老人ホームの入居は「相談 → 候補選び → 見学 → 申込 → 審査・面談 → 契約 → 入居」という流れで進みます。必要書類は介護保険被保険者証と健康状態がわかる書類が中心です。

中川 優美Yumi Nakagawa
入居までの全体像
最初に全体像をつかんでおくと、いま自分がどこにいるのかが分かり、気持ちが少し落ち着きます。老人ホームの入居は、施設のタイプを問わず、おおむね次の流れで進みます。
| ステップ | やること | だれが動くか |
|---|---|---|
| 1. 相談 | 状況を整理し、相談先に連絡する | ご家族・ケアマネジャー |
| 2. 候補選び | 条件に合う施設をいくつか選ぶ | ご家族・相談員 |
| 3. 見学 | 実際に見て、雰囲気や体制を確かめる | ご家族(本人同行も) |
| 4. 申込 | 申込書と必要書類を提出する | ご家族 |
| 5. 審査・面談 | 施設が受け入れ可否を判断する | 施設 |
| 6. 契約 | 重要事項説明を受け、契約を結ぶ | ご家族・施設 |
| 7. 入居 | 引っ越し・持ち物の準備をして入る | ご家族・本人 |
この 7 つを順番に進めていけば、形になっていきます。すべてを一度に決めようとせず、ひとつずつ進めていけば大丈夫です。
7 つのステップ
ステップ 1 相談
まずは、いまの状況を相談できる相手を見つけるところからです。相談先には、おもに次のような窓口があります。
- 地域包括支援センター お住まいの地域の高齢者の相談窓口です。介護保険の申請やケアマネジャー探しの入り口にもなります
- 担当のケアマネジャー すでに介護保険サービスを使っている場合は、担当のケアマネジャーが施設探しの相談相手になります
- 病院の相談窓口(医療ソーシャルワーカー) 入院中であれば、退院後の住まいの相談に乗ってもらえます
- 老人ホーム紹介の相談員 ふれあいのような紹介事業者でも、条件に合う施設選びを無料でご相談いただけます
介護保険をまだ申請していない場合は、この段階で要介護認定の申請を始めておくと、その後がスムーズです。申請の流れは別記事「要介護認定の申請から結果までの流れ」でまとめています。
ステップ 2 候補選び
相談で状況が整理できたら、条件に合う施設をいくつか選びます。一度にたくさん見ようとすると迷ってしまいますので、まずは 3〜5 件ほどに絞るのがおすすめです。
候補を絞るときの主な軸は、次のとおりです。
- 介護体制(看護師の常駐時間、夜間の人員、医療への対応)
- 費用(入居一時金、月額、退去時の返還の決まり)
- 立地(ご家族が通いやすいか、最寄り駅からの距離)
- 受け入れ条件(要介護度、認知症、医療的なケアの可否)
施設のタイプによる違いがよく分からないときは、別記事「特養と介護付き有料老人ホームの違い」もあわせてご覧ください。
ステップ 3 見学
候補が決まったら、できるだけ実際に見学します。資料やホームページだけでは分からないことが、現地に行くと見えてきます。
見学では、費用や立地に加えて、スタッフの対応・食事・におい・他の入居者の様子などを見ておくと、入居後のギャップを減らせます。可能であれば、親御さん本人も一緒に見学できると、入居後に新しい環境へなじみやすくなります。見学で確かめたい点は、別記事「老人ホーム見学で見る 12 のチェック」で詳しくまとめています。
ステップ 4 申込
入居したい施設が決まったら、申込書と必要書類を提出します。必要な書類は施設によって異なりますが、おおむね共通するものを次の章にまとめました。
申込の段階では、入居を確定する必要はないのが一般的です。契約を結ぶ前であれば、ほかの施設と比べて辞退することもできますので、気になる施設には早めに申込んで枠を確保しておく、という進め方もあります。
ステップ 5 審査・面談
申込を受けて、施設は受け入れができるかどうかを判断します。書類に加えて、施設の職員が本人に直接会って状態を確かめる面談(入居前アセスメント)を行うことが一般的です。入院中の場合は、施設の看護師が病院へ会いに来ることもあります。
ここで確かめられるのは、医療的なケアの必要性や、認知症の状態、生活のリズムなどです。受け入れが難しいと判断される場合もありますが、その場合も、相談員が別の候補をご一緒に探すことができますので、ひとつの結果で行き詰まる必要はありません。
ステップ 6 契約
受け入れが決まったら、契約に進みます。契約の前には、施設から 重要事項説明書 の説明を受けます。これは費用・サービス内容・退去の条件などをまとめた大切な書類です。
その場の説明だけで判断しようとせず、持ち帰って確かめることもできます。重要事項説明書のどこを見ればよいかは、別記事「重要事項説明書の読み方」で 1 項目ずつ解説しています。なお、親御さんの判断能力が十分でない場合は、契約をご家族だけで進めてよいか迷うことがあります。その場合の考え方は、別記事「成年後見制度と老人ホームの入居・契約」をご覧ください。
ステップ 7 入居
契約が済んだら、入居日に向けて引っ越しの準備をします。日用品や衣類、お薬、お薬手帳などをそろえ、必要なものは施設に確認しておきます。入居当日は、本人が安心できるよう、使い慣れたものを少し持っていくとよいでしょう。
必要書類の一覧
申込から契約までに求められる書類は、施設によって違いますが、よく必要になるものは次のとおりです。あらかじめ手元に集めておくと、手続きがスムーズに進みます。
| 書類 | どんなもの | 入手先 |
|---|---|---|
| 介護保険被保険者証 | 要介護度が記載された保険証 | 本人の手元・市区町村 |
| 介護保険負担割合証 | 自己負担の割合(1〜3 割)が分かる書類 | 本人の手元・市区町村 |
| 健康診断書 または 診療情報提供書 | 健康状態・持病・服薬がわかる書類 | 施設指定の様式・主治医 |
| 健康保険証(医療保険) | 受診や入院に備えて | 本人の手元 |
| 本人確認書類・印鑑 | 契約手続きに使う | 本人・ご家族 |
| お薬手帳・看護サマリー | 服薬や医療の引き継ぎに使う | 薬局・病院 |
| 収入や資産がわかる書類 | 料金プランや軽減制度の確認に使う場合がある | 本人・ご家族 |
| 身元引受人に関する書類 | 連絡先・続柄などを示す | ご家族 |
健康診断書は、施設指定の様式が用意されていることが多く、作成に数日から 1 週間ほどかかります。早めに主治医に依頼しておくと、入居の段取りが遅れにくくなります。
費用の軽減制度(負担限度額認定など)に当てはまりそうな場合は、収入や資産がわかる書類が必要になることがあります。軽減のしくみは別記事「高額介護サービス費と負担限度額認定」で解説しています。
期間の目安
入居までにかかる期間は、施設のタイプによって大きく変わります。下の表はあくまで一般的な目安で、施設の空き状況によって前後します。
| 施設のタイプ | 相談から入居までの目安 |
|---|---|
| 介護付き有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム | 早ければ 1〜2 週間ほど |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 早ければ 1〜2 週間ほど |
| グループホーム | 空きがあれば数週間、空き待ちのこともある |
| 特別養護老人ホーム(特養) | 申込から入居まで数か月以上かかることが多い |
特養は費用が抑えられる一方で、希望者が多く、入居までに時間がかかる傾向があります。「すぐに入れる」とお約束できるものではありませんので、急ぐ場合は有料老人ホームなど動ける施設も候補に入れて、並行して進めるのが現実的です。
急ぐときの進め方
退院の期日が迫っているなど、急いで決めなければならない状況もあります。慌ててしまうのは当然ですが、進め方のコツをつかめば、短い期間でも動かせます。
- まず動ける施設から候補にする すぐに入居を受け入れられる施設は限られます。空きのある有料老人ホームやサ高住を中心に絞ると、間に合いやすくなります
- 書類を先に準備する 健康診断書や診療情報提供書は時間がかかります。候補が固まる前でも、主治医に早めに相談しておくと安心です
- 見学を本人なしで進めることも考える 入院中で本人が動けない場合は、ご家族だけで見学し、施設の看護師に病院へ来てもらう形でも進められます
- いったん入って、落ち着いてから住み替える前提でもよい まずは受け入れ先を確保し、その後ゆっくり本命を探す、という二段構えも選択肢のひとつです
退院期日が迫るケースの動かし方は、別記事「退院期日が迫る場合の施設選び」でより詳しくまとめています。焦らず、動ける順番に手をつけていけば、道筋は見えてきます。
ケアマネとの連携
すでに在宅で介護保険サービスを使っている場合は、担当のケアマネジャーが心強い連携相手になります。ケアマネジャーは本人の状態を日頃から把握しているため、施設に伝えるべき情報を整理しやすい立場にいます。
施設入居を考え始めたら、早めにケアマネジャーに伝えておくと、次のような点で動きがスムーズになります。
- 本人の状態や介護の経過を、施設に正確に引き継いでもらえる
- 入居にあたって、在宅サービスからの切り替えを調整してもらえる
- 入居前のアセスメントや面談に、情報を提供してもらえる
入院中で在宅のケアマネジャーがいない場合は、病院の相談窓口(医療ソーシャルワーカー)が同じ役割を担います。ケアマネジャーへの伝え方や、入居後の引き継ぎについては、別記事「ケアプランの見直しと施設への引き継ぎ」もあわせてご覧ください。
なお、入居相談の紹介事業者を使う場合も、ケアマネジャーと役割が重なるわけではありません。ケアマネジャーが本人の暮らし全体を支え、紹介事業者が施設選びの部分をお手伝いする、という分担になります。
つまずきやすい点
これまでご相談を受けてきたなかで、入居の準備でつまずきやすいと感じる点をまとめました。先に知っておくと、慌てずに進められます。
- 健康診断書の準備が遅れる 作成に時間がかかるため、後回しにすると入居日がずれ込みます。早めの依頼が安心です
- 本命の特養を待つあいだ、在宅が限界になる 待機が長引くことを見込んで、つなぎの施設も並行して考えておくと安全です
- 契約の判断者が決まっていない 本人の判断が難しい場合、だれが契約するのかで止まってしまうことがあります。早めに家族内で話し合っておきましょう
- 費用の見通しが立たないまま申し込む 月額に加えて、医療費やおむつ代などがかかることもあります。軽減制度も含めて見通しを立てておくと安心です
ひとつでも当てはまりそうなら、早めに相談員や地域包括支援センターに相談してみてください。ご家族だけで抱え込む必要はありません。
よくあるご質問
Q. 相談から入居まで、どのくらいの期間がかかりますか。
A. 施設の空き状況や書類の準備しだいですが、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、見学から入居まで早ければ 1〜2 週間ほどで進むこともあります。特別養護老人ホームは申込から入居まで数か月以上かかることが多く、施設のタイプによって幅があります。退院期日が迫っている場合は、まず動ける施設から候補を絞っていくのが現実的です。
Q. 入居の申込に健康診断書は必ず必要ですか。
A. 多くの施設で、入居審査のために健康状態がわかる書類を求められます。施設指定の様式の健康診断書か、主治医からの診療情報提供書のいずれかであることが一般的です。必要な様式や検査項目は施設によって異なりますので、申込の前に確認しておくと、二度手間を防げます。
Q. 本人が認知症で契約の判断が難しい場合はどうなりますか。
A. ご本人の判断能力が十分でない場合、ご家族だけで契約を進めてよいか迷う場面が出てきます。成年後見制度の利用が必要になることもありますので、別記事「成年後見制度と老人ホームの入居・契約」もあわせてご覧ください。判断に迷うときは、地域包括支援センターや相談員にご相談ください。
Q. 見学のときは何を見ておけばよいですか。
A. 費用や立地に加えて、介護体制・夜間の人員・食事・におい・スタッフの対応などを確かめておくと、入居後のギャップを減らせます。見学で確かめたい点は、別記事「老人ホーム見学で見る 12 のチェック」で詳しくまとめています。
Q. 申込をすると必ず入居しなければなりませんか。
A. 申込や仮押さえの段階では、入居を確定する必要はないのが一般的です。契約を結ぶ前であれば、ほかの施設と比べて辞退することもできます。契約後のクーリングオフや一時金の返還の扱いは施設ごとに決まっていますので、契約前に重要事項説明書で確認しておくと安心です。
まとめ
老人ホームの入居は、順番に進めていけば形になっていきます。最後に要点を整理します。
- 流れは「相談 → 候補選び → 見学 → 申込 → 審査・面談 → 契約 → 入居」の 7 つのステップです
- 必要書類は、介護保険被保険者証・負担割合証と、健康診断書または診療情報提供書が中心になります
- 期間は有料老人ホームなら早ければ 1〜2 週間、特養は数か月以上と、タイプによって幅があります
- 健康診断書は時間がかかるため、早めに主治医へ依頼しておくと安心です
- 急ぐときは、動ける施設から候補にして、つなぎの入居も選択肢に入れると間に合いやすくなります
初めての施設探しは、分からないことが多くて当然です。順番に進めれば、ご家族にとって納得のいく形が見えてきます。ご家族だけで整理しきれないときは、お気軽にご相談ください。
参考文献・公的資料
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」(2026年6月閲覧)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」(2026年6月閲覧)
- 本記事の入居までの流れ・必要書類は、ふれあい入居サポートセンターの相談実務に基づく一般的な進め方です。具体的な申込書類・審査基準・契約条件は各施設にご確認ください。
