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コラム入居後のフォローご家族向け

施設への不満・苦情の伝え方と相談先
— 第三者委員・運営適正化委員会まで社会福祉士が解説 —

親御さんが入居した施設に対して、「対応に不満がある」「でも直接言うと、親が気まずくならないか心配」と、伝えるのをためらってしまう方は少なくありません。声を上げることに、後ろめたさを感じる必要はありません。 苦情や相談は、暮らしをよりよくするための大切な声です。本記事では、まず施設のなかで伝える方法から、市町村・国保連・運営適正化委員会・消費生活センターといった外部の相談窓口の選び方、感情的にならずに伝えるこつまでをまとめました。
掲載日:2026.07.11|監修:社会福祉士・入居相談員
この記事の答え

苦情は、まず施設のなかで伝えるのが近道です。解決が難しいときは、市町村・国保連・運営適正化委員会といった外部の窓口を、内容に応じて使い分けます。

多くの場合、まずは施設の生活相談員や施設長に伝えるのが解決への近道です。重要事項説明書には苦情窓口や第三者委員の連絡先が記載されています。施設内で解決が難しいときや直接言いにくいときは、介護サービスの質は市町村や国民健康保険団体連合会(国保連)、福祉サービス全般は運営適正化委員会、契約トラブルは消費生活センター(188)と、内容に応じて相談先を選びます。苦情を伝えたことを理由に入居者が不利な扱いを受けることは認められていません。
中川 優美(社会福祉士・入居相談員)
この記事の監修者

中川 優美Yumi Nakagawa

社会福祉士。ふれあい入居サポートセンター葛飾相談室にて、入居相談を担当。入居後のお困りごとや、施設とのやり取りのご相談も含めて、ご家族をサポートしている。
社会福祉士(国家資格)ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室高齢者向け住まい紹介事業者届出 25-0881
編集ポリシー:本記事は、事業者による苦情解決の仕組みと運営適正化委員会については社会福祉法 第82条・第83条、国民健康保険団体連合会の苦情処理業務については介護保険法 第176条第1項第3号、有料老人ホームの苦情処理体制については厚生労働省「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」に基づいて執筆しています(いずれも 2026 年 7 月に確認)。相談窓口の具体的な運用は自治体により異なりますので、詳細はお住まいの市区町村にご確認ください。本記事内の事例はイメージで、特定の個人を表すものではありません。

まず知っておきたいこと

「苦情を言うと、親が施設で肩身の狭い思いをするのではないか」と心配になり、我慢してしまう方は少なくありません。ですが、苦情や相談は施設にとっても、暮らしをよくするための大切な声です。伝えることに後ろめたさを感じる必要はありません。

まず知っておいていただきたいのは、次の2つです。

  1. 苦情を伝えたことを理由に、入居者へ不利益な扱いをすることは認められていません
  2. 伝える相手には順番があります。多くの場合、まず施設のなかで伝えるのが解決への近道です

いきなり外部の役所に持ち込むよりも、まずは施設に直接伝えるほうが、早く対応につながることが多くあります。それでも解決が難しいときや、直接は言いにくいときのために、外部の窓口も用意されています。この記事では、その順番と使い分けを整理してお伝えします。

伝える前に整理しておきたいこと

苦情を伝えるとき、気持ちが高ぶっていると、話がうまく伝わらないことがあります。伝える前に、次の3つを分けて整理しておくと、落ち着いて話せます。

  • 起きた事実:いつ、どこで、何があったのか。日付や状況をメモにしておきます
  • してほしいこと:謝ってほしいのか、対応を変えてほしいのか、再発を防いでほしいのか
  • 手元の記録:面会時のメモ、施設からの連絡、写真など、残っているもの

「対応が悪い」という漠然とした言い方よりも、「先月から○○が続いていて、△△してほしい」と具体的に伝えるほうが、施設も動きやすくなります。感情をぶつけることが目的ではなく、暮らしをよくすることが目的だと考えると、伝え方も定まってきます。

まずは施設のなかで伝える

多くの苦情は、施設のなかでの話し合いで解決できます。まずは施設に直接伝えることから始めましょう。

生活相談員・施設長に伝える

日々の介護やケアに関することは、まず現場をよく知る 生活相談員施設長 に伝えるのが近道です。担当のケアマネジャーがいる場合は、ケアマネジャーに間に入ってもらう方法もあります。

顔を合わせて話しにくいときは、電話や書面でも構いません。「困っていることがあるので相談したい」と切り出せば、多くの施設は時間をとって対応してくれます。

施設の苦情窓口と第三者委員

福祉サービスを提供する事業者には、社会福祉法にもとづき、苦情を適切に解決するよう努めることが求められています。多くの施設では、苦情を受け付ける窓口の担当者を決めており、その連絡先は 重要事項説明書 に記載されています。

あわせて、施設のなかだけで抱え込まないように、外部の人が関わる 第三者委員 を置いている施設もあります。第三者委員は、施設の職員ではない立場(民生委員や弁護士、学識経験者など)で苦情を聞き、施設と入居者の間に入って解決を手伝う役割です。重要事項説明書や施設の掲示に連絡先がある場合は、こうした窓口を使うこともできます。

外部の相談窓口

施設との話し合いで解決が難しいとき、または施設に直接は言いにくいときは、外部の窓口に相談できます。それぞれ役割が違うので、内容に合わせて選びます。いずれも無料で利用できます。

相談先どんなときに特徴
市区町村の介護保険担当課介護サービス全般の相談。まず身近な窓口として介護保険の保険者。最も身近な相談先です
地域包括支援センター介護や暮らし全体の相談高齢者の総合相談窓口。どこに相談すべきか迷うときにも
国民健康保険団体連合会(国保連)介護サービスの質やケアの内容への苦情介護保険法にもとづき、事業者を調査し指導・助言します
運営適正化委員会(都道府県社会福祉協議会)福祉サービス全般の苦情解決の相談・あっせん社会福祉法にもとづく第三者機関。中立の立場で間に入ります
都道府県・市区町村の有料老人ホーム担当課施設の運営や指針に合わない対応への相談行政には施設への指導の権限があります
消費生活センター(局番なしの188)契約・解約・返還金などのトラブル契約にまつわる相談全般

国民健康保険団体連合会(国保連)は、介護保険法にもとづいて介護サービスへの苦情を受け付け、事業者を調べて指導や助言を行う機関です。運営適正化委員会は、社会福祉法にもとづき各都道府県の社会福祉協議会に置かれた第三者機関で、福祉サービスの苦情について相談を受け、必要に応じて施設と入居者の間を取り持つ(あっせんする)役割を担います。

内容別の窓口の選び方

どこに相談すればよいか迷ったときは、困っていることの中身で選ぶと分かりやすくなります。

  • 日々のケアや介護の質(対応が雑、様子を教えてもらえない など)→ まず施設の生活相談員・施設長。解決しなければ市区町村の介護保険担当課や国保連
  • 契約・お金(解約、返還金、追加費用の説明 など)→ 消費生活センター(188)。あわせて施設の苦情窓口
  • 施設の運営全般(人員体制、指針に合わない対応 など)→ 都道府県・市区町村の有料老人ホーム担当課
  • どこに相談すべきか分からない→ 地域包括支援センターや市区町村の介護保険担当課。まず入口として相談し、必要な窓口を案内してもらえます

ひとつの相談先で解決しないときは、別の窓口に相談し直しても構いません。窓口どうしが連携して対応してくれることもあります。

伝えるときのこつ

苦情を伝えるときは、次のような点を意識すると、話し合いが前に進みやすくなります。

  • 事実と希望を分けて伝えます。「○○が起きた。だから△△してほしい」の形にします
  • 記録を残します。日付・状況をメモし、できれば書面で伝えると、後から確かめられます
  • 相手を責めるより、改善を求める姿勢で臨みます。同じ目的(親御さんの暮らしをよくする)を共有する言い方が効果的です
  • 話し合いの内容を控えておきます。いつ・誰と・何を話したかを記録しておくと、次の相談にもつながります

強い口調で一方的に責めると、施設も身構えてしまい、かえって話がこじれることがあります。冷静に、けれど遠慮せずに、困っていることと望むことを伝えていきましょう。

よくあるご質問

Q. 施設に苦情を言うと、親が不利な扱いを受けないか心配です。

A. 苦情を伝えたことを理由に、入居者へ不利益な扱いをすることは認められていません。多くの施設は、苦情を暮らしをよくするための大切な声として受け止めます。それでも心配なときは、市町村や運営適正化委員会など外部の窓口に相談する方法もあり、匿名での相談に応じてもらえる場合もあります。

Q. まずどこに伝えればよいですか。

A. 多くの場合、まずは施設の 生活相談員や施設長 に伝えるのが近道です。重要事項説明書には施設の苦情窓口や第三者委員の連絡先が記載されています。施設内での話し合いで解決が難しいときや、直接言いにくいときに、市町村や国保連、運営適正化委員会といった外部の窓口を使います。

Q. 国保連や運営適正化委員会とは何ですか。

A. 国民健康保険団体連合会(国保連)は、介護保険法にもとづき介護サービスへの苦情を受け付け、事業者を調査して指導や助言を行う機関です。運営適正化委員会は、社会福祉法にもとづき各都道府県の社会福祉協議会に置かれた第三者機関で、福祉サービスの苦情解決の相談やあっせんを行います。いずれも無料で利用できます。

Q. 契約やお金のトラブルはどこに相談できますか。

A. 契約内容や解約、返還金など契約にまつわるトラブルは、消費生活センター(局番なしの188) が相談窓口になります。介護サービスの質に関することは市町村や国保連、施設の運営全般に関することは有料老人ホームの担当課(都道府県・市区町村)と、内容によって窓口を使い分けると相談がスムーズです。

Q. 感情的にならずに伝えるこつはありますか。

A. いつ・どこで・何が起きたのかという 事実 と、どうしてほしいのかという 希望 を、分けて整理しておくと伝わりやすくなります。日付や状況をメモに残し、できれば書面で伝えると記録が残ります。相手を責める言い方よりも、暮らしをよくするために相談したいという姿勢で臨むと、話し合いが前に進みやすくなります。

まとめ

施設への不満や苦情の伝え方について、大切な点を振り返ります。

  1. 苦情や相談は、暮らしをよくするための大切な声です。伝えることに後ろめたさは要りません
  2. 多くの場合、まずは 施設の生活相談員・施設長 に伝えるのが解決への近道です
  3. 重要事項説明書には、施設の 苦情窓口や第三者委員 の連絡先が記載されています
  4. 施設内で解決が難しいときは、内容に応じて 市町村・国保連・運営適正化委員会・消費生活センター を使い分けます
  5. 伝えるときは、事実と希望を分け、記録を残すことが話し合いを前に進めます

苦情を伝えたことで、親御さんが不利な扱いを受けることは認められていません。ひとりで抱え込まず、施設や外部の窓口を頼りながら進めていきましょう。伝え方に迷うときや、住み替えも考えたいときは、お気軽にご相談ください

参考文献・公的資料

  1. 社会福祉法 第82条(社会福祉事業の経営者による苦情の解決)、第83条(運営適正化委員会)(e-Gov 法令検索、2026年7月閲覧)
  2. 介護保険法 第176条第1項第3号(国民健康保険団体連合会の業務・苦情処理)(e-Gov 法令検索、2026年7月閲覧)
  3. 厚生労働省「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」(令和6年12月6日改正、2026年7月閲覧)— 苦情処理体制・重要事項説明書の記載事項
  4. 厚生労働省「社会福祉事業の経営者による福祉サービスに関する苦情解決の仕組みの指針について」(平成12年、第三者委員の設置等)

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