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コラム入居の準備制度とお金

老人ホーム入居と住民票
— 住所地特例のしくみと、手続きで迷わないために —

入居の手続きを進めていると、「住民票は移すのですか」「介護保険はどちらの市区町村になりますか」という質問をよくいただきます。 とくに、住み慣れた区とは別の市区町村にある施設を選んだとき、この点があいまいなままだと、あとで手続きの窓口が分からず戸惑うことになります。この記事では、介護保険の「住所地特例」という仕組みを軸に、入居のときの住民票の扱いを社会福祉士が整理しました。
掲載日:2026.07.29|監修:社会福祉士・入居相談員
この記事の答え

施設で暮らすことが生活の本拠になるなら、住民票は施設の所在地に移すのが基本です。ただし介護保険については、対象施設なら別の市区町村に移っても元の市区町村が保険者であり続けます。これを「住所地特例」といいます。

住所地特例は、施設の多い市区町村に給付費の負担が偏ってしまうことを避けるために設けられた仕組みです。対象になるのは、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・介護老人保健施設・介護医療院と、特定施設(介護付き有料老人ホーム・養護老人ホーム・軽費老人ホーム)、そして有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅です。地域密着型にあたる小規模な施設やグループホームは対象から除かれます。 その結果、住民票のある市区町村と、介護保険の手続き窓口が別になることがあります。要介護認定の更新や負担限度額認定の申請は、引き続き元の市区町村で行います。個別の扱いは、入居する施設と市区町村の介護保険担当課でご確認ください。
中川 優美(社会福祉士・入居相談員)
この記事の監修者

中川 優美Yumi Nakagawa

社会福祉士。ふれあい入居サポートセンター葛飾相談室にて、入居相談を担当。入居の手続きや書類についてのご相談も多く、ご家族が迷いやすいところをご一緒に確認しながら進めている。
社会福祉士(国家資格)ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室高齢者向け住まい紹介事業者届出 25-0881
編集ポリシー:本記事の住所地特例の説明は、介護保険法にもとづく制度の一般的な内容を、保険者である市区町村の公表資料で 2026 年 7 月に確認して作成しています。対象施設の細かい要件(定員など)や届出の書式は、市区町村によって案内が異なります。実際の手続きは、お住まいの市区町村の介護保険担当課と、入居する施設にご確認ください。本記事内の事例はイメージで、特定の個人を表すものではありません。

入居のとき、住民票はどうするか

住民票は、生活の本拠がどこかにもとづいて置くものです。ですから、施設で暮らすことが生活の本拠になるのであれば、住所を施設の所在地に移すのが基本の考え方になります。

ただ、実際のご相談では「移したくない」というお気持ちを聞くこともあります。長く住んだ土地から名前が消えるように感じられる方や、いずれ在宅に戻る見込みがある方など、事情はさまざまです。施設の方針によっても扱いが異なることがありますので、入居する施設と、お住まいの市区町村の窓口の両方に確認して決めるのが確実です。

そのうえで、多くのご家族が心配されるのが「住民票を移したら、介護保険はどうなるのか」という点です。ここで関わってくるのが、次にお伝えする住所地特例です。

住所地特例とは — なぜこの仕組みがあるのか

介護保険は、お住まいの市区町村が保険者になります。ふつうに引っ越しをすれば、保険者も引っ越し先の市区町村に変わります。

ところが、施設に入るために住所を移した場合は例外です。対象になる施設に入って住所を移しても、転出先の市区町村の被保険者にはならず、元々お住まいだった市区町村の被保険者のままになります。これが住所地特例です。

なお、同じ市区町村の中で自宅から施設に移る場合は、そもそも保険者が変わりませんので、この特例を意識する必要はありません。関係してくるのは、別の市区町村にある施設を選んだときです。

対象になる施設・ならない施設

住所地特例は、すべての高齢者向けの住まいに当てはまるわけではありません。対象になる施設が決まっています。

区分施設の種類
介護保険施設介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)/介護老人保健施設/介護医療院
特定施設介護付き有料老人ホーム/養護老人ホーム/軽費老人ホーム(ケアハウス)
高齢者向け住宅サービス付き高齢者向け住宅のうち、有料老人ホームに該当するもの

一方で、地域密着型にあたる小規模な施設は対象から除かれます。地域密着型のサービスは、原則としてその市区町村にお住まいの方が利用するものとされているためです。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)も、この地域密着型のサービスにあたります。

施設の種類そのものの違いは「サ高住と住宅型有料老人ホームの違い」や「特養と介護付き有料老人ホームの違い」で整理しています。

保険者が変わらないと、何が変わらないのか

住所地特例が当てはまると、介護保険にかかわる手続きの窓口は元の市区町村のままです。具体的には、次のようなものが元の市区町村の担当になります。

  1. 1
    要介護認定の更新・区分変更の申請
    認定の有効期間が切れる前の更新も、状態が変わったときの区分変更も、元の市区町村に申請します。手続きの流れは「[要介護認定の申請から結果までの流れ](/columns/youkaigo-nintei-shinsei-nagare)」で解説しています。
  2. 2
    介護保険被保険者証・負担割合証
    発行元は元の市区町村です。届く住所は施設になりますので、郵便物の受け取りをどうするかを、あらかじめ施設と決めておくと行き違いが起きにくくなります。
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    負担限度額認定の申請・更新
    食費・居住費を軽くする負担限度額認定も、元の市区町村への申請です。毎年 8 月が更新の時期になります。制度の内容は「[介護費用を軽くする 2 つの制度](/columns/kougaku-kaigo-futangendogaku)」をご覧ください。
  4. 4
    高額介護サービス費の支給申請
    こちらも元の市区町村が窓口です。払い戻しの振込先の届け出などもあわせて確認しておきましょう。

一方で、住民票にひもづく手続き(住民税・国民健康保険・後期高齢者医療など)は、原則として住民票のある市区町村の扱いになります。介護保険だけが例外的に元の市区町村に残る、という形です。ここが混乱しやすいところですので、どちらの窓口に問い合わせればよいかを一度整理しておくことをおすすめします。

手続きと、注意したいこと

転出・転入の届け出とあわせて手続きします

住所を移すときは、市区町村の窓口で転出・転入の届け出をします。あわせて、住所地特例にかかわる届け出が必要になります。書式や必要書類は市区町村によって案内が異なりますので、転出の手続きに行くときに「介護保険の住所地特例の届け出もしたい」と伝えると、まとめて案内してもらえます。

施設によっては、入居時の書類のなかで施設側が手続きを案内してくれることもあります。ご家族と施設のどちらが行うのかを、入居前にはっきりさせておくと、抜け落ちを防げます。

施設を移るときも、そのつど確認します

施設から別の施設へ移る場合も、移った先が住所地特例の対象かどうかで扱いが変わります。入居後の住み替えを考えるときは、費用や介護体制とあわせて、この点も確認しておくと安心です。住み替えの判断については「入居後に容体が変わったら」で整理しています。

郵便物の受け取りを決めておきます

保険証や認定の通知、更新の案内などは、元の市区町村から施設宛てに届きます。施設で受け取ったあとご家族に渡してもらうのか、ご家族の住所に転送するのかを決めておくと、更新の案内を見落とすことがなくなります。更新を逃すと、その間の費用の扱いが変わってしまうこともありますので、地味ですが大切な確認です。

よくあるご質問

Q. 老人ホームに入るとき、住民票は移さないといけませんか。

A. 住民票を移すかどうかは、生活の本拠がどこになるかによって判断します。施設で暮らすことが生活の本拠になる場合は、住所を施設の所在地に移すのが基本です。ただし、ご家族の事情や施設の方針によって扱いが異なることもありますので、入居する施設と、お住まいの市区町村の窓口にご確認ください。

Q. 別の市区町村の施設に移ると、介護保険はその市区町村に移りますか。

A. 住所地特例の対象施設であれば移りません。施設に入るために別の市区町村へ住所を移した場合でも、元々お住まいだった市区町村が引き続き保険者になります。これを住所地特例といいます。施設の多い市区町村に給付費の負担が偏ってしまうことを避けるために設けられた仕組みです。

Q. 住所地特例の対象になるのはどの施設ですか。

A. 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)・介護老人保健施設・介護医療院といった介護保険施設のほか、特定施設(介護付き有料老人ホーム・養護老人ホーム・軽費老人ホーム)と、有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅が対象です。ただし、地域密着型にあたる小規模な施設は対象から除かれます。ご検討中の施設が対象かどうかは、施設か市区町村の介護保険担当課にご確認ください。

Q. グループホームは住所地特例の対象ですか。

A. 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は地域密着型のサービスで、住所地特例の対象施設には含まれません。地域密着型のサービスは、原則としてその市区町村にお住まいの方が利用するものとされているためです。詳しい扱いは市区町村の介護保険担当課にご確認ください。

Q. 保険者が変わらないと、手続きの窓口はどこになりますか。

A. 元の市区町村が窓口です。要介護認定の更新や区分変更、介護保険被保険者証、負担限度額認定の申請なども、引き続き元の市区町村の介護保険担当課で手続きします。住民票のある市区町村と、介護保険の窓口が別になる点が分かりにくいところですので、施設のケアマネジャーにも共有しておくと安心です。

まとめ

入居にともなう住民票と介護保険の扱いは、次のように整理できます。

  1. 施設で暮らすことが生活の本拠になるなら、住民票は施設の所在地に移すのが基本です。施設と市区町村の両方に確認して決めます
  2. 対象施設に入るために別の市区町村へ住所を移しても、介護保険は元の市区町村が保険者のままです(住所地特例)
  3. 対象は介護保険施設・特定施設・有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅です。地域密着型の小規模な施設やグループホームは対象外です
  4. 要介護認定の更新や負担限度額認定の申請は、引き続き元の市区町村の窓口で行います
  5. 転出・転入の届け出とあわせて住所地特例の届け出をします。誰が手続きするかを施設と決めておくと抜けません

手続きは細かく見えますが、入居前に整理しておけば迷わずに済みます。**入居の準備でご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。**ふれあい入居サポートセンターでは、社会福祉士などの専門の相談員が無料でご相談を承っています。

参考文献・公的資料

  1. 介護保険法(住所地特例に関する規定)
  2. 横浜市「介護保険住所地特例制度のご案内」(制度の趣旨=施設所在地市町村の給付費増加という財政上の不均衡の是正、対象施設の種類。2026 年 7 月閲覧)
  3. 目黒区「介護保険の資格に関する特例(住所地特例制度・適用除外制度)」(対象施設へ住所を異動しても引き続き元の区の被保険者となる扱い。2026 年 7 月閲覧)
  4. 厚生労働省 社会保障担当参事官室 資料「住所地特例対象施設について」(介護保険施設・特定施設〈地域密着型特定施設を除く〉の区分。2026 年 7 月閲覧)