要介護認定は「申請 → 訪問調査・主治医意見書 → 判定 → 通知」の 4 段階で進み、結果は申請から原則 30 日以内に届きます。

中川 優美Yumi Nakagawa
全体の流れと期間
まずは全体像からつかんでいきましょう。要介護認定は、次の 4 段階で進みます。
| 段階 | 内容 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| 1. 申請 | 市区町村の窓口に申請書を提出します(代行も可) | 即日 |
| 2. 訪問調査・主治医意見書 | 調査員が訪問して聞き取り。並行して市区町村が主治医に意見書を依頼します | 日程調整のうえ実施 |
| 3. 判定 | コンピュータによる一次判定と、介護認定審査会による二次判定 | — |
| 4. 結果通知 | 認定結果が郵送で届きます | 申請から原則 30 日以内 |
結果の通知は、申請から原則 30 日以内と法律で定められています(介護保険法 第 27 条第 11 項)。調査に時間がかかるなどの事情で 30 日を超える場合には、見込み期間と理由を記した延期の通知が届く決まりです。
そして、ここがいちばん大切なところですが、認定の効力は申請した日にさかのぼって生じます(介護保険法 第 27 条第 8 項)。結果を待ってからでないと何も始められない、というわけではありません。申請さえ済ませておけば、結果が届く前でも介護サービスの利用を始められる場合があります(後述します)。
だからこそ、「介護が必要になりそうだ」と感じた時点で、早めに申請しておくことが、その後の選択肢を広げてくれます。介護が始まったばかりで全体の段取りから知りたい方は、別記事「親の介護はじめての30日」もあわせてご覧ください。
要介護認定で何が決まるか
要介護認定は、介護がどのくらい必要かを全国共通の基準で判定する制度です。結果は、軽い順に次の 7 区分と「非該当(自立)」に分かれます。
| 区分 | おおまかな状態 |
|---|---|
| 非該当(自立) | 介護保険のサービスは原則利用できません(自治体の一般向け事業は利用できる場合があります) |
| 要支援 1・2 | 日常生活はおおむね自分でできるものの、一部に支援が必要な状態です |
| 要介護 1〜5 | 数字が大きいほど、介護の必要度が高い状態です |
この区分によって、次のことが変わってきます。
- 使えるサービスの種類。要支援の方は介護予防のためのサービスが中心になり、要介護の方は訪問介護や通所介護、施設への入居など幅広いサービスの対象になります
- 1 か月に介護保険で使えるサービス量の上限。区分ごとに上限が定められており、区分が上がるほど多くのサービスを利用できます
- 入居できる施設の範囲。たとえば特別養護老人ホーム(特養)は、原則として要介護 3 以上の方が対象になります
つまり要介護認定は、介護保険の 介護給付・予防給付を利用するための「入口」 にあたる手続きです。これらのサービスを 1 割〜3 割の自己負担で使うためには、まずこの認定を受ける必要があります。
申請のしかた
申請そのものは、難しい手続きではありません。
窓口と申請できる人
申請の窓口は、親の住所地の市区町村の介護保険担当課 です。本人だけでなく、ご家族も申請できます。
仕事などで平日に窓口へ行くのが難しい場合は、地域包括支援センター(高齢者の総合相談窓口)や居宅介護支援事業所などに、申請手続きの支援や代行を相談する こともできます。「申請のことで相談したい」と地域包括支援センターに電話で伝えれば、進め方を案内してもらえます。地域包括支援センターへの相談のしかたは、別記事「ケアマネ・地域包括への最初の相談」にまとめています。
必要なもの
一般的に、次のものが必要になります。
- 要介護認定の申請書(窓口またはホームページで入手できます)
- 介護保険被保険者証(65 歳以上の方に交付されている保険証です)
- 40〜64 歳の方が申請する場合は、加入している医療保険を確認できるものなどが必要になることがあります(特定の病気が原因の場合に対象になります)
マイナンバーの確認書類など、細かい持ち物は自治体によって異なります。事前に窓口のホームページで確かめるか、電話で確認しておくとスムーズです。申請に手数料はかかりません。
入院中でも申請できます
「退院してから申請しよう」と考える方が多いのですが、入院中でも申請はできます。退院の見通しが立ってきた段階で申請しておくと、退院後すぐにサービスを使い始めやすくなります。病院の退院支援の担当者(医療ソーシャルワーカーなど)に「要介護認定の申請をしたい」と伝えると、段取りを一緒に考えてもらえます。
訪問調査と主治医意見書
申請が済むと、市区町村の調査員(または委託を受けた調査員)が自宅や入院先を訪問し、心身の状態について聞き取りを行います。あわせて、市区町村から主治医に「主治医意見書」の作成が依頼されます。
訪問調査で聞かれること
調査は、全国共通の 74 項目の基本調査 に加えて、家族の状況や生活環境などを確かめる 概況調査、具体的な介護の手間を記録する 特記事項 で構成されています。聞かれる内容は、おおまかに次のようなものです。
- 体の動き(立ち上がり、歩行、寝返りなど)
- 生活の動作(食事、入浴、着替え、トイレなど)
- 認知機能(日付や場所の理解、記憶など)
- 行動面の様子(不安、こだわり、外出して戻れなくなることの有無など)
- 過去 14 日間に受けた医療的なケア
「ふだんの様子」を伝える準備がいちばん大切です
訪問調査でよく起きるのが、調査の日に限って親御さんがいつもより元気に振る舞ってしまう、という場面です。「できますか?」と聞かれると「できます」と答えたくなるのは、自然な心理です。ただ、それだけで調査が進むと、ふだんの困りごとが結果に反映されにくくなってしまいます。
これまでお会いしてきたご家族の経験からも、次の準備をおすすめしています。
- 可能であればご家族が立ち会う。調査の日程は調整できますので、同席できる日にしてもらい、ふだんの様子を補足できるようにしておきます
- ふだんの様子をメモにまとめておく。「夜中にトイレで失敗することが週に何回ある」「火の消し忘れが続いている」など、具体的な場面と頻度を書き出しておくと伝えやすくなります
- 本人の前で言いにくいことは、メモを調査員に渡す。調査員は数字に表れない事情を特記事項として記録してくれます。本人の自尊心を傷つけずに実情を伝える方法のひとつです
- 状態に波がある場合は、よい日・大変な日の両方を伝える。どちらか一方ではなく、「調子のよい日はこう、悪い日はこうで、悪い日が週に何回くらいある」と 頻度もあわせて 伝えると、介護の手間が正確に伝わります
主治医意見書
主治医意見書は、市区町村が直接主治医に依頼するため、ご家族が何かを書く必要はありません。かかりつけ医がいない場合は、市区町村が指定する医師の診察を受けることになります。
準備としては、ふだんの受診のときに、病気のことだけでなく 生活の困りごとも主治医に伝えておく ことが役に立ちます。医師が生活の実情を知っているほど、意見書に実態が反映されやすくなります。
判定から結果通知まで
訪問調査と主治医意見書がそろうと、判定に進みます。
- 一次判定。調査結果をもとに、全国共通のコンピュータ判定で介護に必要な時間が推計されます
- 二次判定。保健・医療・福祉の専門家で構成される介護認定審査会が、一次判定の結果に特記事項と主治医意見書を加えて総合的に判定します
機械的な数字だけで決まるのではなく、特記事項や意見書に書かれた個別の事情が二次判定で考慮されます。訪問調査のときの「メモを渡す」準備が活きてくるのは、この場面です。
結果は郵送で届き、認定された区分が介護保険被保険者証に記載されます。新規認定の有効期間は原則 6 か月、更新認定は原則 12 か月ですが、心身の状態などに応じて市区町村の判断でこれと異なる期間が設定されることがあります。期限が近づくと更新の案内が届くことが多いのですが、被保険者証に書かれた有効期限をご本人・ご家族でも確かめておく と安心です。
結果が出る前・出た後にできること
結果を待たずにサービスを使い始められます
認定の効力は申請日にさかのぼるため、結果が届く前でもサービスの利用を始められる場合があります。担当のケアマネジャーがまだ決まっていない場合は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に相談すると、暫定的なケアプランを作って利用を始められることがあります。退院直後で待ったなしの場合には、心強い仕組みです。
ひとつ気をつけたいのは、想定していた区分より低い結果になった場合や非該当になった場合に、すでに使ったサービス費用の一部または全部が自己負担になることがある点です。暫定で使い始めるときは、ケアマネジャーと「どの区分を見込んでどこまで使うか」を相談しながら進めてください。
結果に納得できない場合
「思ったより低い区分だった」というご相談は少なくありません。ここで大切なのは、「認定そのものへの不服」なのか「その後に状態が変わった」のか で、進む道が分かれる点です。
- 審査請求(介護保険法 第 183 条)。認定を受けた時点の状態が結果に正しく反映されていないなど、認定という処分そのものに不服がある場合 の手続きです。都道府県の介護保険審査会に対して行います
- 区分変更の申請(介護保険法 第 29 条)。認定を受けたあとに状態が変わり、今の区分が合わなくなった場合 に、改めて認定をやり直してもらう申請です
どちらにあたるかは、ご家族だけで判断しにくいところです。まずは市区町村の介護保険担当課やケアマネジャー、地域包括支援センターに相談し、認定を受けた時点の状態と現在の状態を整理したうえで、どちらの手続きが適切かを確かめてください。
よくあるご質問
Q. 申請してから結果が届くまで、どのくらいかかりますか。
A. 法律上は申請から 原則 30 日以内 に結果を通知することになっています(介護保険法 第 27 条第 11 項)。調査の日程調整や主治医意見書の作成に時間がかかる場合は 30 日を超えることもあり、その場合は見込み期間と理由を記した 延期の通知 が届きます。
Q. 入院中でも申請できますか。
A. できます。退院の見通しが立ってきた段階で申請しておくと、退院後すぐにサービスを使い始めやすくなります。訪問調査は、病状が安定していれば 入院先で受けられる こともあります。病院の退院支援の担当者に相談してみてください。
Q. 調査の日に親が「何でもできます」と答えてしまいそうで心配です。
A. よくあるご心配で、対策もあります。可能であればご家族が調査に 立ち会い、ふだんの様子を補足してください。困っている場面と その頻度 を具体的にまとめたメモを用意しておくと伝えやすくなります。本人の前で言いにくい内容は、メモを調査員に渡す方法もあります。数字に表れない事情は特記事項として記録され、二次判定で考慮されます。
Q. 結果が出る前に介護サービスを使えますか。
A. 認定の効力は 申請日にさかのぼる ため(介護保険法 第 27 条第 8 項)、暫定のケアプランを作ってもらえば、結果が届く前にサービスの利用を始められる場合があります。ただし、想定より低い区分や非該当になった場合は費用の一部または全部が自己負担になることがありますので、ケアマネジャーと相談しながら進めてください。
Q. 認定の結果に納得できないときは、どうすればよいですか。
A. 認定という 処分そのものに不服がある場合(認定を受けた時点の状態が結果に反映されていないと考えられる場合)は、都道府県の介護保険審査会への 審査請求 という方法があります。一方、認定を受けたあとに状態が変わって 今の区分が合わなくなった場合は、区分変更の申請 になります。どちらにあたるかは判断が難しいため、まず市区町村の介護保険担当課やケアマネジャー、地域包括支援センターに相談し、認定時の状態と現在の状態を整理したうえで、適切な手続きを確かめてください。
まとめ
要介護認定は、介護保険のサービスを使うための入口になる手続きです。
- 流れは「申請 → 訪問調査・主治医意見書 → 判定 → 通知」の 4 段階で、結果は原則 30 日以内に届きます
- 認定の効力は申請日にさかのぼるため、早めの申請がその後の選択肢を広げます
- 申請は家族でもでき、地域包括支援センターなどに手続きの支援や代行を相談できます
- 訪問調査では、困っている場面と頻度をまとめたメモがあると、実情を伝えやすくなります
- 結果に疑問があるときは、認定への不服なら審査請求、その後の状態変化なら区分変更の申請という道があります
はじめての申請は、分からないことが多くて当然です。施設への入居を視野に入れたご相談であれば、ふれあい入居サポートセンターでも、社会福祉士などの専門の相談員が認定の段取りからご一緒に整理しています。お気軽にご相談ください。
参考文献・公的資料
- 介護保険法 第27条(要介護認定。第8項=申請日への遡及、第11項=30日以内の処分)、第29条(要介護状態区分の変更の認定)、第183条(審査請求)(e-Gov 法令検索、2026年6月閲覧)
- 厚生労働省「要介護認定について」(2026年6月閲覧)
