紹介会社は、入居が決まった施設から紹介手数料を受け取って運営しています。だからこそ、提携している施設に寄りやすい力が構造として働きます。

中川 優美Yumi Nakagawa
紹介会社が無料な理由
老人ホームの紹介会社の多くは、入居が決まった施設から紹介手数料を受け取ることで運営しています。そのため、ご家族の側は無料で相談できることが多くなっています。
ここで押さえておきたいのは、「無料」は「誰も費用を負担していない」という意味ではないという点です。費用は施設側が負担しており、施設はその費用を含めた収支で運営しています。
手数料の額や受け取る条件は、事業者と施設の契約によって異なります。「入居後の月額利用料の何か月分」という形が使われることもありますが、金額の水準は一律ではありません。この記事で相場をお示しすることは避けます。断定的な数字を出すと、かえって実態と離れた印象を与えてしまうためです。
この仕組みが抱えるリスク
正直にお伝えします。この仕組みには、構造として偏りが生まれうる力が働きます。
- 提携している施設の中からしか紹介できない。提携外に、より条件の合う施設があっても候補に上がらないことがあります
- 手数料の条件がよい施設に寄りやすい。事業者の収支は入居の成立で決まるため、この方向の力が働きます
- 入居が決まらないと収入にならない。そのため、決めていただく方向に話を運びたくなる力も働きます
これは業界として否定できない点だと考えています。当センターも同じ仕組みで運営している当事者ですので、「うちは違います」とは書きません。
大切なのは、この力が働く前提で、どう確認するかです。確認のしかたは後の章にまとめました。
自分で探す場合にできること
ご自身で探すことは、十分に可能です。次のような方法があります。
- 介護サービス情報公表システム(厚生労働省)で、地域の施設を調べる
- 市区町村の介護保険担当課や 地域包括支援センターに、地域の施設について尋ねる
- 担当の ケアマネジャーに相談する
- 気になる施設へ 直接電話して、受け入れ条件・空室・費用を確認する
- 見学を申し込み、ご自身の目で確かめる
ご自身で探すいちばんの利点は、提携の枠に縛られないことです。地域のどの施設でも候補にできます。
一方で、手間はかかります。1 件ずつ電話をして受け入れ条件を確認し、空室を尋ね、費用の内訳を聞き取る。これを複数件くり返すことになります。平日の日中に連絡が取りやすいかどうかも、進み方を左右します。
紹介会社が向いている場面
次のような場合は、施設の受け入れ条件を把握している窓口を使うほうが早いことが多くなります。
| 場面 | なぜ効くか |
|---|---|
| 退院期日が迫っている | 空室があり判定の早い施設を把握している。1 件ずつ当たる時間がない |
| 医療的なケアが必要 | 対応できる施設が限られる。処置の内容から打診先を絞れる |
| 生活保護を受給している | 受け入れ実績のある施設が限られる |
| 認知症で断られ続けている | 断られた理由をふまえて打診先を組み立て直せる |
| 遠方に住んでいる | 現地の見学や確認を代わりに進められる |
共通しているのは、「条件に合う施設がどこにあるか」を知っていること自体が価値になる場面だという点です。逆に、条件が特別に難しくなく、時間にも余裕がある場合は、ご自身で探しても大きな差は出にくいと考えています。
併用してかまいません
「紹介会社に相談したら、そこに任せきりにしなければいけない」ということはありません。
- ご自身で探しながら、並行して紹介会社にも相談する
- 複数の紹介会社に相談する
- 担当のケアマネジャーにも相談する
いずれも問題ありません。むしろ、比べられる状態を保っておくほうが、選択肢は広がります。
担当のケアマネジャーがいる場合は、まず相談してみてください。ご本人の状態を日頃から把握しており、施設に伝えるべき情報を整理しやすい立場にいます。ただし、ケアマネジャーは在宅の支援が本来の役割で、施設の空室や受け入れ条件を常に把握しているとは限りません。役割が違いますので、どちらかを選ぶというより、両方に相談して差し支えありません。
使うときの確認ポイント
紹介会社を使う場合、次の 4 点を確認してみてください。
1. 提携の範囲を説明するか
「提携している施設の中からのご紹介です」と最初に説明するかどうか。 紹介できる範囲には限りがあります。それを伏せて「地域の施設を幅広くご紹介します」とだけ言う会社と、範囲を先に示す会社とでは、そのあとの提案の受け取り方が変わります。
2. 外した施設と理由を示せるか
提案された候補だけが示され、なぜ他の施設が外れたのか説明できない場合は、理由を尋ねてみてください。「費用が上限を超えるため」「夜間の医療処置に対応できないため」「空室がないため」と具体的に返ってくるなら、候補を検討したうえで絞っていることが分かります。
3. 断りやすいか
「今回は見送ります」と伝えたときの反応を見てください。理由を細かく問い詰められたり、繰り返し連絡が来たりする場合は、入居の成立に向けた力が強く働いていると考えられます。
4. 見学のあとまで関わるか
見学に同行して終わりか、そのあとの段取りまで支えるか。重要事項説明書の読み合わせ、入居前の情報の引き継ぎ、入居後に合わなかったときの相談。ここまで関わるかどうかで、ご家族に残る負担が変わります。
よくあるご質問
Q. 紹介会社が無料なのは、なぜですか。
A. 入居が決まった施設から紹介手数料を受け取る仕組みで運営しているためです。そのため、ご家族の側は無料で相談できることが多くなっています。ただしこれは「誰も費用を負担していない」という意味ではなく、施設側が負担しています。手数料の額や条件は、事業者と施設の契約によって異なります。
Q. 施設からお金を受け取っているなら、紹介が偏りませんか。
A. 構造としては、提携している施設や、手数料の条件がよい施設に寄りやすい力が働きます。これは業界として否定できない点です。だからこそ確認していただきたいのが、提携している施設の中からの紹介であることを説明しているか、候補から外した施設とその理由を示せるかの 2 点です。この 2 つに答えられるかどうかで、偏りの度合いはかなり見分けられます。
Q. 自分で探すのと、どちらがよいのでしょうか。
A. どちらが優れているというものではなく、状況によります。時間に余裕があり、条件が特別に難しくない場合は、ご自身で探すことも十分に可能です。一方、退院期日が迫っている、医療的なケアが必要、生活保護を受給しているなど、打診先が限られる場合は、施設の受け入れ条件を把握している窓口を使うほうが早いことが多くなります。併用しても構いません。
Q. 紹介会社を使うと、そこで紹介された施設に決めなければいけませんか。
A. そんなことはありません。提案された候補が合わなければ、「今回は見送ります」と伝えれば十分で、理由を詳しく説明する必要もありません。断りにくさを感じさせる対応をされる場合は、その事業者との付き合い方そのものを見直す材料になります。複数の事業者に相談することも、ご自身で探すことと並行することもできます。
Q. ケアマネジャーに相談するのとは、どう違いますか。
A. 担当のケアマネジャーがいる場合は、まず相談してみてください。ご本人の状態を日頃から把握しており、施設に伝えるべき情報を整理しやすい立場にいます。一方、ケアマネジャーは 在宅の支援が本来の役割で、施設の空室や受け入れ条件を常に把握しているとは限りません。役割が違いますので、どちらかを選ぶというより、両方に相談して差し支えありません。
まとめ
紹介会社の仕組みを、当事者の立場から整理しました。
- 紹介会社は、入居が決まった施設から紹介手数料を受け取って運営しています。「無料」は施設が負担しているという意味です
- この仕組みには、提携施設や手数料の条件がよい施設に寄りやすい力が構造として働きます
- ご自身で探すこともできます。 提携の枠に縛られないのが利点で、手間がかかるのが難点です
- 打診先が限られる場面(退院期日・医療的なケア・生活保護・断られ続けている・遠方)では、窓口を使うほうが早いことが多くなります
- 併用して構いません。 比べられる状態を保つほうが、選択肢は広がります
- 使うときは、提携の範囲・外した施設の理由・断りやすさ・見学後の関わりの 4 点を確認してください
ふれあい入居サポートセンター(葛飾相談室)では、仕組みについてのご質問にもお答えしています。お気軽にご相談ください。
参考文献・公的資料
- 高齢者住まい事業者団体連合会(高住連)「高齢者向け住まい紹介事業者届出公表制度」(運営主体・任意の届出であること・担保される範囲。2026年8月閲覧)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」(ご自身で施設を探す場合の情報源。2026年8月閲覧)
- ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室 入居相談の実務
- 手数料の額・条件は事業者と施設の契約により異なります。本記事では相場を示していません。
- 本記事は紹介手数料を受け取って運営する当事者による解説であり、中立な第三者による事業者比較ではありません。
