生活保護を受けていても、老人ホームに入居できる場合があります。介護サービス費には介護扶助が適用され、居住費・食費などの扱いは、施設の種類によって変わります。

中川 優美Yumi Nakagawa
生活保護を受けていても入居できる場合があります
ご相談の場面で、「生活保護を受けていると、施設は無理ですよね」と最初におっしゃる方がいます。ですが実際には、生活保護を受けながら施設で暮らしている方はいらっしゃいます。
なぜかというと、生活保護は「まとめていくら」というお金が渡される制度ではなく、費用の種類ごとに支える仕組みが分かれているからです。施設で暮らすときにかかる費用も、介護サービスの分・部屋代の分・食費や光熱水費の分というように分かれます。それぞれに対応する扶助があるため、条件が合えば施設での暮らしが成り立ちます。
ただし、居住費・食費・日用品費などの扱いは、特養などの介護保険施設と、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅などとで異なります。どの費用がどの扶助の対象になり、どの金額まで認められるかは、施設の種類やご本人の収入などをふまえて福祉事務所が個別に決めます。「この施設ならいくら出る」と一律に決まっているわけではない、という点をまず押さえておいてください。
とはいえ、どの施設でも入れるわけではありません。施設側に受け入れの実績や体制があるか、費用の内訳が扶助の範囲におさまるか、という二つの面から現実的な候補を絞っていくことになります。次の章から、その考え方を順に見ていきます。
施設の費用を支える扶助の役割
生活保護には 8 つの扶助があります。このうち、施設で暮らすことに直接かかわるのは主に次の 4 つです。
| 扶助の種類 | 何をまかなうか | 支給のされ方 |
|---|---|---|
| 介護扶助 | 介護サービスの費用 | 現物給付(費用は直接介護事業者へ支払われ、本人負担なし) |
| 医療扶助 | 医療にかかる費用 | 現物給付(費用は直接医療機関へ支払われ、本人負担なし) |
| 住宅扶助 | 家賃にあたる費用 | 定められた範囲内で実費を支給 |
| 生活扶助 | 食費などの個人的費用と、光熱水費などの世帯共通の費用 | 合算して支給 |
介護サービスの自己負担は介護扶助でまかなわれます
施設で介護サービスを受けると、通常は費用の一部を自己負担します。生活保護を受けている方の場合、この自己負担にあたる部分が介護扶助でまかなわれます。厚生労働省の説明では、介護扶助は現物給付で、費用は直接介護事業者へ支払われるとされています。介護扶助の対象として認められた介護サービスについては、原則としてご本人の自己負担はありません。ただし、介護保険外のサービスや日常生活費などは別に確認が必要です。
もうひとつ知っておきたいのが、介護扶助は原則として、生活保護法による指定を受けた介護機関で利用するという点です。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅そのものが生活保護を受けている方を受け入れていても、そこで使う外部の訪問介護事業所や通所介護事業所が介護扶助に対応できるかは別の話になります。この点は、施設を決める前に確かめておいてください。
65 歳以上の方は介護保険の被保険者として保険給付を受け、残る自己負担分が介護扶助でまかなわれる形になります。40 歳から 64 歳の方は、介護保険の特定疾病に該当するか、医療保険への加入状況、障害福祉の制度を使える可能性なども含めて、個別に判断されます。ご自身の場合どうなるかは、担当のケースワーカーにお尋ねください。
有料老人ホームなどでは、家賃相当額や生活費の確認が必要です
ここからは、特養などの介護保険施設ではなく、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の場合 のお話です(介護保険施設の食費・居住費は、次の章の負担限度額認定の考え方になります)。
有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、契約上の家賃相当額が住宅扶助の対象として認められる場合があります。住宅扶助は「定められた範囲内で実費を支給」される仕組みで、上限が決まっているため、家賃相当額がその範囲におさまるかどうかが分かれ目になります。
ただし、管理費・共益費・生活支援費などは住宅扶助の対象にならないことがあります。どの費目がどう扱われるかは、福祉事務所による確認が必要です。上限の額も地域や世帯の人数によって異なり、見直しもあります。この記事ではあえて具体的な金額を書いていません。お住まいの地域の上限と費用区分の扱いは、担当のケースワーカーか福祉事務所でご確認ください。
食費・日用品費・光熱水費などの日常生活費は、ご本人の収入と生活扶助などの範囲で支払うことになります。施設が設定する費用のすべてが別途支給されるわけではありませんので、月額費用の内訳を福祉事務所へ事前に確認しておいてください。
候補になりやすい施設・確認が必要な施設
費用の仕組みから考えると、現実的な候補になりやすい施設と、確認が必要な施設が分かれます。
費用軽減の対象になる介護保険施設
費用軽減の対象になる介護保険施設には、特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院 があります。食費・居住費を軽くする負担限度額認定(補足給付)が使えるためです。
ただし、この 3 つは役割が異なります。特養は長期の生活の場、老健は在宅復帰をめざす場、介護医療院は長期の療養の場 です。費用の面だけで選ぶのではなく、ご本人の状態と入所の目的に合う施設を選ぶ必要があります。
負担限度額認定には所得に応じた段階があり、生活保護を受けている方は最も軽減の大きい第 1 段階にあたります。ただし、第 1 段階にあたるからといって自動的に適用されるわけではなく、原則として市区町村への申請と認定証の交付が必要 です。施設に入る前に、ケースワーカーか市区町村の介護保険窓口で確認しておいてください。
第 1 段階の食費・居住費の負担限度額は、2026 年 8 月 1 日の改定でも据え置かれています。具体的な額は、施設の種類・居室の種類・利用の形態によって異なります(たとえば従来型個室でも、特養と老健・介護医療院とでは額が違います)。ご自身に当てはまる額は、市区町村または施設にご確認ください。段階ごとの一覧は「高額介護サービス費と負担限度額認定」で整理しています。
介護サービスの自己負担が介護扶助でまかなわれ、食費・居住費も軽くなるため、費用の面では成り立たせやすい組み合わせになります。
ただし特養は、入居が原則として要介護 3 以上で、地域によっては申し込みから入居まで待つことがあります。この点は生活保護を受けているかどうかにかかわらず同じです。特養の特徴は「特別養護老人ホーム(特養)と介護付き有料老人ホームの違い」もあわせてご覧ください。
有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅は施設ごとの確認が必要
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅にも、生活保護を受けている方の受け入れ実績がある施設はあります。特養を待つ間の住まいとして相談を受けることもあります。
一方で、次の 2 点を必ず確認する必要があります。
- 1負担限度額認定は使えません食費・居住費を軽くする負担限度額認定は、介護保険施設への入所と、対象となる短期入所生活介護・短期入所療養介護などで使えるものです。有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・グループホームは対象外で、これらの施設が独自に提供する短期利用も対象になりません。そのため、費用は施設ごとに決まった額をそのまま見ることになります。
- 2家賃にあたる部分が住宅扶助の範囲におさまるか家賃相当の額が住宅扶助の上限を超えていると、その施設を選ぶのは難しくなります。見学のときに、家賃にあたる部分・食費・管理費・その他の実費がそれぞれいくらかを、内訳で確認しておくと判断しやすくなります。
- 3受け入れの可否は施設ごとの判断です費用の条件が合っても、施設側の受け入れ枠や体制の都合で難しいことがあります。「制度上は可能かどうか」と「その施設が受け入れられるかどうか」は別の話だとお考えください。受け入れ実績のある施設を知っている相談窓口に尋ねるのが、遠回りにならない進め方です。
施設に確認しておきたいのは、次の 4 点です。
- 生活保護を受けている方の受け入れ実績があるか
- そこで利用する介護事業所が介護扶助に対応できるか
- 介護保険外の費用がいくらあるか
- 費用が住宅扶助などの上限を超えた場合の取り扱い
認知症がある場合は、グループホームも候補になります
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は負担限度額認定の対象外ですが、生活保護を受けている方を受け入れている事業所もあります。認知症がある方にとっては、現実的な候補のひとつです。
ただし、次のような条件があります。
- 原則として認知症の診断があること
- 要支援 2 または要介護 1 以上であること
- 原則として、施設がある市区町村にお住まいであること
- 家賃・食費・光熱水費などの費用を個別に確認する必要があること
経済面・生活環境が理由なら、養護老人ホームという道もあります
介護の必要度だけでなく、経済的な事情や生活環境の面で自宅での生活が難しい場合は、養護老人ホーム の対象になるかを、福祉事務所や市区町村の高齢福祉の担当課に相談する方法もあります。
養護老人ホームは、環境上・経済上の理由で自宅での生活が難しい高齢者を、市区町村の措置によって入所させる施設 です。ご本人が直接施設と入居契約を結ぶ形ではなく、市区町村の判断が必要になります。介護を主な目的とする施設ではありませんが、選択肢として知っておくと視野が広がります。
相談から入居までの進め方
進め方には順番があります。原則として、早い段階で担当のケースワーカーに相談し、施設探しと費用の確認を並行して進めるのが現実的です。とくに大切なのは、契約・入居を決める前に、候補施設の費用の内訳について福祉事務所の確認を受けることです。扶助の扱いは状況によって変わるため、ここを飛ばすと、あとで条件が合わずやり直しになることがあります。
- 11. 担当のケースワーカーに相談します施設で暮らす方向を考えていることを伝え、扶助の扱いと必要な手続きを確認します。生活保護の相談・申請窓口は、お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。福祉事務所は、市(区)部では市(区)が、町村部では都道府県が設置しています。
- 22. ケアマネジャー・地域包括支援センターに相談します介護保険の側の準備を進めます。まだ要介護認定を受けていない場合は、市区町村の窓口で申請するところから始まります。相談先に迷うときは、高齢者の総合相談窓口である地域包括支援センターにご連絡ください。相談は無料です。進め方は「[ケアマネ・地域包括への最初の相談](/columns/keamane-houkatsu-saisho-soudan)」で整理しています。
- 33. 受け入れ可能な施設を探します受け入れ実績のある施設を中心に候補を集めます。特養は複数の施設に申し込める場合があります。申し込みの方法や優先して入所できる基準は自治体・施設によって異なりますので、各施設に確認してください。
- 44. 見学して費用の内訳を確認します見学の際に、家賃にあたる部分・食費・管理費・おむつ代などの実費を、それぞれいくらか確認します。あわせて、月額の費用だけでなく、敷金・保証料・転居にかかる費用・家具や寝具の費用・退去のときの費用といった一時的な費用 も、契約前にケースワーカーへ確認してください。見学で見るべき点は「[老人ホームの見学で必ず見る 12 のチェック](/columns/roujin-home-kengaku-12-points)」にまとめています。
- 55. ケースワーカーと最終確認をして手続きに進みます候補が決まったら、費用の内訳をケースワーカーに確認してもらったうえで、契約と入居の手続きに進みます。契約前に見る書類については「[重要事項説明書の読み方](/columns/juuyou-jikou-setsumeisho-yomikata)」もお役立てください。
知っておきたいこと
高額介護サービス費の上限も設けられています
介護サービスの自己負担には、所得に応じた月額の上限を設ける「高額介護サービス費」という制度もあります。ただし、生活保護を受けている間の介護サービスの自己負担は、介護扶助との調整が行われます。食費・居住費や日常生活費はこれとは別の扱いになりますので、ご自身の場合どうなるかは個別に確認してください。
身元保証人を求められたときは
生活保護を理由に断られるだけでなく、身元保証人・連帯保証人・緊急連絡先・亡くなったあとの手続き を求められて、入居の話が進まないことがあります。ご家族がいないという理由だけで、一律にあきらめる必要はありません。施設ごとに契約の条件が違うためです。
次の点を、ケースワーカーや施設と事前に整理しておくと動きやすくなります。
- 保証人を立てられない場合の代わりの方法
- 成年後見制度を使う必要があるかどうか
- 身元保証サービスを使う場合の費用と契約の内容
- 亡くなったときの対応と、残された荷物の取り扱い
なお、民間の身元保証サービスは費用や契約の内容に差が大きいため、安易に契約せず、消費生活センターや専門職にも確認することをおすすめします。成年後見制度については「成年後見制度と老人ホームの入居・契約」で整理しています。
保護の内容は福祉事務所が決定します
施設で暮らし始めると、費用の構成が変わります。収入や資産の状況によっては、保護の内容が変わることもあります。制度上の最終的な決定を行うのは福祉事務所です。ケアマネジャーや施設の相談員と費用を整理したうえで、正式な取り扱いを担当のケースワーカーに確認してください。心配な点は、早い段階で率直に伝えておくことをおすすめします。
選択肢は限られますが、無いわけではありません
正直に申し上げると、選べる施設の数は多くありません。地域によっては、受け入れ実績のある施設が限られることもあります。それでも、条件に合う施設が見つかることはあります。ご家族だけで探し続けて行き詰まってしまう前に、実績のある施設を知っている窓口に相談してみてください。
なお、費用が払えなくなってきた段階でまだ生活保護を受けていない場合は、先に使える制度がいくつかあります。「老人ホームの費用が払えなくなったら」で、順を追って整理しています。
よくあるご質問
Q. 生活保護を受けていても、老人ホームに入居できますか。
A. 入居できる場合があります。生活保護には介護扶助・住宅扶助・生活扶助などの種類があり、施設で暮らすためにかかる費用のうち、どこをどの扶助がまかなうかによって、選べる施設が変わってきます。ただし、受け入れの可否は施設ごとの判断になりますし、保護の内容はお一人おひとりの状況によって異なります。まずは担当のケースワーカーにご相談ください。
Q. 介護サービスの自己負担はどうなりますか。
A. 介護扶助でまかなわれます。厚生労働省の説明では、介護扶助は現物給付で、費用は直接介護事業者へ支払われ、本人負担はないとされています。65 歳以上の方は介護保険の被保険者として保険給付を受け、残る自己負担分が介護扶助でまかなわれる形になります。40 歳から 64 歳の方は加入状況によって扱いが変わりますので、担当のケースワーカーにご確認ください。
Q. どの種類の施設なら入りやすいですか。
A. 費用軽減の対象になる介護保険施設には、特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院があります。これらは食費・居住費を軽くする負担限度額認定の対象で、生活保護を受けている方は第 1 段階にあたります(適用には原則として市区町村への申請が必要です)。ただし、特養は長期の生活の場、老健は在宅復帰をめざす場、介護医療院は長期の療養の場と役割が異なりますので、ご本人の状態と目的に合う施設を選ぶ必要があります。認知症がある場合はグループホームも候補になります。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅でも、受け入れの実績がある施設はあります。ただし家賃相当額が住宅扶助の範囲におさまるかどうかが目安になります。
Q. 手続きはどこから始めればよいですか。
A. まず担当のケースワーカーにご相談ください。生活保護の相談・申請窓口は、お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護担当です。施設で暮らす方向に進む場合は、扶助の扱いや必要な手続きをケースワーカーと確認しながら進めることになります。あわせて、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターにも相談しておくと、介護保険の側の準備が進めやすくなります。
Q. 預貯金や年金があると入居できませんか。
A. 生活保護そのものの要否は福祉事務所が判断します。収入や資産の状況によっては保護の内容が変わることもありますので、施設で暮らす方向を考え始めた段階で、早めに担当のケースワーカーに伝えておくと安心です。判断を待つ間も、施設の情報を集めておくことはできます。
まとめ
生活保護を受けていても、老人ホームに入居できる場合があります。要点は次のとおりです。
- 介護サービス費には介護扶助が適用されます。居住費・食費などの扱いは、介護保険施設か有料老人ホーム等かで異なり、どこまで認められるかは福祉事務所が個別に決定します
- 費用軽減の対象になる介護保険施設は特養・老健・介護医療院です。負担限度額認定の第 1 段階にあたりますが、適用には原則として市区町村への申請が必要で、額は施設・居室の種類によって異なります
- 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅は、家賃相当額が住宅扶助の範囲におさまるか、管理費などの費目がどう扱われるか、施設の受け入れ体制の 3 点を確認します
- 早い段階でケースワーカーに相談し、施設探しと費用確認を並行して進めます。契約・入居を決める前に、費用の内訳について福祉事務所の確認を受けてください
選べる施設の数は多くありませんが、条件に合う施設が見つかることはあります。行き詰まってしまう前に、お気軽にご相談ください。ふれあい入居サポートセンターでは、社会福祉士などの専門の相談員が無料でご相談を承っています。
参考文献・公的資料
- 厚生労働省「生活保護制度」(8 種類の扶助の内容と支給方法、相談・申請窓口=福祉事務所の生活保護担当。2026 年 7 月閲覧)
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1280「令和 6 年 8 月からの特定入所者介護(予防)サービス費の見直し」(負担限度額の所得段階と第 1 段階の額。2026 年 7 月閲覧)
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1481・Vol.1506(令和 8 年厚生労働省告示第 88 号ほか、令和 8 年 8 月 1 日施行。第 1 段階の負担限度額は据え置き。2026 年 8 月閲覧)
- 老人福祉法 第11条(養護老人ホームへの入所措置)、生活保護法 第54条の2(介護機関の指定)
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1252(高額介護サービス費の所得区分別上限額。2026 年 7 月閲覧)
