離れて暮らす親の施設探しは、親の住む地域の地域包括支援センターやケアマネジャー、相談員を軸にすると、現地に行ける回数が少なくても進められます。役割分担と連絡体制の準備が鍵になります。

中川 優美Yumi Nakagawa
離れていても進められる
離れて暮らす親の施設探しは、近くにいるご家族に比べて手間がかかるのは確かです。それでも、進め方のコツをつかめば、現地に行ける回数が少なくても形にできます。離れているからと、ご自分を責める必要はありません。
いちばんの土台になるのは、親の住む地域の相談窓口を頼ることです。地元の地域包括支援センターやケアマネジャー、紹介の相談員を軸にすれば、見学や情報収集を現地で支えてもらえます。遠方のご家族は、情報を整理して判断する役割を担う、という分担が現実的です。
「自分が動かなければ」と一人で抱え込むと、距離の分だけ負担が大きくなります。地元の力を借りる前提で考えると、ぐっと進めやすくなります。
遠距離ならではの難しさ
まず、遠距離・疎遠ならではの難しさを整理しておきます。あらかじめ知っておくと、どこを工夫すればよいかが見えてきます。
- 何度も見学に行けない 移動の時間と費用がかかり、現地での見学回数が限られます
- 本人の状態が見えにくい ふだん一緒にいないため、どのくらい介護が必要かをつかみにくいことがあります
- 急変時にすぐ駆けつけられない 体調が変わったとき、その場で対応するのが難しくなります
- 地元の事情が分からない 地域の施設の相場や特性、窓口がどこにあるかが分かりにくいです
- 疎遠だと本人の希望が分からない ふだん連絡を取っていないと、本人がどう暮らしたいかをつかみにくいことがあります
これらはどれも、地元の窓口や相談員と連携することで、ずいぶん補えます。次の章から、具体的な進め方を見ていきましょう。
進め方の基本
遠距離の施設探しは、次の順番で進めると無理がありません。
まず、いまの状況によって最初の相談先が変わります。入院中なら病院の医療ソーシャルワーカー、在宅で担当のケアマネジャーがいる場合はそのケアマネジャー、どちらもいない場合は親の住む地域の地域包括支援センターへ相談します。
- 親の住む地域の地域包括支援センターに連絡します 高齢者の総合相談窓口です。遠方からでも電話で相談できます。介護保険の申請の相談や、必要な支援機関・地域の資源の案内を受けられます。まだ介護保険を申請していない場合は、ここが入り口になります
- 本人の状態と希望を確かめます ケアマネジャーや地域包括支援センターの力を借りて、どのくらい介護が必要か、本人がどう暮らしたいかを整理します
- 地元の相談員・紹介事業者を頼ります 施設の具体的な選定や見学の調整は、ご本人・ご家族、ケアマネジャー、病院の医療ソーシャルワーカー、施設の相談員、民間の紹介事業者などが、状況に応じて連携して進めます。現地の施設情報に詳しい相談員に、条件に合う施設を絞ってもらうこともできます
- 見学や契約のタイミングを、帰省と合わせます 現地に行ける機会を、見学や契約などの大事な場面に合わせると、少ない回数で進められます
介護がこれから始まる段階の方は、全体の流れを別記事「親の介護が突然始まったら」でも整理しています。最初の相談のしかたは「ケアマネ・地域包括への最初の相談」もあわせてご覧ください。
見学に行けないときの工夫
現地に何度も行けないときでも、施設の様子を確かめる方法はあります。次のような工夫で、見学の回数が少なくても判断しやすくなります。
- 施設の資料や写真を共有してもらう 施設の許可を得た範囲で、居室や共用部分の資料・写真を送ってもらったり、オンラインでの見学を使ったりすると、雰囲気が伝わります
- 電話やビデオ通話で相談する 施設の担当者と直接話すと、資料だけでは分からないことを確かめられます
- 帰省のタイミングにまとめて見学する 一度の帰省で複数の施設を回れるよう、相談員に段取りしてもらうと効率的です
- 相談員に現地の様子を調べてもらう 現地の相談員に見学へ同行してもらい、現地の様子や確認したい点を調べて、候補を絞るための参考の情報として共有 してもらう方法もあります(最終的に判断するのはご家族です)
見学で確かめておきたい点は、別記事「老人ホーム見学で見る 12 のチェック」でまとめています。遠方のご家族が現地の方に見てもらうときの、確認ポイントの共有にも役立ちます。
急変への備え
遠方に住んでいると、体調が急に変わったときにすぐ駆けつけられないのが、いちばんの心配ごとですよね。だからこそ、あらかじめ連絡体制を決めておくことが、何よりの備えになります。
- 緊急時の連絡先と順番を決めておく 施設や病院から、まず誰に連絡が入るか、その次は誰かを決めておきます。あわせて、緊急連絡先・身元引受人・連帯保証人について、それぞれ何を求められるのか を施設に確認しておきます
- 施設の連絡体制を確認しておく 夜間や緊急時に誰が対応し、どの段階でご家族へ連絡が入るのか を、入居前に具体的に確かめておきます
- 近くに住む人と役割を分けておく 近くにきょうだいや親族がいる場合は、ご本人の希望と、それぞれのご家族の健康状態・仕事・家庭の状況を確かめたうえで、合意できる範囲で役割を決めます
施設に入ることは、ご本人が職員による支援や安否の確認を受けられる環境になるということでもあります。これも、施設入居を考える一つの理由になります。
きょうだい・疎遠の場合
きょうだいで離れて住んでいる場合
きょうだいがそれぞれ離れて暮らしている場合は、早めに役割を分けておくと、一人に負担が偏りません。たとえば、近くに住むきょうだいが現地での対応、遠方のきょうだいが情報の整理や費用の管理、というように、それぞれの状況に合わせて分担します。
大切なのは、誰か一人が抱え込まないことです。話し合いの進め方は、別記事「兄弟姉妹で介護分担を決める」で詳しくまとめています。
親と疎遠の場合
ふだんあまり連絡を取っていない場合でも、ご本人の同意を得ながら、ご本人が希望する範囲で情報を集め、施設探しを支えていく ことはできます。関係を無理に作り直そうとしなくて大丈夫です。まずは親の住む地域の地域包括支援センターに相談し、公的な窓口や相談員の力を借りて進めていく方法があります。
なお、ご本人と連絡が取れない場合は、地域包括支援センターへ情報を提供したり相談したりすることはできますが、ご本人の同意などの関係で、ご家族に提供される情報が限られる場合があります。
疎遠であることに、後ろめたさを感じる方もいらっしゃいます。けれど、いまできる形で関わろうとしていること自体が、大切な一歩です。ご自分を責めず、専門家を頼りながら、できる範囲で進めていきましょう。
よくあるご質問
Q. 遠方に住んでいて、何度も見学に行けません。どう進めればよいですか。
A. 地元の地域包括支援センターや、紹介の相談員を軸にすると、現地に行ける回数が少なくても進められます。写真や動画で施設の様子を共有してもらう、帰省のタイミングにまとめて見学する、電話やビデオ通話で相談する、といった方法があります。ご家族のどなたかが代表して動き、情報を共有し合うかたちもよく取られます。
Q. 親と疎遠で、あまり連絡を取っていません。それでも施設探しはできますか。
A. 関係が近くなくても、ご本人の同意を得ながら、ご本人が希望する範囲で情報を集め、施設探しを支えていくことはできます。無理に関係を作り直そうとしなくて大丈夫です。まずは親の住む地域の地域包括支援センターに相談してみてください。なお、ご本人と連絡が取れない場合、地域包括支援センターへ情報を提供したり相談したりすることはできますが、ご本人の同意などの関係で、ご家族に提供される情報が限られる場合があります。ひとりで抱え込まず、専門家を頼ってください。
Q. 急に体調が変わったとき、遠方からどう対応すればよいですか。
A. あらかじめ、施設や地域の連絡先、緊急時の連絡の順番を決めておくと、いざというときに動きやすくなります。夜間や緊急時に誰が対応し、どの段階でご家族へ連絡が入るのかを、入居前に施設と具体的に確認しておきましょう。あわせて、緊急連絡先・身元引受人・連帯保証人について、それぞれ何を求められるのかも確かめておくと安心です。
Q. きょうだいで離れて住んでいます。どう分担すればよいですか。
A. 近くに住むきょうだいが現地の対応、遠方のきょうだいが情報整理や費用の管理、というように、それぞれの状況に合わせて役割を分けると無理がありません。誰か一人に負担が偏らないよう、早めに話し合っておくことが大切です。話し合いの進め方は、別記事「兄弟姉妹で介護分担を決める」もあわせてご覧ください。
Q. 地元に頼れる人がいません。誰に相談すればよいですか。
A. いまの状況によって変わります。入院中なら病院の医療ソーシャルワーカー、在宅で担当のケアマネジャーがいる場合はそのケアマネジャー、どちらもいない場合は親の住む地域の地域包括支援センターが最初の相談先になります。地域包括支援センターは高齢者の総合相談窓口で、介護保険の申請の相談や、必要な支援機関・地域の資源の案内を受けられます。遠方からでも電話で相談できますので、まずは連絡してみてください。施設の具体的な選定や見学の調整は、ケアマネジャー、施設の相談員、紹介事業者などと連携して進めます。
まとめ
離れて暮らす親の施設探しは、地元の力を借りる前提で考えると、ぐっと進めやすくなります。最後に要点を整理します。
- 親の住む地域の地域包括支援センターを起点にすると、遠方からでも進められます
- ケアマネジャーや地元の相談員と連携し、見学や情報収集を現地で支えてもらいます
- 見学に行けないときは、写真・動画の共有、帰省時のまとめ見学、ビデオ通話を活用します
- 急変に備えて、緊急時の連絡先と順番を決めておくと安心です
- きょうだいがいれば役割を分け、疎遠の場合は無理をせず本人の意思を尊重して進めます
距離があると、どうしても心細くなるものです。けれど、離れていてもできることはたくさんあり、頼れる窓口もあります。ご家族だけで抱え込まず、専門家と一緒に進めていきましょう。お気軽にご相談ください。
参考文献・公的資料
- 厚生労働省「地域包括支援センターの概要」(2026年6月閲覧)
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」(2026年6月閲覧)
- 本記事の進め方は、ふれあい入居サポートセンターの相談実務に基づく一般的な内容です。地域の窓口・施設の対応は地域や施設によって異なります。
