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コラム入居後のフォローご家族向け

老人ホームに入った親のお金の管理
— 通帳・小遣い・日用品費の決め方を社会福祉士が解説 —

入居先が決まって一段落したころ、「親の通帳は誰が持つのか」「小遣いはいくら渡せばよいのか」「日用品費の請求は何を見ればよいのか」という、細かいけれど放っておけない問題が出てきます。施設探しのあいだは後回しになりやすく、決めないまま数か月が過ぎることも少なくありません。 ここはお金そのものより、決め方と記録の残し方でもめるところです。本記事では、入居後のお金を「毎月の請求」と「手元で動くお金」に分けて整理し、通帳の預かり方、施設の預り金、小遣いと日用品費の決め方、きょうだいでの記録の共有までをまとめました。
掲載日:2026.10.21|監修:社会福祉士・入居相談員
この記事の答え

入居後のお金は「毎月の請求」と「本人の手元で動くお金」に分けて考えます。金額を決めることより、誰がどこまで扱うかを決め、記録を残すことが大切です。

毎月の請求は施設から届きますので、引き落としの口座と、内訳の確かめ方を決めておけば回ります。もめやすいのは、通帳や印鑑を誰が預かるか、小遣いをどう渡すか、日用品費の中身をどう確認するかという手元のお金のほうです。取り扱いは施設によって異なりますので、入居先の重要事項説明書や契約書で確かめてください。判断が難しくなってきている場合は、ご家族だけで抱えず、地域包括支援センターにご相談ください。
中川 優美(社会福祉士・入居相談員)
この記事の監修者

中川 優美Yumi Nakagawa

社会福祉士。ふれあい入居サポートセンター葛飾相談室にて、入居相談を担当。入居後に出てくる暮らしやお金のご相談も含めて、ご家族の住まい選びをサポートしている。
社会福祉士(国家資格)ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室高齢者向け住まい紹介事業者届出 25-0881
編集ポリシー:本記事は、入居後のお金の取り扱いについて、これまでご家族から伺ってきたご相談の傾向をもとに執筆しています(2026 年 9 月時点)。預り金の有無・上限額・手数料・明細の出し方は施設によって大きく異なります。実際の取り扱いは入居先の重要事項説明書・契約書でご確認いただくか、施設に直接お尋ねください。本記事内の事例はイメージで、特定の個人を表すものではありません。

まず知っておきたいこと

入居が決まるまでは、費用といえば「毎月いくらかかるか」の話が中心になります。ところが実際に暮らしが始まると、それとは別に、こまごまとしたお金の問題が出てきます。

  • 親の通帳と印鑑を、誰が持っているのか決まっていない
  • 散髪代やおやつ代を、そのつど家族が立て替えている
  • 日用品費という項目で毎月請求が来るが、中身が分からない
  • きょうだいから「お金はどうなっているのか」と聞かれて、説明できない

どれも急ぎではないため後回しになりやすく、半年ほど経ってから相談に来られることがよくあります。そのころには立て替えが積み重なっていたり、きょうだいの間に気まずさが生まれていたりします。

先にお伝えしておきたいのは、ここでつまずくのは金額の大きさが原因ではないということです。月に数千円のことでも、決め方があいまいなまま続くと、あとから説明できなくなります。逆に、扱う額が大きくても、決め方と記録がはっきりしていれば、もめることはあまりありません。

入居からなるべく早い時期に、いちど決めておくことをおすすめします。

入居後のお金は2つに分かれる

入居後のお金は、性質の違う2つに分けて考えると整理しやすくなります。混ぜて考えると、どこを確認すればよいのか分からなくなります。

毎月の請求として届くもの

施設から毎月届く請求です。多くの場合、次のような項目が並びます。項目の立て方や名称は施設によって異なります。

項目見ておきたいこと
家賃・利用料毎月ほぼ変わらない金額です。変わっていたら理由を確かめます
管理費・運営費施設によって含まれるものが違います
食費入院や外泊で食べなかった日の扱いが施設ごとに異なります
介護保険の自己負担分使ったサービスの量によって月ごとに動くことがあります
医療費・薬代受診した月に増えます
日用品費・雑費おむつ代などが含まれることがあり、月ごとの差が出やすい項目です

こちらは口座引き落としになっていることが多く、いちど設定すれば手はかかりません。確かめておきたいのは、引き落としの口座が誰の名義かということです。ご本人の年金が入る口座から引き落とすのか、ご家族の口座から出すのかで、あとの整理のしやすさが変わります。

費用を誰が負担するのかという話そのものは、別記事「老人ホームの費用は誰が払うのか|子に義務はあるか・兄弟の分担」で整理しています。

本人の手元で動くお金

もうひとつが、施設のなかでご本人が使うお金です。

  • 理美容(施設に理容師が来ることがあります)
  • おやつ、飲み物
  • 新聞、雑誌
  • 趣味のもの、季節の衣類
  • レクリエーションや行事の実費

金額としては小さいのですが、もめやすいのはこちらです。 請求書に残らず、誰がいくら立て替えたのかが分からなくなりやすいためです。ここをどう回すかが、この記事の中心になります。

通帳・印鑑・カードをどうするか

入居のときに、ご本人が通帳や印鑑を施設に持ち込むことはあまりありません。居室での保管に不安があるためです。そうすると、ご家族のどなたかが預かることになります。

先に決めておきたい4つのこと

預かること自体はよくあることですが、次の4つをはっきりさせてから預かることをおすすめします。口頭で構いませんが、できれば書き留めておいてください。

  1. 誰が預かるか 通帳・印鑑・キャッシュカードを、それぞれ誰が持つのか。分けて持つご家族もいらっしゃいます
  2. 何のために使うか 施設の費用と、ご本人のための買い物に限る、というように範囲を決めます
  3. いくらまでは相談なしで動かしてよいか 金額の線を決めておくと、そのつど迷わずにすみます
  4. 誰に報告するか きょうだいがいる場合、どのくらいの頻度で何を見せるかを決めます

この4つが決まっていれば、あとから聞かれたときに説明できます。決めていないまま数年が過ぎると、善意でやってきたことでも説明が難しくなります。

預かることと、使ってよいことは別

ここは丁寧にお伝えしておきたいところです。

通帳を預かっていることと、ご本人のお金をご家族の判断で使ってよいことは、別の話です。 ご本人が理解したうえで頼まれているのか、頼まれないまま預かっている状態なのかで、意味が変わってきます。

ご本人が理解して意思を示せる状態であれば、「何にどう使ってよいか」をご本人の口から確かめておいてください。 そのやり取りがあったこと自体が、あとで効いてきます。

ご本人の同意や代理する権限がないまま財産を動かすことについては、注意が必要な場面があります。この点は別記事「老人ホームの費用は誰が払うのか」で扱っていますので、あわせてご覧ください。判断が難しくなってきている場合の仕組みについては、この記事の後ろの節と、別記事「成年後見制度と老人ホームの入居・契約」でお伝えします。

施設が現金を預かる仕組み

施設によっては、入居者の少額の現金を預かり、日用品の買い物などに使って、出し入れを記録する取り扱いがあります。「預り金」「小口現金」など、呼び方はさまざまです。

これがあると、ご家族が毎回立て替えて精算する手間が減ります。ただし、すべての施設にある仕組みではありません。 次のような点は施設ごとに違いますので、入居先の重要事項説明書や契約書を確かめるか、施設に直接お尋ねください。

確かめたい点なぜ確かめるか
預り金の取り扱いがあるか扱っていない施設もあります
預けられる上限額上限を設けている施設があります。いくらまでかは施設にご確認ください
手数料がかかるかかかる場合、月々の請求に乗ることがあります
出納の記録を家族が見られるかここは必ず確かめてください。見せてもらえる形になっているかが大切です
補充の連絡はどう来るか残りが少なくなったときの連絡方法を決めておきます
退去・逝去のときの返金の流れ手続きと必要な書類を聞いておきます

とくに大切なのは、出納の記録をご家族が確認できるかどうかです。預けたあとの動きが見えない状態は、施設にとってもご家族にとっても良い形ではありません。多くの施設は求めれば見せてくれますので、遠慮なくお尋ねください。

なお、入居のときに確かめておきたい持ち物や貴重品の扱いについては、別記事「老人ホーム入居の持ち物リスト|何を・どれだけ用意するか」にまとめています。

小遣いと日用品費の決め方

小遣いは金額より使い道から決める

「毎月いくら渡せばよいですか」というご質問をよくいただきますが、決まった目安はありません。 施設の中で現金を使う場面がどのくらいあるかによって、必要な額は大きく変わります。

金額から決めるより、使い道から逆算するほうが無理がありません。

  • 理美容は月に何回か、1回いくらか
  • おやつや飲み物を、自分で買う場面があるか
  • 新聞や雑誌を取っているか
  • 行事や外出の実費が、どのくらいの頻度であるか

これを施設に聞けば、おおよその形が見えます。そのうえで、まず1〜2か月ようすを見て調整するのが確実です。最初から決め切ろうとすると、多すぎたり足りなかったりします。

ご本人が現金を持つこと自体が難しい場合は、施設の預り金や、ご家族が面会のときに必要なものを持っていく形にしているご家族もいらっしゃいます。正解はひとつではありません。

日用品費の請求を読む

毎月の請求のなかで、いちばん質問が多いのが日用品費・雑費です。月によって額が動くため、「今月は高い」と感じやすい項目です。

動く理由はいくつかあります。

  • おむつやパッドの使用量が増えた(体調の変化が背景にあることがあります)
  • 季節の衣類や寝具を買った
  • 行事があった
  • 消耗品をまとめて購入した

内訳は確かめて構いません。 多くの施設で、何をいくつ購入したかの明細を出せるようになっています。請求書に内訳が載っていない場合は、生活相談員や事務の窓口に「明細を見せていただけますか」とお尋ねください。

ここで大切なのは、責める形で聞かないことです。「おかしいのではないか」ではなく、「増えた理由を知りたい」という聞き方のほうが、実のある答えが返ってきます。実際、おむつの使用量が増えていた背景に体調の変化があったというように、請求の変化がご本人の状態を知らせてくれることもあります。

明細を見ても納得できないときや、伝えても取り合ってもらえないときの進め方は、別記事「施設への不満・苦情の伝え方と相談先|第三者委員・運営適正化委員会」で整理しています。

記録の残し方ともめないための工夫

お金の管理でご家族が困るのは、たいていお金そのものではなく、説明できないことです。記録さえ残っていれば、多くの場面は静かに済みます。

難しいことをする必要はありません。次の程度で十分です。

  1. 通帳は記帳しておきます まとめて引き出さず、必要なときに動かすほうが、あとから追いやすくなります
  2. 立て替えたらその場でメモします 日付・金額・何に使ったか。スマートフォンのメモで構いません
  3. 施設の請求書は捨てずにまとめます 年に一度見返すと、季節ごとの動きが見えます
  4. 月に一度、きょうだいに共有します 通帳の写真1枚でも、送っておくだけで意味があります

とくに4つ目は、管理しているご本人を守るためのものです。きょうだいのうち一人だけが通帳を持ち、記録が共有されていない状態は、後になって疑いが生まれやすく、管理していた方にとって不利益になります。ここは相続の場面でも問題になりやすいところです。

きょうだいの間での話し合いの進め方そのものについては、別記事「兄弟姉妹で介護分担を決める — こじれない話し合いの進め方」をご覧ください。

遠方にお住まいで、通帳の管理を離れて行うことになる場合の考え方は、別記事「遠距離・疎遠の家族による施設探し|離れて暮らす親の入居準備」でも触れています。

判断が難しくなってきたとき

ご本人の判断が難しくなってくると、お金の管理は別の段階に入ります。

これまでお伝えしてきた「ご本人に確かめながら預かる」という形は、ご本人が理解して意思を示せることが前提です。その前提が崩れてくると、ご家族だけで抱えるのが難しくなります。たとえば次のような場面です。

  • 施設との契約を変更する必要が出てきた
  • ご本人名義の預金を、まとまった額で動かす必要が出てきた
  • 金融機関で、ご家族では手続きができないと言われた
  • きょうだいの間で、使い道について意見が分かれている

こうした段階になったら、ご家族の中だけで結論を出そうとせず、外の窓口に相談してください。 相談先は、担当のケアマネジャー、施設の生活相談員、そしてお住まいの地域の地域包括支援センターです。地域包括支援センターは、高齢の方の暮らし全般の相談を受けている窓口で、お金や権利に関わる相談も扱っています。

判断が難しい状態が続くときに使う仕組みとして、成年後見の制度があります。どういう制度で、入居や契約とどう関わるのかは、別記事「成年後見制度と老人ホームの入居・契約|判断能力が下がった親の契約」で解説しています。手続きや費用、どなたが後見人になるかは事情によって異なりますので、検討される際は専門の窓口にご確認ください。

なお、ご本人の意思がはっきりしないまま財産を動かす状態が続くことは、ご本人にとってもご家族にとっても良い形ではありません。迷われている段階で、ご相談いただいて構いません。

よくあるご質問

Q. 親の通帳やキャッシュカードは、家族が預かってよいのでしょうか。

A. ご本人が理解したうえで「預かってほしい」と言われている場合は、預かっているご家族が多くいらっしゃいます。ただし、預かることと、ご本人のお金を家族の判断で使ってよいことは別の話です。 預かるときは、何のために・誰が・どこまで扱うのかをご本人ときょうだいの間ではっきりさせ、出し入れの記録を残しておくことをおすすめします。判断が難しくなってきている場合は、地域包括支援センターにご相談ください。

Q. 施設が現金を預かってくれると聞きました。どういう仕組みですか。

A. 施設によっては、入居者の少額の現金を預かり、日用品の買い物などに使って出納を記録する取り扱いがあります。呼び方や上限額、手数料の有無、記録をご家族が確認できるかどうかは施設ごとに異なります。すべての施設にある仕組みではありませんので、入居先の重要事項説明書や契約書を確かめるか、施設に直接お尋ねください。

Q. 月々の小遣いはいくらぐらい渡せばよいですか。

A. 決まった目安はありません。ご本人が何に使うのかから逆算するほうが、金額から決めるより無理がありません。施設のなかで現金を使う場面が少なく、ほとんどが月々の請求にまとまる施設もあります。まず1〜2か月、実際に何にいくら使ったかを見てから調整すると決めやすくなります。

Q. 日用品費や雑費の請求が思ったより高いのですが、確認できますか。

A. 確認して構いません。多くの施設では、何を・いくつ購入したかの明細を出せるようになっています。請求書に内訳が載っていない場合は、生活相談員や事務の窓口に明細を見せてもらえるか尋ねてみてください。おむつ代など、使う量によって月ごとに差が出る項目もありますので、増えた理由を聞くだけで納得できることもあります。

Q. きょうだいがいます。お金の管理は一人でやってよいですか。

A. 実際に動く方が一人になるのは自然なことですが、記録を一人だけが持っている状態は避けたほうが安全です。 あとから「使い込んだのではないか」という話になりやすく、これは管理していた方にとっても不利益です。通帳のコピーや出し入れのメモを、月に一度でもきょうだいに共有しておくと、お互いに守られます。

Q. 立て替えたお金は、親のお金から返してもらってよいですか。

A. ご本人のために使った実費であれば、精算されているご家族が多くいらっしゃいます。大切なのは、何にいくら使ったかが分かる形にしておくことです。レシートを残す、メモに残す、きょうだいに知らせておく。この3つがあれば、あとで説明に困ることはほとんどありません。金額が大きくなる場合や、きょうだいの間で意見が分かれている場合は、先に相談しておくほうが安全です。

まとめ

入居後のお金の管理について、大切な点を振り返ります。

  1. お金は**「毎月の請求」と「手元で動くお金」に分けて**考えます。もめやすいのは後者です
  2. 引き落としの口座が誰の名義かを、早い時期に確かめておきます
  3. 通帳を預かるときは、誰が・何のために・いくらまで・誰に報告するかの4つを決めます
  4. 預かることと、使ってよいことは別です。ご本人に確かめられるうちに確かめておきます
  5. 施設の預り金はすべての施設にある仕組みではありません。とくに出納の記録を見られるかを確かめます
  6. 小遣いは金額からではなく、使い道から逆算し、1〜2か月ようすを見て調整します
  7. 日用品費は内訳を確かめて構いません。責める形ではなく、増えた理由を聞く形で尋ねます
  8. 記録の共有は、管理しているご本人を守るためのものです。月に一度、きょうだいへ
  9. 判断が難しくなってきたら、家族の中で結論を出さず、地域包括支援センターへ

細かい話に見えて、あとから効いてくるところです。入居してすぐの時期に、いちど決めておいていただければと思います。決め方に迷われたときは、お気軽にご相談ください。

参考文献・公的資料

  1. 入居先の重要事項説明書・入居契約書 — 預り金の取り扱い、上限額、手数料、出納記録の開示、退去時の返金の流れ(施設によって異なるため、入居先の書類でご確認ください)
  2. 施設が発行する月々の請求書および日用品費の明細 — 項目の立て方と名称は施設ごとに異なります
  3. お住まいの地域の地域包括支援センター — 高齢者の暮らし全般および権利・財産に関する相談窓口(相談できる範囲は市区町村にご確認ください)

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