生活保護を受けていても、老人ホームに入居できる場合があります。介護サービスの自己負担は介護扶助、家賃にあたる部分は住宅扶助、食費や光熱水費は生活扶助というように、費用ごとに支える扶助が分かれているためです。

中川 優美Yumi Nakagawa
生活保護を受けていても入居できる場合があります
ご相談の場面で、「生活保護を受けていると、施設は無理ですよね」と最初におっしゃる方がいます。ですが実際には、生活保護を受けながら施設で暮らしている方はいらっしゃいます。
なぜかというと、生活保護は「まとめていくら」というお金が渡される制度ではなく、費用の種類ごとに支える仕組みが分かれているからです。施設で暮らすときにかかる費用も、介護サービスの分・部屋代の分・食費や光熱水費の分というように分かれます。それぞれに対応する扶助があるため、条件が合えば施設での暮らしが成り立ちます。
とはいえ、どの施設でも入れるわけではありません。施設側に受け入れの実績や体制があるか、費用の内訳が扶助の範囲におさまるか、という二つの面から現実的な候補を絞っていくことになります。次の章から、その考え方を順に見ていきます。
施設の費用を支える扶助の役割
生活保護には 8 つの扶助があります。このうち、施設で暮らすことに直接かかわるのは主に次の 4 つです。
| 扶助の種類 | 何をまかなうか | 支給のされ方 |
|---|---|---|
| 介護扶助 | 介護サービスの費用 | 現物給付(費用は直接介護事業者へ支払われ、本人負担なし) |
| 医療扶助 | 医療にかかる費用 | 現物給付(費用は直接医療機関へ支払われ、本人負担なし) |
| 住宅扶助 | 家賃にあたる費用 | 定められた範囲内で実費を支給 |
| 生活扶助 | 食費などの個人的費用と、光熱水費などの世帯共通の費用 | 合算して支給 |
介護サービスの自己負担は介護扶助でまかなわれます
施設で介護サービスを受けると、通常は費用の一部を自己負担します。生活保護を受けている方の場合、この自己負担にあたる部分が介護扶助でまかなわれます。厚生労働省の説明では、介護扶助は現物給付で、費用は直接介護事業者へ支払われ、本人の負担はないとされています。
65 歳以上の方は介護保険の被保険者として保険給付を受け、残る自己負担分が介護扶助でまかなわれる形になります。40 歳から 64 歳の方は、医療保険への加入状況によって扱いが変わります。ご自身の場合どうなるかは、担当のケースワーカーにお尋ねください。
部屋代は住宅扶助、食費などは生活扶助
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で暮らす場合、家賃にあたる部分は住宅扶助の対象になります。住宅扶助は「定められた範囲内で実費を支給」される仕組みです。上限が決まっているため、家賃がその範囲におさまるかどうかが、その施設を選べるかどうかの分かれ目になります。
上限の額は地域や世帯の人数によって異なり、見直しもあります。この記事ではあえて具体的な金額を書いていません。お住まいの地域の上限は、担当のケースワーカーか福祉事務所でご確認ください。
食費や光熱水費にあたる部分は、生活扶助の考え方でまかなわれます。ただし、施設で暮らす場合の生活扶助の扱いは在宅のときと異なります。ここもケースワーカーとの確認が必要な部分です。
候補になりやすい施設・確認が必要な施設
費用の仕組みから考えると、現実的な候補になりやすい施設と、確認が必要な施設が分かれます。
候補になりやすいのは介護保険施設
特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院は、候補になりやすい施設です。理由は、食費・居住費を軽くする負担限度額認定(補足給付)が使えるためです。
この制度には所得に応じた段階があり、生活保護を受けている方は最も軽減の大きい第 1 段階にあたります。第 1 段階の場合、1 日あたりの負担限度額は食費が 300 円、居住費は多床室(相部屋)で 0 円、従来型個室で 380 円、ユニット型個室で 880 円です。なお、2026 年 8 月 1 日の改定でも第 1 段階の額は据え置かれます。
介護サービスの自己負担が介護扶助でまかなわれ、食費・居住費もこの水準まで軽くなるため、費用の面では成り立たせやすい組み合わせになります。負担限度額認定の仕組みは「高額介護サービス費と負担限度額認定」で詳しく解説しています。
ただし特養は、入居が原則として要介護 3 以上で、地域によっては申し込みから入居まで待つことがあります。この点は生活保護を受けているかどうかにかかわらず同じです。特養の特徴は「特別養護老人ホーム(特養)と介護付き有料老人ホームの違い」もあわせてご覧ください。
有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅は施設ごとの確認が必要
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅にも、生活保護を受けている方の受け入れ実績がある施設はあります。特養を待つ間の住まいとして相談を受けることもあります。
一方で、次の 2 点を必ず確認する必要があります。
- 1負担限度額認定は使えません食費・居住費を軽くする負担限度額認定が使えるのは、特養・老健・介護医療院と、ショートステイに限られます。有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームは対象外です。そのため、費用は施設ごとに決まった額をそのまま見ることになります。
- 2家賃にあたる部分が住宅扶助の範囲におさまるか家賃相当の額が住宅扶助の上限を超えていると、その施設を選ぶのは難しくなります。見学のときに、家賃にあたる部分・食費・管理費・その他の実費がそれぞれいくらかを、内訳で確認しておくと判断しやすくなります。
- 3受け入れの可否は施設ごとの判断です費用の条件が合っても、施設側の受け入れ枠や体制の都合で難しいことがあります。「制度上は可能かどうか」と「その施設が受け入れられるかどうか」は別の話だとお考えください。受け入れ実績のある施設を知っている相談窓口に尋ねるのが、遠回りにならない進め方です。
相談から入居までの進め方
進め方には順番があります。とくに大切なのは、施設を探し始める前に、担当のケースワーカーに相談しておくことです。扶助の扱いは状況によって変わるため、先に確認しておくと、あとで条件が合わずやり直しになることを避けられます。
- 11. 担当のケースワーカーに相談します施設で暮らす方向を考えていることを伝え、扶助の扱いと必要な手続きを確認します。生活保護の相談・申請窓口は、お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。福祉事務所は、市(区)部では市(区)が、町村部では都道府県が設置しています。
- 22. ケアマネジャー・地域包括支援センターに相談します介護保険の側の準備を進めます。まだ要介護認定を受けていない場合は、市区町村の窓口で申請するところから始まります。相談先に迷うときは、高齢者の総合相談窓口である地域包括支援センターにご連絡ください。相談は無料です。進め方は「[ケアマネ・地域包括への最初の相談](/columns/keamane-houkatsu-saisho-soudan)」で整理しています。
- 33. 受け入れ可能な施設を探します受け入れ実績のある施設を中心に候補を集めます。特養は複数の施設に同時に申し込めますので、候補が見つかったら申し込みを済ませておくと、その後の選択肢が広がります。
- 44. 見学して費用の内訳を確認します見学の際に、家賃にあたる部分・食費・管理費・おむつ代などの実費を、それぞれいくらか確認します。見学で見るべき点は「[老人ホームの見学で必ず見る 12 のチェック](/columns/roujin-home-kengaku-12-points)」にまとめています。
- 55. ケースワーカーと最終確認をして手続きに進みます候補が決まったら、費用の内訳をケースワーカーに確認してもらったうえで、契約と入居の手続きに進みます。契約前に見る書類については「[重要事項説明書の読み方](/columns/juuyou-jikou-setsumeisho-yomikata)」もお役立てください。
知っておきたいこと
高額介護サービス費の上限も設けられています
介護サービスの自己負担には、所得に応じた月額の上限を設ける「高額介護サービス費」という制度もあります。生活保護を受けている方などの区分では、上限は月 15,000 円(個人)です。生活保護を受けている方の場合、自己負担にあたる部分は介護扶助でまかなわれますが、費用の仕組みとして知っておくと、説明を受けたときに理解しやすくなります。
保護の要否は福祉事務所が判断します
施設で暮らし始めると、費用の構成が変わります。収入や資産の状況によっては、保護の内容が変わることもあります。どうなるかを見通せるのは福祉事務所だけです。心配な点は、早い段階で担当のケースワーカーに率直に伝えておくことをおすすめします。
選択肢は限られますが、無いわけではありません
正直に申し上げると、選べる施設の数は多くありません。地域によっては、受け入れ実績のある施設が限られることもあります。それでも、条件に合う施設が見つかることはあります。ご家族だけで探し続けて行き詰まってしまう前に、実績のある施設を知っている窓口に相談してみてください。
なお、費用が払えなくなってきた段階でまだ生活保護を受けていない場合は、先に使える制度がいくつかあります。「老人ホームの費用が払えなくなったら」で、順を追って整理しています。
よくあるご質問
Q. 生活保護を受けていても、老人ホームに入居できますか。
A. 入居できる場合があります。生活保護には介護扶助・住宅扶助・生活扶助などの種類があり、施設で暮らすためにかかる費用のうち、どこをどの扶助がまかなうかによって、選べる施設が変わってきます。ただし、受け入れの可否は施設ごとの判断になりますし、保護の内容はお一人おひとりの状況によって異なります。まずは担当のケースワーカーにご相談ください。
Q. 介護サービスの自己負担はどうなりますか。
A. 介護扶助でまかなわれます。厚生労働省の説明では、介護扶助は現物給付で、費用は直接介護事業者へ支払われ、本人負担はないとされています。65 歳以上の方は介護保険の被保険者として保険給付を受け、残る自己負担分が介護扶助でまかなわれる形になります。40 歳から 64 歳の方は加入状況によって扱いが変わりますので、担当のケースワーカーにご確認ください。
Q. どの種類の施設なら入りやすいですか。
A. 費用の仕組みから見ると、特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院が候補になりやすい施設です。これらは食費・居住費を軽くする負担限度額認定の対象で、生活保護を受けている方は第 1 段階にあたります。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅でも、受け入れの実績がある施設はあります。ただし家賃にあたる部分が住宅扶助の範囲におさまるかどうかが目安になります。
Q. 手続きはどこから始めればよいですか。
A. まず担当のケースワーカーにご相談ください。生活保護の相談・申請窓口は、お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。施設で暮らす方向に進む場合は、扶助の扱いや必要な手続きをケースワーカーと確認しながら進めることになります。あわせて、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにも相談しておくと、介護保険の側の準備が進めやすくなります。
Q. 預貯金や年金があると入居できませんか。
A. 生活保護そのものの要否は福祉事務所が判断します。収入や資産の状況によっては保護の内容が変わることもありますので、施設で暮らす方向を考え始めた段階で、早めに担当のケースワーカーに伝えておくと安心です。判断を待つ間も、施設の情報を集めておくことはできます。
まとめ
生活保護を受けていても、老人ホームに入居できる場合があります。要点は次のとおりです。
- 施設の費用は、介護サービスの分・家賃にあたる分・食費などの分に分かれ、それぞれ介護扶助・住宅扶助・生活扶助が支えます
- 候補になりやすいのは特養・老健・介護医療院です。負担限度額認定の第 1 段階にあたり、食費は 1 日 300 円、多床室の居住費は 0 円まで軽くなります
- 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅は、家賃にあたる部分が住宅扶助の範囲におさまるかと、施設の受け入れ体制の 2 点を確認します
- 進め方は、担当のケースワーカーへの相談から始めます。順番を逆にすると、やり直しになることがあります
選べる施設の数は多くありませんが、条件に合う施設が見つかることはあります。行き詰まってしまう前に、お気軽にご相談ください。ふれあい入居サポートセンターでは、社会福祉士などの専門の相談員が無料でご相談を承っています。
参考文献・公的資料
- 厚生労働省「生活保護制度」(8 種類の扶助の内容と支給方法、相談・申請窓口=福祉事務所の生活保護担当。2026 年 7 月閲覧)
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1280「令和 6 年 8 月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し」(負担限度額の所得段階と第 1 段階の額。2026 年 7 月閲覧)
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1481(令和 8 年厚生労働省告示第 88 号、令和 8 年 8 月 1 日施行。第 1 段階の負担限度額は据え置き。2026 年 7 月閲覧)
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1252(高額介護サービス費の所得区分別上限額。2026 年 7 月閲覧)
