疲れは気持ちの問題ではありません。中身を分けると、そのうちいくつかは頼み方と段取りで減らせます。

中川 優美Yumi Nakagawa
まず知っておきたいこと
先にお伝えしておきたいことが3つあります。
1つめは、疲れは根性の問題ではないということです。 夜中に2回起こされる生活が3か月続けば、誰でも消耗します。まとまった睡眠が取れない状態が続くと、判断も鈍ります。「自分の気持ちが弱いからだ」と考える必要はありません。
2つめは、休みは段取りで作れる部分があるということです。 介護保険のサービスには、日帰りで預かってもらうもの、短い期間泊まってもらうもの、自宅に来てもらうものがあります。どれも、担当のケアマネジャーに相談して組み替えるところから始まります。自分で事業所を探して回る必要はありません。
3つめは、相談してよい場所が制度として置かれているということです。 高齢者虐待防止法(正式には「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」)は、市町村が養護者——ご家族など介護をしている方のことです——に対する相談、指導及び助言その他必要な措置を講ずると定めています(同法第14条第1項)。介護している側を支えることも、市区町村の仕事に含まれています。
そして、もうひとつ。急な体調の変化は医療へ、命に関わるときは救急(119)が最優先です。 この記事に書いた手順よりも、そちらが先になります。
疲れの中身を分ける
「疲れた」とひとことで言っても、実際にはいくつかの別々のものが混ざっています。分けて見ると、それぞれに違う手が当たります。
| 中身 | どんな状態か | 当たる手 |
|---|---|---|
| 1. 睡眠が削られている | 夜間に起こされる、眠りが浅い | 夜間の対応があるサービス、短期間の泊まり |
| 2. ひとりになれない | 目を離せず、外出できない | 日帰りの通所、訪問のサービス |
| 3. 先が見えない | いつまで続くのか分からない | 見通しを一緒に立ててもらう、施設の下調べ |
| 4. お金の不安 | 費用がどこまで増えるか分からない | 負担を軽くする制度があるかを確認する、費用の相談 |
| 5. ひとりで決めている | 相談相手がいない、責任が重い | きょうだい・親族との分担、専門職への相談 |
| 6. 感情のすれ違い | きつく当たってしまう、言葉が出る | 距離を置ける時間を作る、相談先に話す |
ご自身がどれに近いでしょうか。複数当てはまっても構いません。 書き出してみると、「実は1の睡眠がいちばん重い」というように、正体が見えてくることがあります。
ここで大事なのは、1と2は、サービスの組み替えでかなり減らせるということです。反対に、3から6は、サービスを増やしただけでは減りません。 話す相手と、決め方の整理が要ります。どちらの疲れが重いのかで、次に取る手が変わります。
「自分は大丈夫」と思いやすい
ご相談を伺っていて感じるのは、限界に近い方ほど「まだ大丈夫です」とおっしゃるということです。毎日のことになると、それが当たり前になってしまい、疲れの度合いが自分では測りにくくなります。
次のようなことが続いているときは、ご自身の状態を一度立ち止まって見てください。あくまで目安であって、診断ではありません。
- 夜中に起こされる回数が増え、まとまって眠れない日が続いている
- 直近の1か月で、介護と関係のない外出がほとんどできていない
- 食欲がない、朝起きるのがつらい状態が続いている
- ご本人につい強い口調になってしまい、あとで落ち込む
- 仕事を休む・遅刻する回数が増えている
眠れない日が続く、食欲がない、気持ちの落ち込みが長引くといったときは、我慢せず医療機関にご相談ください。 介護をしている方が体調を崩すことは珍しくありません。
休みは頼み方で作れる
休みを作る手段を、まず4つに分けて考えます。地域によっては、このほかの手段が用意されていることもあります。どれを、どれだけ使えるかは要介護度とお住まいの地域によって異なりますので、担当のケアマネジャーにご確認ください。
① 日帰りで預かってもらう(通所)
介護保険法は「通所介護」を、施設に通わせて入浴・排せつ・食事などの介護や機能訓練を行うものと定めています(同法第8条第7項)。日中の数時間、ご本人が外に出ている状態を作れます。
回数を増やせないかを、まず相談してみてください。 週2回を週3回にするだけで、まとまった時間が生まれることがあります。認知症のある方向けの通所もあります(同法第8条第18項の認知症対応型通所介護)。
② 短い期間、泊まってもらう(短期入所)
介護保険法は「短期入所生活介護」を、施設に短期間入所させて介護や機能訓練を行うものと定めています(同法第8条第9項)。いわゆるショートステイです。
連続した睡眠を取り戻したいときは、これがいちばん効きます。 ただ、人気のある事業所は予約が埋まりやすく、思い立った日にすぐ使えるとは限りません。使うかどうか決めていなくても、早めに相談して枠の取り方を聞いておくことをおすすめします。使い方は別記事「ショートステイとは|使える場面・予約のこつ・入居への橋渡し」に整理しています。
③ 自宅に来てもらう(訪問)
入浴の介助、通院の付き添い、身体の介護など、自宅で受けられるサービスがあります。ご本人が外に出るのを嫌がる場合は、こちらから検討することになります。
夜間に対応するサービスが地域にあることもあります。1の「睡眠が削られている」に当たっているときは、夜間の手段があるかを聞いてみてください。
④ 道具で減らす(福祉用具・住宅改修)
見落とされやすいのがこれです。介助そのものを軽くする道具があります。ベッドの高さが変わるだけで、起こす負担が変わります。手すりの位置ひとつで、付き添う回数が減ることがあります。
「サービスを増やす」よりも抵抗が少なく、ご本人にも受け入れられやすい手です。担当のケアマネジャーか、福祉用具の専門の担当者に相談できます。
ケアマネジャーへの伝え方
ここがいちばん実際的な部分です。「疲れました」だけでは、担当のケアマネジャーも何を増やせばよいか決めかねます。
数で伝える
同じ内容でも、伝え方で伝わり方が変わります。
| 伝わりにくい言い方 | 伝わりやすい言い方 |
|---|---|
| 「最近疲れていて」 | 「夜中に2〜3回起こされる日が、2か月続いています」 |
| 「自分の時間がありません」 | 「先月、介護と関係なく外出できたのは1日でした」 |
| 「もう限界かもしれません」 | 「連続して眠れるのが3時間までです。日中に立っていられない日があります」 |
| 「トイレが大変で」 | 「夜間の排せつの介助が、22時以降に2回あります」 |
ご自身の状態を、我慢せずにそのまま伝えてください。 介護保険法は、居宅サービス計画をご本人及びそのご家族の希望等を勘案して作ると定めています(同法第8条第24項)。ご家族が倒れそうだという情報は、計画を考えるうえで欠かせない材料です。
「困っていること」を話す
もうひとつのコツは、「これをやってほしい」ではなく「これに困っている」から話すことです。
「ショートステイを取ってください」と伝えると、その1つが取れるかどうかの話になります。「夜に眠れないのがつらい」と伝えれば、短期入所のほかに、夜間の訪問、福祉用具、通所の増回、薬の相談といった複数の手が並びます。結果として、より早く当たる手が見つかることがあります。
言いにくいときは
「こんなことを相談してよいのだろうか」と迷われる方は多くいらっしゃいます。そのときは、迷っていること自体を伝えてみてください。 範囲の外のことであれば、どこに相談すればよいかを案内してもらえます。
口頭で言いにくければ、紙に書いて渡すだけでも構いません。 上の表のような形で、数字を3つ書いたメモで十分です。
最初の相談の進め方は、別記事「ケアマネ・地域包括への最初の相談 — 何を話せばよいか・何を準備するか」もあわせてご覧ください。
それでも回らないとき
サービスを組み替えてもなお回らない、ということはあります。そのときの相談先を整理します。
地域包括支援センター
お住まいの地域にある、高齢者の相談の窓口です。担当のケアマネジャーに言いにくいことも、こちらで聞いてもらえます。担当を替えたいときの間に入ってもらうこともできます。
窓口の場所は市区町村にお問い合わせください。担当する区域が決まっていますので、お住まいの住所で決まります。
市区町村(介護している方自身の相談として)
ここはあまり知られていません。 高齢者虐待防止法は、市町村が養護者に対する相談・指導・助言その他必要な措置を講ずると定め(同法第14条第1項)、さらに次のように定めています。
市町村は、前項の措置として、養護者の心身の状態に照らしその養護の負担の軽減を図るため緊急の必要があると認める場合に高齢者が短期間養護を受けるために必要となる居室を確保するための措置を講ずるものとする。(同法第14条第2項)
つまり、介護している方の心身の状態から見て緊急に必要だと認められる場合には、ご本人が短期間過ごす居室を確保する措置を市町村が講ずるという定めが置かれています。実際にどう運用されているか、どこが窓口かは市区町村によって異なりますので、お住まいの市区町村にご確認ください。
つい手が出そうになったとき
この話をためらう必要はありません。 追い詰められた状態が続くと、ご自身が望まない形で言葉や手が出てしまうことがあります。そうなる前に相談していただくために、上の定めがあります。
責められるのではないか、ご本人を連れて行かれるのではないか、と心配される方がいらっしゃいます。ですが、相談すること自体を避けてしまうほうが、状況は重くなります。 地域包括支援センターか市区町村の窓口に、いまの状態をそのままお伝えください。
医療機関
眠れない、食欲がない、気持ちの落ち込みが続く。こうした状態は、我慢して続けるものではありません。かかりつけの医療機関にご相談ください。 介護をしている方自身の受診は、後回しにされがちです。
施設を考え始める目安
「施設を考えること=在宅をあきらめること」ではありません。下調べを始めることと、入居を決めることは別のことです。
次のようなときは、情報を集め始めておくと、選べる手が多く残ります。
- 休みを作る手をひととおり試しても、睡眠が戻らない
- 介護している方に通院や入院の予定がある(代わりがいない状態を作らないため)
- ご本人の状態が変わり、夜間の対応が毎日必要になってきた
- お仕事を続けられるかどうかが現実の問題になってきた
とくに最後の点は、早めに動く価値があります。制度の使い方は別記事「仕事と介護を両立するには|介護離職を避ける制度と進め方」をご覧ください。
在宅を続けるか施設にするかの判断の見方は、別記事「在宅を続けるか、施設にするか|判断するときの 5 つの見方」に整理しています。決めきれないお気持ちについては「親を施設に入れる罪悪感との向き合い方|かわいそうと感じるとき」もあわせてどうぞ。
急いで決めないでください。 ただ、見学だけしてみる、話を聞くだけ、という進め方であれば、疲れている状態でも進められます。
よくあるご質問
Q. 「疲れた」とケアマネジャーに言ってもよいのでしょうか。
A. 言っていただいて構いません。ご家族の状態は、ケアプランを考えるうえでの大切な材料です。ただ、「疲れました」だけですと、担当のケアマネジャーも何を増やせばよいか決めかねます。夜に何回起きているか、お一人になれる時間が週に何時間あるか、直近1か月で外出できた日が何日あったか。数で伝えると、話が具体的になります。 言いにくいときは、メモを渡すだけでも構いません。
Q. ショートステイを使うと、本人に申し訳ない気がします。
A. そう感じる方は多くいらっしゃいます。ただ、介護をしている方が体を壊してしまえば、在宅の暮らしそのものが続けられなくなります。休むことは、在宅を続けるための手段のひとつです。 ご本人が嫌がる場合は、いきなり数泊ではなく、まず日帰りの通所から試す、行き先を見学しておく、短い日数から始めるといった進め方があります。担当のケアマネジャーにご相談ください。
Q. サービスを増やすと費用が上がるのが心配です。
A. 費用の心配があること自体を、担当のケアマネジャーに伝えてください。介護保険のサービスには、1か月に保険を使って利用できる量の上限が要介護度ごとに決められています。これは「必ずこれだけ支払う額」でも「必ずもらえる額」でもなく、保険を使って使える量の上限です。その範囲で組み替えられることがありますので、まずは相談してみてください。費用を軽くする制度もありますので、別記事「介護費用を軽くする 2 つの制度|高額介護サービス費と負担限度額認定」もご覧ください。金額の判定はお住まいの市区町村が行いますので、最終的な確認はそちらへお願いします。
Q. きょうだいが手伝ってくれません。
A. 「手伝って」と伝えるだけでは動きにくいことがあります。何を、いつ、どれだけお願いしたいのかを具体的にすると、返事がしやすくなります。通院の付き添いを月1回、週末の半日だけ、費用の一部を負担してもらう、といった形です。話し合いの進め方は、別記事「兄弟姉妹で介護分担を決める — こじれない話し合いの進め方」に整理しています。
Q. 眠れない日が続いています。どうすればよいでしょうか。
A. 眠れない、食欲がない、朝起きるのがつらいといった状態が続いているときは、我慢せずに医療機関にご相談ください。 介護をしている方が体調を崩すことは珍しくありません。あわせて、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにも、その状態をそのまま伝えてください。高齢者虐待防止法は、市町村が養護者の負担軽減のために相談・指導・助言を行うことを定めています(同法第6条・第14条第1項)。相談してよい場所です。
まとめ
介護の疲れについて、大切な点を振り返ります。
- 疲れは根性の問題ではありません。時間と睡眠が実際に削られていることの結果です
- 中身を6つに分けて見ます。睡眠・ひとりの時間・先の見通し・お金・決める重さ・感情のすれ違い
- 睡眠とひとりの時間は、サービスの組み替えで減らせることがあります。通所・短期入所・訪問・福祉用具の4つが手段です
- 伝えるときは 「疲れました」ではなく数で。夜に何回、月に何日、連続で何時間
- 「やってほしいこと」ではなく「困っていること」から話すと、当たる手が増えます
- 市町村には、介護している方の負担軽減のための相談・助言と、緊急時に短期間の居室を確保する措置の定めがあります(高齢者虐待防止法第14条)
- 急な体調の変化は 医療へ。命に関わるときは救急(119)が最優先です
- 下調べを始めることと、入居を決めることは別のことです
ひととおり手を打ってもなお回らないとき、施設の検討まで話が及ぶことがあります。そのときは、ご家族だけで抱え込まず、お気軽にご相談ください。まだ決めていない段階で構いません。
参考文献・公的資料
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第7項(通所介護)・第9項(短期入所生活介護)・第18項(認知症対応型通所介護)・第24項(居宅介護支援)— 条文を確認(2026年9月15日確認)
- 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号)第6条(相談、指導及び助言)・第14条(養護者の支援)— 条文を確認(2026年9月15日確認)
- 支給限度額(1か月に介護保険を使って利用できる量の上限であって、支払う額ではありません)・利用者負担の割合・自治体ごとの運用は、本記事では扱っていません。お住まいの市区町村と担当のケアマネジャーにご確認ください
