員がいます、という説明だけでは分かりません。時間帯と人数、そして駆けつけるのか救急に連絡するのかまで聞きます
- 併設の事業所は使わなければいけませんか。いまのケアマネジャーは続けられますか 介護が外部契約の住まいでは、ここが後から効いてきます
- どういう場合に退去をお願いされますか 要介護度が上がったとき、長期に入院したとき、認知症の症状が強くなったときの 3 つを具体的に聞きます
- 前払金や敷金は、途中で退去したときにいくら戻りますか。計算式を見せてください 口頭の説明ではなく、契約書と重要事項説明書の該当箇所を指してもらいます
重要事項説明書のどこを見ればよいかは、別記事「重要事項説明書の読み方」にまとめています。
よくあるご質問
Q. サ高住と有料老人ホームは、どちらを選ぶのがよいのでしょうか。
A. その聞き方だと答えが出にくいところです。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は高齢者住まい法にもとづく住まいの登録の制度で、有料老人ホームは老人福祉法にもとづく施設の分類です。同じ並びの二択ではありません。高齢者住まい法では、サ高住として登録できるものを「高齢者向けの賃貸住宅、または有料老人ホーム」と定めていますので、有料老人ホームでありながらサ高住として登録されている住まいがあります。名前で選ぶのではなく、介護が施設の職員から受けられるのか、契約はどの形か、費用はどう出ていくのかを見比べてください。
Q. 有料老人ホームには種類があるのですか。
A. 一般に 3 つに分けて説明されます。介護付有料老人ホームは、介護保険の特定施設入居者生活介護の指定を受けていて、施設の職員から介護を受けます。住宅型有料老人ホームは指定を受けておらず、介護が必要になったら外部の訪問介護などを個別に契約します。健康型有料老人ホームは介護が必要になると住み替えが前提で、数は多くありません。同じ有料老人ホームでも、介護の受け方がまったく違います。
Q. サ高住のほうが契約は守られていると聞きました。本当ですか。
A. サ高住の登録基準には、入居者の入院などを理由に事業者が居室を変えたり契約を解約したりできない、という定めがあります。ただし、有料老人ホーム側にも、権利金など家賃・敷金・サービスの対価以外の金銭を受け取ってはならないという定めや、前払金の保全措置の定めがあります。どちらか一方だけが守られているわけではありません。大切なのは、実際の契約書と重要事項説明書で、退去を求められる場合と前払金の返金の計算式を確かめることです。
Q. 入居してすぐ合わないと感じたら、払ったお金は戻りますか。
A. 全額が戻るとは限りません。老人福祉法では、前払金を受け取る場合、入居した日から一定の期間内に契約が解除されたときは、前払金から厚生労働省令で定める方法により算定される額を差し引いた額を返すという契約を結ばなければならないとされています。差し引かれる額があることが前提の定めですので、一定期間内なら全額返るとは考えないでください。計算式は契約書に書かれていますので、入居前に確認しておくことをおすすめします。
Q. 介護が重くなったときのことは、どう確かめればよいですか。
A. 類型の名前では分かりません。確かめたいのは、夜間に誰が何人いるのか、夜間の排せつの介助や二人がかりの介助に対応できるのか、認知症の症状が強くなったときに住み続けられるのか、医療の処置や看取りに対応しているのか、そして契約上どういう場合に退去を求められるのかの 5 点です。これらは同じ類型の中でも施設ごとに大きく違います。
まとめ
サ高住と有料老人ホームは、比べる前に位置づけを整理しておくと迷いが減ります。要点は 3 つです。
- サ高住は住まいの登録の制度、有料老人ホームは施設の分類です。法律のうえで重なることが想定されています
- 有料老人ホームは 3 種類あり、施設の職員から介護を受けられるのは介護付だけです
- 比べるのは名前ではなく、介護が付くか・契約の形・費用の出方の 3 点です
パンフレットの類型名だけでは、暮らしがどうなるかは分かりません。見学のときに 5 つの質問をぶつけてみてください。答え方そのものが、その住まいの姿勢を教えてくれます。
迷われたときは、お気軽にご相談ください。ふれあい入居サポートセンターでは、社会福祉士などの専門の相談員が無料でご相談を承っています。
参考文献・公的資料
- 高齢者の居住の安定確保に関する法律(平成13年法律第26号)第5条第1項(サービス付き高齢者向け住宅事業の登録の対象=高齢者向けの賃貸住宅または有料老人ホーム)・第5条第2項(5年ごとの更新)・第7条第1項(登録の基準。床面積、状況把握サービスと生活相談サービス、書面による契約、権利金等の受領禁止、前払金の算定の基礎と保全措置、入院等を理由とする居室変更・解約の禁止)・第23条(老人福祉法の特例=登録を受けた有料老人ホームには老人福祉法第29条第1項から第3項までを適用しない)(e-Gov 法令検索で条文を確認。2026年9月)
- 老人福祉法(昭和38年法律第133号)第29条第1項(有料老人ホームの定義と届出)・第8項(権利金その他の金品の受領禁止)・第9項(前払金の算定の基礎の明示と保全措置)・第10項(一定の期間内に契約が解除された場合、前払金から厚生労働省令で定める方法により算定される額を控除した額を返還する契約の締結義務)(e-Gov 法令検索で条文を確認。2026年9月)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第11項(特定施設=有料老人ホームその他厚生労働省令で定める施設。特定施設入居者生活介護の定義)(e-Gov 法令検索で条文を確認。2026年9月)
- 厚生労働省「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」(令和6年12月6日改正)。介護サービスに係る表示の留意事項として、外部の訪問介護等を利用することとなっているホームが「介護付終身利用型有料老人ホーム」「ケア付き高齢者住宅」等の表示を行うことは不当表示となるおそれがあるとされています。
- 費用・提供サービス・退去の条件は施設ごとに大きく異なります。実際の契約内容・料金は各施設にご確認ください。
