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コラム介護のはじめ方ご家族向け

一人暮らしの親が心配になったら
— 限界のサインと最初に使える支援を社会福祉士が整理 —

久しぶりに実家に帰って、冷蔵庫の中や台所の様子に驚いた。電話の受け答えが少しかみ合わなくなった。——「まだ大丈夫」と「もう限界かもしれない」の間で、判断がつかない時期があります。一人暮らしの限界に、共通の線引きはありません。年齢でも要介護度でも決まりません。ですが、見ておくとよい兆候と、様子を見てはいけないサインは分けられます。 本記事では、その見分け方と、まず使える支援、ご本人が嫌がるときの進め方までを整理しました。
掲載日:2026.09.29|監修:社会福祉士・入居相談員
この記事の答え

一人暮らしの限界に共通の線引きはありません。住まい・食事・薬・お金・体・人との関わりの6つで変化を見て、複数に出ていれば支援を入れる時期です。

年齢や要介護度で決まるものではありません。見ていただきたいのは、住まいの状態、食事、薬の管理、お金の管理、体の状態、人との関わりの6つです。複数で変化が出ているときは、支援を入れる時期にきています。ただし、そこから一足飛びに施設という話ではありません。一方で、火の消し忘れが続いている、転んで自分で起き上がれないことがあった、脱水が疑われる、薬が大量に余っているか重複している、詐欺の被害が疑われる——これらは様子を見ずに対応してください。最初の相談先は地域包括支援センターです。介護保険を使っていない段階でも相談できます。ご本人が支援を嫌がるときは、「介護」という言葉を使わない入り口を探す、ご家族以外の人から話してもらうといった方法があります。ただし危険が差し迫っているときは、納得を待たずに動く判断も必要です。
中川 優美(社会福祉士・入居相談員)
この記事の監修者

中川 優美Yumi Nakagawa

社会福祉士。ふれあい入居サポートセンター葛飾相談室にて、入居相談を担当。介護保険を使い始める前の段階からのご相談も承っている。
社会福祉士(国家資格)ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室高齢者向け住まい紹介事業者届出 25-0881
編集ポリシー:本記事は、介護保険法に定める地域包括支援センターの役割、厚生労働省の認知症施策に関する公開情報をもとに、当センターの相談実務を加えて執筆しています(2026 年 8 月に確認)。見守り・配食・緊急通報などの支援は自治体によって内容が大きく異なります。お住まいの市区町村にご確認ください。体調に関する判断は主治医・医療機関にご相談ください。本記事内の事例はイメージで、特定の個人を表すものではありません。

まず知っておきたいこと

「まだ大丈夫だと思うけれど、心配ではある」——この段階でのご相談は、実はとても多くいただきます。

最初にお伝えしたいことが3つあります。

1つめは、限界に共通の線引きはないということです。 何歳だから、要介護いくつだから、という決まりはありません。同じ状態でも、住まいの環境や周囲の支えによって、続けられるかどうかは変わります。

2つめは、心配の段階で動いていいということです。 「まだ介護が必要な状態ではないから」と相談をためらう方がいらっしゃいますが、介護保険を使っていない段階でも相談できます。むしろ、早いほうが選べる手が多く残ります。

3つめは、支援を入れることと施設に移ることは別だということです。 心配になった段階でいきなり施設を考えると、話が大きくなりすぎて動けません。まずは今の暮らしを続けるための支援から考えてください。

以下、何を見て、どこに相談すればよいかを順に整理します。

見ておきたい6つの兆候

実家に帰ったとき、あるいは電話で話すときに、次の6つを見てみてください。1つだけなら様子を見てよいこともありますが、複数に出ているときは支援を入れる時期です。

見るところ変化のサイン
1. 住まい台所、冷蔵庫、トイレ、床片づかない、同じものが大量にある、においが気になる、床にものが増えた
2. 食事冷蔵庫の中身、体重、食卓期限切れが多い、同じものばかり、痩せた、調理をしなくなった
3. 薬薬袋、お薬カレンダー大量に余っている、飲み忘れ、複数の病院から同じような薬が出ている
4. お金通帳、郵便物、届いた品物支払いの滞納、身に覚えのない請求、買った覚えのない品物、通帳が見当たらない
5. 体歩き方、聞こえ、見え方足元がおぼつかない、あざが増えた、聞き返しが増えた
6. 人との関わり外出、近所づきあい外に出なくなった、電話に出なくなった、同じ話が増えた

見るときのコツ

  • 前回と比べるのがいちばん確実です。「今どうか」より「前と違うか」を見てください
  • さりげなく見る。点検されていると感じると、ご本人は身構えます。一緒に片づける、一緒に買い物に行く、という形が自然です
  • 記録しておく。日付とともにメモしておくと、後で相談するときに具体的に伝えられます

とくに見落とされやすいもの

4のお金は、離れて暮らしていると見えにくく、気づいたときには被害が大きくなっていることがあります。郵便物の山、見覚えのない品物、電話の子機のそばのメモは、注意して見てください。

3の薬も見落とされやすい点です。複数の病院にかかっていると、同じような薬が重複することがあります。お薬手帳を1冊にまとめ、かかりつけの薬局を決めるだけでも整理できます。

様子を見てはいけないサイン

次のものは、様子を見ずに対応してください。 前の章の「兆候」とは別で、放置すると取り返しがつかないことがあります。

サインどうするか
火の消し忘れが続いている(鍋を焦がした跡、ガスのにおい)電磁調理器への切り替え、ガスの安全装置、火災警報器。市区町村に相談
転んで自分で起き上がれないことがあった主治医に相談。住まいの環境の見直し、緊急通報の仕組みの検討
水分や食事がとれていない、ぐったりしている脱水のおそれ。速やかに医療機関へ。意識がはっきりしないときは救急(119)
薬が大量に余っている、重複して飲んでいるかかりつけの薬局・主治医へ。お薬手帳をまとめる
詐欺や訪問販売の被害が疑われる消費生活センター(消費者ホットライン 188)、警察(#9110)。被害が進行中なら110
急に様子が変わった(つじつまが合わない、興奮している)認知症の進行と決めつけない。 せん妄・感染症・脱水・薬の影響のことがあります。速やかに医療機関へ

とくに最後の項目は大切です。急な変化は、医療で対応できる原因が隠れていることがあります。 「認知症が始まった」と受け止めて様子を見てしまうと、治療の機会を逃します。

また、近所の方や民生委員から連絡が来た場合は、その内容を軽く見ないでください。 ご家族より近くで見ている方の情報は貴重です。

最初に使える支援

相談先は「地域包括支援センター」

お住まいの地域を担当する地域包括支援センターが、最初の窓口です。

  • 介護保険を使っていない段階でも相談できます
  • 高齢の方の暮らしに関する総合的な相談窓口です
  • 保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などが配置されています

離れて暮らしている場合は、親御さんがお住まいの市区町村の窓口に問い合わせてください。担当のセンターを教えてもらえます。

ただし、地域包括支援センターは相談先の整理と案内が役割です。施設を探して回る立場ではありませんし、施設への指導を行う窓口でもありません。役割を知ったうえで相談すると、話が進みやすくなります。

最初の相談で何を話せばよいかは、別記事「ケアマネ・地域包括への最初の相談」で整理しています。

介護保険の申請

要介護認定を受けると、訪問介護やデイサービス、福祉用具、住宅改修などが使えるようになります。認定を受けていない段階でも申請できますので、心配な状態が続くなら早めに動いてください。

申請から結果までの流れは、別記事「要介護認定の申請から結果までの流れ」をご覧ください。認定後にサービスを使い始めるまでの進め方は「介護保険サービスを使い始めるまでの流れ」にまとめています。

自治体の支援

介護保険とは別に、市区町村が独自に行っている支援があります。

  • 配食サービス(食事を届けながら安否も確認する形が多い)
  • 見守り・声かけ
  • 緊急通報の装置(ボタンひとつで通報できる仕組み)
  • 住宅改修の助成
  • ごみ出しの支援

内容は自治体によって大きく異なります。 お住まいの市区町村の高齢福祉の窓口にお尋ねください。

民間の見守り

自治体の支援で足りないときは、民間の見守りサービス、宅配や新聞配達に付随する見守り、センサーを使った仕組みなどもあります。

遠くに住んでいる場合の進め方は、別記事「遠距離・疎遠の家族による施設探し」もご覧ください。

本人が嫌がるとき

「まだ大丈夫」「他人を家に入れたくない」——支援を嫌がられることは、よくあります。

衰えを認めることになるから、というのが大きな理由です。責める話ではありません。

試せる方法

1. 「介護」という言葉を使わない

  • 掃除の手伝い → 「話し相手に来てもらう」
  • デイサービス → 「体操の教室」「お風呂に入りに行く」
  • 配食 → 「作るのが大変な日のために」

入り口の言い方を変えるだけで、受け入れられることがあります。

2. 家族以外の人から話してもらう

ご家族が言うと反発されることでも、かかりつけの医師や、地域包括支援センターの職員から言われると受け入れられることがあります。「先生が言うなら」という方は多くいらっしゃいます。

3. お試しから始める

「1回だけ」「1か月だけ」という形なら受け入れやすくなります。使ってみて良ければ続く、という順序です。

4. 決めるのはご本人だと伝える

「勝手に決められる」と感じると、いっそう頑なになります。選択肢を並べて、選んでいただく形にしてください。

ただし、待てない場合があります

危険が差し迫っているときは、ご本人の納得を待たずに動く判断も必要です。

火の不始末が続いている、転倒を繰り返している、脱水や栄養の状態が悪い——こうした場合は、まず安全を確保することが優先です。その判断に迷うときこそ、地域包括支援センターや主治医に相談してください。 ご家族だけで抱えないでください。

親御さんが施設の話を拒まれるときの進め方は、別記事「親が施設入居を拒むとき」で詳しくお伝えしています。

住まいを変える選択肢

在宅で使える支援を組んでも安全が保てない、ご家族が支えきれない、医療の必要性が高まっている——そうした状態になったら、住まいを変える検討に入る時期です。

ただし、選択肢は施設だけではありません。 段階があります。

選択肢向いている場面注意点
今の家に支援を足す支援でカバーできる範囲夜間や急変への備えが課題
同居する家族に受け入れる余力があるご家族の負担が集中しやすい
近くに引っ越してもらう通える距離にしたい環境が変わる負担、地域の支援が切れる
サービス付き高齢者向け住宅見守りがあれば暮らせる介護は外から。重くなると住み替えも
老人ホーム介護や医療の体制が必要費用、環境の変化

「情報を集めること」と「入居を決めること」は別です。 まず選択肢を並べて、それぞれいくらかかるのか、どういう暮らしになるのかを見てみてください。決めるのはその後で構いません。

在宅を続けるか施設にするかの判断軸は、別記事「在宅を続けるか、施設にするか|判断するときの 5 つの見方」で整理しています。

よくあるご質問

Q. 一人暮らしの限界はどこで判断すればよいですか。

A. 共通の線引きはありません。 年齢や要介護度で決まるものでもありません。見ていただきたいのは、住まい・食事・薬・お金・体・人との関わりの6つです。複数で変化が出ているときは、支援を入れる時期にきています。ただし、そこから一足飛びに施設という話ではありません。まずは在宅で使える支援を組むところから考えてください。

Q. すぐに動いたほうがよいのはどんなときですか。

A. 火の消し忘れが続いている、転んで自分で起き上がれないことがあった、脱水が疑われる、薬が大量に余っているか重複している、詐欺の被害が疑われる。 これらは様子を見ずに対応してください。体調に関わることは主治医や救急へ、お金に関わることは消費生活センター(188)や警察へつなぎます。命に関わる状況では救急(119)が最優先です。

Q. まずどこに相談すればよいですか。

A. お住まいの地域を担当する地域包括支援センターです。介護保険を使っていない段階でも相談できます。 高齢の方の暮らしに関する総合的な相談窓口で、介護保険の申請の案内、自治体の見守りや配食などの紹介を行っています。ただし相談先の整理と案内が役割で、施設を探して回る立場ではありません。離れて暮らしている場合は、親御さんがお住まいの市区町村の窓口に問い合わせてください。

Q. 本人が支援を嫌がります。

A. よくあることです。「介護」という言葉を使わずに始める方法があります。掃除ではなく話し相手、デイサービスではなく体操教室、といった入り口です。また、ご家族が言うより第三者が言うほうが受け入れられることがあります。地域包括支援センターの職員やかかりつけ医から話してもらう方法を試してみてください。ただし危険が差し迫っているときは、納得を待たずに動く判断も必要です。

Q. そろそろ施設を考えるべきでしょうか。

A. 在宅で使える支援を組んでも安全が保てない、ご家族が支えきれない、医療の必要性が高まっているといった状態であれば、住まいを変える検討に入る時期です。ただし選択肢は施設だけではありません。 同居、近くへの転居、サービス付き高齢者向け住宅など段階があります。情報を集めることと入居を決めることは別ですので、まず選択肢を並べてみることをおすすめします。

まとめ

一人暮らしの親が心配になったときの進め方について、大切な点を振り返ります。

  1. 限界に共通の線引きはありません。年齢でも要介護度でも決まりません
  2. 心配の段階で相談して構いません。介護保険を使っていなくても相談できます
  3. 住まい・食事・薬・お金・体・人との関わりの6つを、前回と比べて見ます
  4. 見落とされやすいのは お金と薬です
  5. 火の不始末・転倒・脱水・薬の重複・詐欺被害は、様子を見ません
  6. 急な変化は、認知症の進行と決めつけず医療へ。せん妄や感染症のことがあります
  7. 最初の相談先は 地域包括支援センター。自治体独自の支援もあります
  8. ご本人が嫌がるときは 言い方を変える・第三者から話してもらう・お試しから
  9. 住まいを変える選択肢は施設だけではありません。段階があります

早く動くほど、選べる手は多く残ります。何から手をつければよいか迷われたときは、お気軽にご相談ください。まだ決めていない段階で構いません。

参考文献・公的資料

  1. 介護保険法(平成9年法律第123号)第115条の46 — 地域包括支援センターの設置および業務(e-Gov 法令検索、2026年8月閲覧)
  2. 厚生労働省「認知症施策」— 認知症初期集中支援チーム、認知症疾患医療センター等の相談体制(2026年8月閲覧)
  3. 消費者庁「消費者ホットライン 188」— 消費生活センター等の相談窓口(2026年8月閲覧)

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