特養・老健・介護医療院への紹介はケアマネジャーの役割に入りますが、有料老人ホームを探して回るところまでは、法令にそこまでの定めは見当たりません。責める前に、頼み方を区切って変えてみてください。

中川 優美Yumi Nakagawa
まず知っておきたいこと
「施設を考えたい」と伝えたのに反応が薄い。そう感じると、見放されたような気持ちになります。介護で余裕がないときほど、こたえるものです。
ただ、ここで知っておいていただきたいことがあります。ひとくちに「施設探し」といっても、法令に役割として書かれている部分と、書かれていない部分があります。
整理すると、次のようになります。
| 内容 | ケアマネジャーの位置づけ |
|---|---|
| 在宅での生活が難しくなってきたときの相談 | 相談の範囲に入る |
| 入居できる施設の種類や、時期の考え方の整理 | 相談の範囲に入る |
| 特養・老健・介護医療院への紹介 | 法令に定めのある役割(介護保険法第8条第24項) |
| 有料老人ホーム・サ高住の候補を集める、見学の段取りをする | 法令には書かれていない |
| 施設との契約 | 行わない(ご本人または適切な代理権を持つ方と施設) |
つまり、相談は頼んでよいが、探すこと自体を代行してもらうのは業務として想定されていない——ここが、すれ違いの正体です。
ケアマネジャーに何をどこまで頼めるかの全体像は、別記事「ケアマネジャーに相談できることはどこまで」でお伝えしています。
動きにくい2つの理由
民間の住まい探しについて、なぜ動きが鈍くなることがあるのか。仕組みを見ると分かります。
理由1:施設に入居すると、担当が終わる
居宅介護支援(ケアマネジャーがケアプランを作り、サービスを調整する仕事)の費用は、在宅で暮らしている方に対するものです。介護保険から全額が給付され、ご利用者の自己負担はありません。
ところが、施設に入居すると担当は施設のケアマネジャーへ引き継がれ、居宅のケアマネジャーの担当はそこで終わります。
施設探しを手伝うほど、自分の担当が終わりに近づくという構造です。これは個人の姿勢ではなく、制度の作りの問題です。
誤解のないようにお伝えしますが、この構造があっても、実際には熱心に動いてくださるケアマネジャーは大勢いらっしゃいます。ご本人にとって施設が適切だと判断すれば、そこへ向けて調整する——それが本来の役割だからです。ただ、動きが鈍いときに「なぜだろう」と考える材料として、この仕組みを知っておくと受け止め方が変わります。
理由2:地域の施設情報を網羅するのは現実的でない
一人のケアマネジャーが担当する人数には目安が設けられています。そのうえで、担当する方それぞれの月々の訪問、サービス事業者との調整、書類の作成があります。
そこに加えて、地域にある老人ホームの空き状況・費用・受け入れ条件を常に把握しておくのは、現実的ではありません。とくに有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は数が多く、空き状況は日々変わります。
ですから「知らないから紹介できない」という場面も起こります。これも姿勢の問題ではありません。
頼み方を変えてみる
いきなり窓口を変える前に、頼み方を区切ってみることをおすすめします。ケアマネジャーが持っている情報とつながりは、ご家族が一から集めるより確実だからです。
避けたい頼み方
- 「施設を探してください」… 範囲が広すぎて、どこから手をつければよいか伝わりません
- 「どこかいいところありませんか」… 判断の材料が渡っていません
動きやすい頼み方
| 頼み方 | 何が得られるか |
|---|---|
| 「今の状態だと、どの種類の施設が候補になりますか」 | 施設の種類が絞れる。ここが決まると探す範囲が変わる |
| 「特養の申し込みは、今の要介護度でできますか」 | 申し込みの可否と、待つ間の選択肢が分かる |
| 「施設の相談ができる窓口を教えてもらえますか」 | 地域包括支援センターや紹介事業者につないでもらえる |
| 「候補が決まったら、情報提供書をお願いできますか」 | 施設への打診が通りやすくなる |
| 「今の状態で在宅を続けるとしたら、あと何を足せますか」 | 施設を急がなくてよい可能性が見える |
とくに最後の項目は、聞いてみる価値があります。在宅のサービスを組み直すことで、もう少し続けられる場合があるからです。在宅を続けるか施設にするかの判断軸は、別記事「在宅を続けるか、施設にするか」で整理しています。
また、ご本人の希望とご家族の希望は分けて伝えてください。 ご本人がまだ在宅を望んでいる場合、ケアマネジャーが慎重になるのは自然なことです。ご本人が何と言っているか、ご家族としてなぜ施設を考えているのか——両方を伝えると、話が具体的になります。
ほかに相談できる窓口
窓口にはそれぞれ守備範囲があります。できることとできないことを知っておくと、たらい回しを避けられます。
| 窓口 | できること | できないこと |
|---|---|---|
| 病院の医療ソーシャルワーカー(入院中) | 退院後の行き先の相談、地域の窓口への案内 | 施設を探して回ること。ケアマネジャーの代わりを務めること |
| 地域包括支援センター | 相談先の整理と案内、地域の情報提供 | 施設を探して回ること。施設への指導 |
| 市区町村の介護保険担当課 | 制度の説明、特養の申し込みの案内 | 民間施設の紹介 |
| 老人ホームの紹介事業者 | 候補の整理、見学の段取り、施設への打診 | 契約そのもの(ご本人と施設が結びます) |
入院中の方は、まず病院の医療ソーシャルワーカーに声をかけてください。 退院の期日が決まっている場合、動ける時間が限られます。詳しくは別記事「退院期日が迫る場合の施設選び」をご覧ください。
紹介事業者については、無料で使える仕組みと、その構造が持つ偏りのリスクを含めて、別記事「紹介会社を使うべきか、自分で探すべきか」で正直にお伝えしています。あわせてご覧ください。
自分で探すときの手順
ご自身で探す場合も、道具はそろっています。
1. 施設の種類を絞る
要介護度、医療的な処置の有無、認知症の症状、費用の上限。この4つで候補になる種類が決まります(別記事「要介護度別の施設の選び方」)。
2. 公的な検索の仕組みを使う
- 介護サービス情報公表システム(厚生労働省)… 全国の介護サービス事業所を検索できます。運営状況や職員体制も公表されています
- お住まいの自治体が出している施設の一覧… 市区町村の高齢福祉の窓口や、ホームページで配布されていることがあります
- 特別養護老人ホーム… 申し込みは施設へ直接、または自治体経由です。複数に申し込める場合があります
3. 電話で確認する
空き状況は日々変わるため、電話で確認するのが確実です。伝えることは、要介護度・医療的な処置・認知症の症状・費用の上限・希望する時期の5点です。
4. 見学する
見学のポイントは、別記事「老人ホームの見学で社会福祉士が必ず見る 12 のチェック」にまとめています。
ご自身で探すと、費用や条件を自分の目で確かめられるという利点があります。一方で、数が多く、空き状況を追いかけるのに手間がかかります。介護をしながらこれを行うのは負担が大きいので、途中から窓口に頼むという進め方でも構いません。
担当を替えるべきか
施設探しが進まないという理由だけで替えることは、おすすめしていません。
理由は2つあります。
- 入居までの間も、在宅のサービスは続きます。 担当が替わると、その調整が一度止まります
- これまでの経緯を知っている人がいることには価値があります。 引き継ぎには時間がかかります
施設探しは別の窓口に頼み、ケアマネジャーには在宅の部分を続けてもらう——この分け方ができます。実際、紹介事業者は担当のケアマネジャーと連携しながら進めるのが通常です。関係がこじれる心配はありません。
一方で、連絡がつかない、希望を聞いてもらえない、話した内容が反映されないといった別の理由があるときは、担当を替えることもできます。まずは所属している居宅介護支援事業所の管理者に相談してください。事業所ごと替えることも可能で、理由を細かく説明する義務はありません。
よくあるご質問
Q. ケアマネジャーに施設探しを頼むのは、そもそも筋違いでしょうか。
A. 筋違いではありません。在宅での生活が難しくなってきたときに、どの時期にどう切り替えるかを一緒に考えるのは相談の範囲に入ります。介護保険法では、特養・老健・介護医療院への入所が必要なときに、そこへ紹介することまでが居宅介護支援に含まれると定められています(第8条第24項)。一方、有料老人ホームやサ高住の候補を集めて見学の段取りをするところは、法令にそこまでの定めは見当たりません。公的な施設への紹介までは役割に入るが、民間の住まいを探して回る代行までは想定されていない、という位置づけです。
Q. なぜ動いてくれないのでしょうか。
A. 個々のケアマネジャーの姿勢の問題とは限りません。居宅介護支援は在宅で暮らす方を支える仕事で、施設に入居すると担当は施設のケアマネジャーへ引き継がれます。そのうえ、民間の有料老人ホームなどを探す部分は法令に定めのある役割の外にあります。加えて、担当する人数には目安があり、地域のすべての施設の空き状況を把握しておくのは現実的ではありません。この2つが重なっている場合があります。
Q. 頼み方を変えると変わりますか。
A. 変わることがあります。「施設を探してください」ではなく、範囲を区切って頼んでみてください。今の状態で入居できる施設の種類を教えてほしい、相談の窓口につないでほしい、候補が決まったら情報提供書を書いてほしい——といった形です。ケアマネジャーが持っている情報とつながりは、ご家族が一から集めるより確実です。
Q. ほかに相談できるところはありますか。
A. 入院中であれば病院の医療ソーシャルワーカー、在宅であれば地域包括支援センターが相談先の整理と案内を担当します。ただしどちらも施設を探して回る立場ではありません。候補を幅広く比べたいときは老人ホームの紹介事業者を使う方法があります。ご自身で探す場合は、介護サービス情報公表システムや自治体の施設一覧が使えます。
Q. 担当のケアマネジャーを替えたほうがよいでしょうか。
A. 施設探しが進まないという理由だけで替えることはおすすめしていません。入居までの間も在宅のサービスは続きますし、経緯を知っている人がいることには価値があります。施設探しは別の窓口に頼み、ケアマネジャーには在宅の部分を続けてもらうという分け方ができます。連絡がつかないなど別の理由があるときは、事業所の管理者に相談するか、事業所ごと替えることもできます。
まとめ
施設探しが進まないと感じたときの進め方について、大切な点を振り返ります。
- 特養・老健・介護医療院への紹介はケアマネジャーの役割に入ります(介護保険法第8条第24項)。有料老人ホームを探して回るところは、法令にそこまでの定めが見当たりません
- 入居すると担当が終わる仕組みと、地域の施設情報を網羅できない現実。この2つが背景にあります
- 頼み方を区切ります。「施設の種類を教えて」「窓口につないで」「情報提供書をお願いしたい」
- ご本人の希望とご家族の希望は分けて伝えます
- 窓口には守備範囲があります。入院中は医療ソーシャルワーカー、在宅は地域包括支援センター、候補を広く比べるなら紹介事業者
- ご自身で探すなら介護サービス情報公表システムと自治体の一覧。空き状況は電話で確認します
- 施設探しが進まないという理由だけで担当を替えることはおすすめしません。分担する方法があります
ひとりで抱えて動けなくなってしまう前に、使える窓口を分けてみてください。どこから手をつければよいか迷われたときは、お気軽にご相談ください。
参考文献・公的資料
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第24項 — 居宅介護支援の定義。介護保険施設への入所を要する場合の「紹介その他の便宜の提供」が含まれる(2026年9月20日確認)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第25項 — 「介護保険施設」は指定介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院を指す(2026年9月20日確認)
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第13条第17号 — 介護保険施設への紹介その他の便宜の提供(2026年9月20日確認)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第46条第2項 — 居宅介護サービス計画費の額。第41条第4項のような「百分の九十」の定めがなく、利用者の自己負担が生じない(2026年9月20日確認)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」— 全国の介護サービス事業所の検索(2026年8月閲覧)
