年金だけで入れるかは、年金の額と施設の費用の兼ね合いで決まります。費用を抑えやすい施設を選び、負担限度額認定などの制度を組み合わせると、年金の範囲に収まることがあります。

中川 優美Yumi Nakagawa
年金だけで入れるかの考え方
「年金だけで入れるか」は、ひとことでは答えられません。年金の額は人によって違いますし、施設の費用も種類によって大きく変わるからです。大切なのは、「年金の額」と「施設の費用」を並べて、その差をどう埋めるかを考えることです。
費用を抑えやすい施設を選び、使える制度を組み合わせれば、年金の範囲に近づけられることがあります。逆に、費用の高い施設だけを見ていると、「どこも無理だ」と感じてしまいがちです。まずは、抑えやすい施設と制度を知ることから始めましょう。
まず把握すること
施設を探す前に、次の 3 つを確かめておくと、現実的な候補を絞りやすくなります。
- 年金などの毎月の収入(年金の額、そのほかの収入があれば合わせて)
- 使える資産(預貯金など。多くの制度で資産の額が条件になります)
- 住民税が課税か非課税か(費用を軽くする制度の多くが、非課税世帯を対象にしています)
これらは、費用を軽くする制度が使えるかどうかを左右します。分からない場合は、市区町村の窓口やケアマネジャーに聞けば確かめられます。まずは今の状況をつかむところからで大丈夫です。
費用を抑えやすい施設
特別養護老人ホーム(特養)
費用を抑えやすい代表が、特別養護老人ホーム(特養)です。公的な施設で、月額はおよそ 10〜14 万円程度が一つの目安とされています(2026 年時点、厚生労働省の資料や健康長寿ネットの例をもとにした概算)。住民税非課税の世帯なら、後で述べる負担限度額認定で食費・居住費がさらに軽くなります。多床室(相部屋)を選ぶと、費用はより抑えやすくなります。
ただし、原則として要介護 3 以上が対象で、入居を希望する方が多く、待つ期間がある点には留意が必要です。特養の詳しい入居条件は、別記事「特養と介護付き有料老人ホームの違い」で解説しています。
ケアハウス(軽費老人ホーム)
ケアハウス(軽費老人ホーム)は、比較的費用を抑えて暮らせる施設です。所得に応じた軽減のしくみがあり、月額はおおむね 7〜20 万円程度が目安とされています。介護型のケアハウスでは、施設内で介護を受けられるところもあります。数が多くはないため、地域にあるかどうかを含めて探すとよいでしょう。
料金を抑えた住宅型有料老人ホーム・サ高住
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)にも、料金を抑えた施設があります。ただし、これらは介護を外部のサービスで受けるため、介護が重くなると外部サービスの費用が別にかかります。月額の家賃だけでなく、介護が必要になったときの見込みも含めて比べることが大切です。サ高住と住宅型の違いは、別記事「サ高住と住宅型有料老人ホームの違い」で整理しています。
費用を下げる制度
施設の費用は、制度を使うことでさらに下げられることがあります。当てはまるものがないか確かめてみましょう。制度の詳しい内容は、別記事「高額介護サービス費と負担限度額認定」で解説しています。
- 負担限度額認定:住民税非課税の世帯で資産が一定額以下なら、特養・老健・介護医療院・ショートステイの食費・居住費が軽くなります
- 高額介護サービス費:ひと月の介護サービスの自己負担が、所得別の上限(一般的な課税世帯で月 44,400 円など)を超えた分が払い戻されます
- 社会福祉法人による軽減:社会福祉法人が運営する施設で、低所得の方の負担を軽くしている場合があります
これらは重ねて使えることが多いので、市区町村の窓口で、使えるものをまとめて確かめておくとよいでしょう。
足りないときの選択肢
費用を抑えやすい施設を選び、使える制度を組み合わせても、年金だけでは足りないこともあります。そのときは、次のような選択肢があります。
- 生活保護を利用する:年金などの収入があっても、暮らしに必要な額に満たない場合、その不足分を補う制度です。生活保護を受けながら入居できる施設もあります
- 家族で少しずつ補う:ご家族が負担できる範囲を、無理のないかたちで話し合っておく
- 地域の相談窓口に相談する:市区町村の窓口や地域包括支援センターで、地域独自の助成がないかを確かめる
生活保護は、条件に当てはまれば利用できる、暮らしを支えるための制度です。ためらわずに、福祉事務所や無料の相談窓口に相談してみてください。
よくあるご質問
Q. 年金だけで老人ホームに入れますか。
A. 年金の額と、施設の費用の兼ね合いによります。費用を抑えやすい施設を選び、使える制度を組み合わせれば、年金の範囲に収まることもあります。とくに特別養護老人ホーム(特養)は、住民税非課税の世帯なら食費・居住費が軽くなる制度があり、比較的費用を抑えやすい施設です。まずは、親御さんの年金額と、候補になる施設の費用を並べて確かめてみましょう。
Q. いちばん費用を抑えやすい施設はどこですか。
A. 一般的に、費用を抑えやすいのは特別養護老人ホーム(特養)です。公的な施設で、住民税非課税の世帯なら負担限度額認定で食費・居住費も軽くなります。ただし、原則として要介護 3 以上が対象で、入居を待つ期間がある点には留意が必要です。このほか、ケアハウス(軽費老人ホーム)や、料金を抑えた住宅型有料老人ホーム・サ高住も候補になります。
Q. 年金が少なくて、どの施設も難しそうです。
A. 使える制度を組み合わせても費用が足りない場合は、生活保護を利用しながら入居できる施設もあります。生活保護は、年金などの収入があっても、暮らしに必要な額に満たない場合に不足分を補う制度です。まずは市区町村の福祉事務所や、無料の相談窓口に、収入と希望を伝えて相談してみてください。ひとりで結論を出さず、一緒に整理していくことができます。
まとめ
年金だけで入れる施設を探すときは、次の順で考えてみてください。
- 年金額・資産・課税か非課税かを把握します
- 特養やケアハウスなど、費用を抑えやすい施設を候補にします
- 負担限度額認定や高額介護サービス費など、費用を下げる制度を組み合わせます
- それでも足りなければ、生活保護の利用も選択肢になります
費用の心配から、施設探しをためらってしまうご家族は少なくありません。ですが、抑えやすい施設と使える制度を知れば、道は見えてきます。どこから手をつければよいか迷われたときは、お気軽にご相談ください。ふれあい入居サポートセンターでは、社会福祉士などの専門の相談員が無料でご相談を承っています。
参考文献・公的資料
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1252(高額介護サービス費の上限額、2026 年 6 月確認)
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1280(負担限度額認定の所得段階・資産要件、2026 年 6 月確認)
- 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「施設サービス」「ケアハウス」(2026 年 7 月確認)
- 年金額・施設費用・使える制度は個人の状況や地域によって異なります。ご自身の場合の見通しは市区町村の窓口・福祉事務所にご確認ください。
