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コラム制度とお金ご家族向け

老人ホームの費用が払えなくなったら
— 制度と住み替えで見直す方法を社会福祉士が解説 —

入居したときは払えていた費用が、要介護度が上がったり、貯えが減ったりして、だんだん厳しくなってきた――。介護が長くなるほど、こうした費用のご心配を抱えるご家族は少なくありません。 本記事では、費用が払えなくなりそうなときに まずやること使える公的な制度、そして 費用を抑えた施設への住み替え という選択肢を、社会福祉士が順に整理しました。
掲載日:2026.07.06|監修:社会福祉士・入居相談員
この記事の答え

費用が払えなくなっても、すぐに退去とは限りません。まず早めに相談し、使える制度を確かめ、必要なら費用の低い施設へ住み替える、という順で見直します。

支払いが厳しくなったら、放置せず、施設の相談員やケアマネジャー、市区町村の窓口に早めに相談することがいちばん大切です。住民税非課税の世帯なら、特養などの食費・居住費を軽くする負担限度額認定や、介護サービス費の上限を定める高額介護サービス費、社会福祉法人による軽減などが使えることがあります。それでも足りない場合は、費用を抑えやすい施設への住み替えや、生活保護の利用も選択肢になります。制度の金額は 2026 年時点のもので、地域や状況により扱いが異なります。まずは無料の相談窓口や自治体でご確認ください。
中川 優美(社会福祉士・入居相談員)
この記事の監修者

中川 優美Yumi Nakagawa

社会福祉士。ふれあい入居サポートセンター葛飾相談室にて、入居相談を担当。費用の見直しや、負担を軽くする制度、費用を抑えた施設への住み替えのご相談も多く、ご家族の状況に合わせてサポートしている。
社会福祉士(国家資格)ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室高齢者向け住まい紹介事業者届出 25-0881
編集ポリシー:本記事の制度・金額は、厚生労働省の公開情報(介護保険最新情報 Vol.1252・Vol.1280 ほか、2026 年 6 月に確認)に基づいています。金額は改定の時点や地域、世帯の状況によって異なります。ご自身の区分や利用できる制度は、市区町村の介護保険担当課・福祉事務所でご確認ください。本記事内の事例はイメージで、特定の個人を表すものではありません。

払えなくても、すぐ退去とは限らない

費用の支払いが厳しくなると、「すぐに追い出されてしまうのでは」と不安になるご家族は多いものです。ですが、1 回滞納しただけで、すぐに退去になることは多くありません。多くの契約では、一定の期間、滞納が続いた場合に退去を求められる定めになっています。

つまり、費用が厳しくなったときに大切なのは、あわてて結論を出すことではなく、早めに相談して、次の 3 つの方向で見直すことです。

見直しの方向内容
まず相談する施設の相談員・ケアマネジャー・市区町村の窓口に、早めに事情を伝える
使える制度を確かめる負担限度額認定・高額介護サービス費・社会福祉法人の軽減など
施設を見直す使える制度でも足りなければ、費用を抑えやすい施設へ住み替える

順番に見ていきましょう。焦らずに、ひとつずつ確かめていけば、住まいを続ける道が見えてくることは少なくありません。

なぜ費用が足りなくなるのか

入居したときは払えていた費用が、途中で厳しくなるのには、いくつかの理由があります。

  • 要介護度が上がって、介護サービスの自己負担や、追加のサービス費が増えた
  • 医療費やおむつ代など、月額の利用料以外の出費が増えた
  • 預貯金を取り崩して払ってきたが、貯えが減ってきた
  • 年金だけでは月々の費用に届かず、少しずつ持ち出しが続いている

こうした変化は、介護が長くなれば誰にでも起こりうることです。ご家族の備えが足りなかったということではありません。だからこそ、公的な制度や住み替えという仕組みが用意されています。

まずやること

支払いが厳しくなりそうだと感じたら、いちばん大切なのは、放置せずに早めに相談することです。

滞納を放置しない

「言い出しにくい」と支払いを止めたまま放置すると、施設との関係がこじれ、退去につながりやすくなります。反対に、払えないと分かった時点で正直に伝えれば、支払い方法の相談や、使える制度の案内につながることがあります。

相談する相手

まずは、次のような相手に相談してみましょう。

  • 施設の生活相談員(施設の窓口になる担当者です)
  • 担当のケアマネジャー
  • 市区町村の介護保険担当課
  • 地域包括支援センター(高齢者の相談を無料で受ける公的な窓口です)

これらの相手は、費用の相談に慣れています。ひとりで抱え込まず、まずは事情を話すところから始めて大丈夫です。

使える公的な制度

費用の負担を軽くする公的な制度がいくつかあります。当てはまるものがないか、順に確かめてみましょう。制度の全体像は、別記事「高額介護サービス費と負担限度額認定」でも詳しく解説しています。

負担限度額認定(食費・居住費の軽減)

住民税が非課税の世帯で、預貯金などの資産が一定額以下の場合、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・ショートステイの食費と居住費が軽くなります。正式には「特定入所者介護サービス費(補足給付)」という制度です。ただし、介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅は対象外です。

高額介護サービス費(介護サービス費の上限)

ひと月の介護サービスの自己負担が、所得別の上限を超えた場合、超えた分が後から払い戻されます。上限は、一般的な住民税課税世帯で月 44,400 円、住民税非課税世帯で月 24,600 円などと定められています(2026 年時点。出典: 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1252)。課税世帯でも対象になる制度です。

社会福祉法人の軽減・その他の助成

社会福祉法人が運営する施設では、低所得の方の利用者負担を軽くする制度を設けている場合があります。このほか、医療と介護の自己負担を合算して年間の上限を超えた分が戻る「高額医療・高額介護合算療養費」や、自治体独自の助成が使えることもあります。医療費が多い年は、医療費控除の対象になる費用もあります。使えるものは重ねて利用できることが多いので、市区町村の窓口で確かめてみましょう。

費用の低い施設への住み替え

使える制度を組み合わせても費用が足りない場合は、より費用を抑えやすい施設への住み替えを考えます。

一般的に、費用を抑えやすいのは、特別養護老人ホーム(特養)です。公的な施設で、住民税非課税の世帯なら負担限度額認定で食費・居住費も軽くなります。ただし、原則として要介護 3 以上が対象で、入居を待つ期間がある点には留意が必要です。介護付き有料老人ホームから特養へ、あるいは個室から多床室(相部屋)へ、といった見直しで、月々の費用が下がることがあります。特養と介護付き有料老人ホームの違いは、別記事「特養と介護付き有料老人ホームの違い」で整理しています。

住み替えは、ご本人にとって環境が変わる負担もあります。費用だけでなく、介護や医療の体制が今と同じように受けられるかも含めて、ケアマネジャーや相談員とご一緒に考えることをおすすめします。退去や住み替えの進め方は、別記事「老人ホームから退去を求められたら」も参考になります。

なお、使える制度と住み替えを考えても暮らしが成り立たない場合は、生活保護の利用も選択肢のひとつです。生活保護を受けながら入居できる施設もあります。ためらわずに、福祉事務所や無料の相談窓口に相談してみてください。

よくあるご質問

Q. 費用を滞納すると、すぐに退去になりますか。

A. 1 回滞納しただけで、すぐに退去になることは多くありません。多くの契約では、一定期間の滞納が続いた場合に退去を求められる定めになっています。大切なのは、払えないと分かった時点で施設や相談員に早めに相談することです。事情を伝えれば、支払い方法の相談や、使える制度の案内につながることがあります。放置がいちばんよくありません。

Q. 収入が少ないと、どんな制度が使えますか。

A. 住民税が非課税の世帯であれば、特別養護老人ホームなどの食費・居住費を軽くする負担限度額認定の対象になることがあります。介護サービス費には所得別の月額上限を設ける高額介護サービス費があります。このほか、社会福祉法人による利用者負担の軽減や、自治体独自の助成が使える場合もあります。まずは市区町村の介護保険担当課やケアマネジャーに相談してみてください。

Q. 貯金が尽きても、施設で暮らし続けられますか。

A. 使える制度を組み合わせても費用が足りない場合は、より費用を抑えやすい施設への住み替えや、生活保護の利用が選択肢になります。生活保護を受けながら入居できる施設もあります。どの方法が合うかは状況によって異なりますので、ケアマネジャーや福祉事務所、無料の相談窓口とご一緒に整理していくことをおすすめします。

Q. 介護付き有料老人ホームでも、食費の軽減は受けられますか。

A. 食費・居住費を軽くする負担限度額認定は、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・ショートステイが対象で、介護付き有料老人ホームや住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅は対象外です。介護付き有料老人ホームでも、介護サービス費については高額介護サービス費の対象になります。費用を大きく抑えたい場合は、対象になる施設への住み替えも選択肢のひとつです。

まとめ

老人ホームの費用が払えなくなりそうなときは、あわてて結論を出す前に、次の順で見直してみてください。

  1. 放置せず、施設の相談員・ケアマネジャー・市区町村の窓口に早めに相談します
  2. 負担限度額認定・高額介護サービス費・社会福祉法人の軽減など、使える制度を確かめます
  3. それでも足りなければ、費用を抑えやすい施設への住み替えや、生活保護の利用を考えます

費用の心配は、ご家族だけで抱え込みやすいものです。ですが、相談できる窓口や使える制度は用意されています。どこから手をつければよいか迷われたときは、お気軽にご相談ください。ふれあい入居サポートセンターでは、社会福祉士などの専門の相談員が無料でご相談を承っています。

参考文献・公的資料

  1. 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1252(高額介護サービス費の上限額、2026 年 6 月確認)
  2. 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1280(負担限度額認定の所得段階・資産要件、2026 年 6 月確認)
  3. 厚生労働省「社会福祉法人等による利用者負担軽減制度」関連通知
  4. 金額・区分は改定の時点や地域、世帯の状況によって異なります。ご自身が使える制度は市区町村の介護保険担当課・福祉事務所にご確認ください。

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