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コラム入居の準備ご家族向け

成年後見制度と老人ホームの入居・契約
— 判断能力が下がった親の契約を社会福祉士が解説 —

認知症が進んだ親の老人ホームを探すなかで、「契約は家族がしてよいのだろうか」「成年後見人をつけないと入居できないのだろうか」と不安になる方は少なくありません。判断能力が下がった本人の契約は、ご家族だけでは進めにくい場面が出てきます。 本記事では、成年後見制度が老人ホームの入居・契約にどう関わるのかを、社会福祉士の視点で整理しました。制度のしくみと、よくある「身元保証人との違い」、相談先までまとめています。
掲載日:2026.06.28|監修:社会福祉士・入居相談員
この記事の答え

判断能力が大きく下がった本人の入居契約は、家族でも当然には代理できず、成年後見制度の利用が必要になることがあります。後見人は入居契約を代理できますが、身元保証人とは役割が別です。

成年後見制度は、認知症などで判断能力が不十分になった方を、法律的に支える制度です。後見人は財産管理と、生活や療養に関する手続き(身上監護)を担い、老人ホームの入居契約も本人に代わって結べるとされています。ただし、後見人がついても自動的に身元保証人になるわけではありません。手続きや費用、権限の範囲はケースで異なるため、地域包括支援センター・家庭裁判所・専門職にご確認ください。
中川 優美(社会福祉士・入居相談員)
この記事の監修者

中川 優美Yumi Nakagawa

社会福祉士。ふれあい入居サポートセンター葛飾相談室にて、入居相談を担当。判断能力が下がった親御さんの契約をめぐるご相談も多く、地域包括支援センターや専門職への橋渡しを行っている。
社会福祉士(国家資格)ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室高齢者向け住まい紹介事業者届出 25-0881
編集ポリシー:成年後見制度は法律にもとづく制度です。本記事は制度の概要を一般的に整理したもので、個別の手続き・権限・費用は家庭裁判所や、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職、法テラスにご確認ください。ふれあい入居サポートセンターは後見人の手配や法的手続きの代行を行うものではなく、相談先への橋渡しをご案内します。制度の見直しの議論もあるため、最新の内容は法務省・裁判所の公開情報(2026 年 6 月に確認)をご確認ください。本記事内の事例はイメージです。

結論

まず大切なところからお伝えします。親御さんの判断能力が十分にある間は、ご家族が手伝いながら本人が契約できます。一方で、認知症などで判断能力が大きく下がっている場合は、ご家族であっても当然に本人を代理できるわけではありません。このようなときに、本人を法律的に支えるのが成年後見制度です。

成年後見人がつくと、本人に代わって老人ホームの入居契約を結べるとされています。ただし、よくある誤解として「後見人がいれば身元保証人はいらない」というものがありますが、この 2 つは役割が別です。後見人がついても、施設が求める身元保証人・身元引受人の役割は、別に考える必要があります。

判断に迷う場面は多いものです。ひとりで抱え込まず、地域包括支援センターや専門職に相談しながら進めていきましょう。

成年後見制度とは

成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が不十分になった方が、不利益を受けないように、法律的に支える制度です。財産の管理や、契約などの法律的な手続きを、本人に代わって、または本人を支えながら行います。

法定後見と任意後見

成年後見制度は、大きく 2 つに分かれます。

  • 法定後見 すでに判断能力が下がっている場合に、家庭裁判所が後見人などを選ぶしくみです。認知症が進んでから利用するのは、多くがこちらです
  • 任意後見 判断能力があるうちに、将来に備えて、自分で選んだ人と契約を結んでおくしくみです。元気なうちの備えとして使われます

親御さんの判断能力がすでに下がっている場合は、法定後見が中心の選択肢になります。

法定後見の 3 つの類型

法定後見は、本人の判断能力の程度に応じて、3 つの類型に分かれます。

類型主な対象支える人
後見判断能力が欠けているのが通常の状態の方成年後見人
保佐判断能力が著しく不十分な方保佐人
補助判断能力が不十分な方補助人

どの類型にあたるかは、家庭裁判所が、医師の診断などをもとに判断します。後見人などには、ご家族がなることもあれば、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が選ばれることもあります。だれが選ばれるかは、家庭裁判所が決めます。

入居・契約との関係

成年後見人は、本人の財産を管理し、生活や療養に関する手続き(身上監護といいます)を行います。老人ホームの入居契約も、本人に代わって結べるとされています。判断能力が下がった親御さんの入居を進めるうえで、後見人の存在が手続きを前に進める助けになる場面があります。

一方で、後見人が何でもできるわけではありません。たとえば、延命治療を受けるかどうかといった医療上の同意は、一般に後見人の役割の外にあるとされています。こうした医療の判断は、主治医とご家族で話し合って決めていくことになります。看取りや医療の希望をどう整理するかは、別記事「看取り対応の老人ホームの選び方」もあわせてご覧ください。

後見人の権限の範囲や、できること・できないことは、類型やケースによって異なります。具体的なことは、家庭裁判所や専門職に確認してください。

身元保証人との違い

ここは多くの方が戸惑うところなので、ていねいに整理します。成年後見人と身元保証人(身元引受人)は、名前は似ていても役割がまったく異なります。

成年後見人身元保証人・身元引受人
立場家庭裁判所が関わって選ばれる、法律上の支援者施設との契約で求められる、本人以外の連絡・引受の役割
主な役割財産管理・生活や療養に関する手続き緊急時の連絡先、費用の支払いの担保、退去時の対応など
関係後見人がついても、自動的に身元保証人になるわけではない施設ごとに求める内容が異なる

つまり、「成年後見人をつけたから、施設の身元保証人はいらない」とは限りません。施設が身元保証人に求める役割(緊急時の対応や費用の支払いなど)は、後見人の役割とは別に整理する必要があります。施設によって求められる内容が違いますので、入居前に何が必要かを確認しておきましょう。

なお、身元保証人を立てることが難しい場合の対応は、施設や状況によって大きく異なります。判断が難しいときは、地域包括支援センターや相談員と一緒に整理していくのが安心です。

手続きの流れと相談先

法定後見を利用する場合の大まかな流れと、相談できる窓口を整理します。手続きの細かいところは家庭裁判所や専門職が案内してくれますので、まずは相談先を知っておくことが大切です。

法定後見は、家庭裁判所への申立てから始まります。申立てができるのは、本人・配偶者・一定の範囲の親族などとされています(身寄りがないなどの場合に、市区町村長が申立てを行うしくみもあります)。

相談できる主な窓口は、次のとおりです。

  • 地域包括支援センター 高齢者の総合相談窓口です。制度の利用を考え始めたら、まずここに相談できます
  • 市区町村の権利擁護の窓口・社会福祉協議会 成年後見の相談や、利用の支援を行っているところがあります
  • 家庭裁判所 法定後見の申立先です。手続きの案内を受けられます
  • 法テラス(日本司法支援センター) 法的な手続きや費用の相談ができます
  • 弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職 申立ての準備や、後見人としての関わりを相談できます

どこから相談すればよいか迷う場合は、まず地域包括支援センターに連絡してみてください。状況に応じて、適切な窓口へつないでもらえます。

費用の考え方

成年後見制度を利用するときには、いくつかの費用がかかります。具体的な金額はケースや地域によって異なり、専門職が後見人になった場合の報酬は家庭裁判所が決めます。ここでは、どんな費用がかかるかの全体像だけお伝えします。

  • 申立てにかかる費用(手数料や、必要書類の取得費用など)
  • 本人の状態を確かめる鑑定が必要な場合の費用
  • 専門職が後見人になった場合の報酬(家庭裁判所が決めます)

費用の負担が難しい場合に、申立てや報酬の助成を行っている自治体もあります。具体的な金額や助成の有無は、家庭裁判所や、お住まいの市区町村の窓口、専門職に確認してください。

よくあるご質問

Q. 認知症の親に代わって、家族が施設の契約をしてもよいですか。

A. ご本人の判断能力が十分にある間は、ご家族が手伝いながら本人が契約することができます。判断能力が大きく下がっている場合は、家族であっても当然に本人を代理できるわけではなく、成年後見制度の利用が必要になることがあります。判断に迷うときは、地域包括支援センターや家庭裁判所、専門職に相談してみてください。

Q. 成年後見人がつくと、老人ホームの入居契約はできますか。

A. 成年後見人は、本人の財産管理と、生活や療養に関する手続き(身上監護)を担います。老人ホームの入居契約も、本人に代わって結ぶことができるとされています。ただし、後見人の権限の範囲や具体的な手続きはケースによって異なりますので、家庭裁判所や専門職に確認してください。

Q. 成年後見人がいれば、身元保証人は不要になりますか。

A. 成年後見人と身元保証人は役割が異なり、後見人がついても自動的に身元保証人になるわけではありません。施設が求める身元保証人・身元引受人の役割(緊急時の連絡先や費用の支払いなど)は、後見人の役割とは別に整理して考える必要があります。施設ごとに求められる内容が違いますので、入居前に確認してください。

Q. 成年後見制度を使うには、どこに相談すればよいですか。

A. まずは地域包括支援センターや、市区町村の権利擁護の窓口、社会福祉協議会に相談するのがすすめられます。法定後見の申立ては家庭裁判所に対して行います。手続きや費用の具体的なことは、家庭裁判所や、弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職、法テラスに確認してください。

Q. 費用はどのくらいかかりますか。

A. 申立てにかかる費用や、専門職が後見人になった場合の報酬などがかかります。金額はケースや地域によって異なり、報酬は家庭裁判所が決めます。具体的な費用は家庭裁判所や専門職にご確認ください。費用の負担が難しい場合に、助成の制度がある自治体もあります。

まとめ

判断能力が下がった親御さんの入居・契約は、制度のしくみを知っておくと、落ち着いて進められます。最後に要点を整理します。

  1. 判断能力が大きく下がっている場合、家族でも当然には本人を代理できず、成年後見制度の利用が必要になることがあります
  2. 成年後見制度には、すでに能力が下がってから使う法定後見と、備えとしての任意後見があります
  3. 後見人は入居契約を代理できるとされていますが、延命などの医療の同意は一般に役割の外です
  4. 後見人と身元保証人は役割が別で、後見人がついても自動的に身元保証人になるわけではありません
  5. 相談は地域包括支援センターから。申立ては家庭裁判所、費用や手続きは専門職・法テラスへ

制度の手続きは、ご家族にとってなじみがなく、戸惑うのが当然です。ひとりで抱え込まず、地域包括支援センターや専門職、相談員と一緒に進めていけます。お気軽にご相談ください

参考文献・公的資料

  1. 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度」(2026年6月閲覧)
  2. 裁判所「成年後見制度について」(2026年6月閲覧)
  3. 厚生労働省「成年後見制度の利用の促進・権利擁護」関連情報(2026年6月閲覧)
  4. 個別の手続き・権限・費用・助成の有無は、家庭裁判所・市区町村の窓口・専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士)・法テラスにご確認ください。

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