年金だけで入れるかは、年金の額と施設の費用の兼ね合いで決まります。費用を抑えやすい施設を選び、負担限度額認定などの制度を組み合わせると、年金の範囲に収まることがあります。

中川 優美Yumi Nakagawa
年金だけで入れるかの考え方
はじめに、本記事でいう「年金だけで入れる」の意味をはっきりさせておきます。これは、施設が表示している月額だけでなく、介護・医療・生活に必要な追加の費用まで含めて、毎月の支出を継続的な収入の範囲でまかなえること を指します。表示月額が年金の範囲に収まっていても、それだけでは足りるとは限りません。
「年金だけで入れるか」は、ひとことでは答えられません。年金の額は人によって違いますし、施設の費用も種類によって大きく変わるからです。大切なのは、年金などの手取り収入から、医療費・日用品費・予備費を差し引いて、施設へ継続的に支払える上限を考える ことです。年金の全額を施設の表示月額に充てる前提で考えると、あとで行き詰まりやすくなります。
費用を抑えやすい施設を選び、使える制度を組み合わせれば、年金の範囲に近づけられることがあります。逆に、費用の高い施設だけを見ていると、「どこも無理だ」と感じてしまいがちです。まずは、抑えやすい施設と制度を知ることから始めましょう。
まず把握すること
施設を探す前に、次の 3 つを確かめておくと、現実的な候補を絞りやすくなります。
- 年金などの毎月の収入(年金の額、そのほかの収入があれば合わせて)
- 使える資産(預貯金など。多くの制度で資産の額が条件になります)
- 住民税が課税か非課税か(費用を軽くする制度の多くが、非課税世帯を対象にしています)
毎月の収入だけでなく、1 年のあいだに発生する収入と支出(税・保険料・年に数回の医療費など)もあわせて整理すると、より現実的な見通しになります。
なお、ご本人の収入や資産を確かめるときは、ご本人の同意を得たうえで、年金振込通知書や通帳などを見せてもらってください。
確認先は、内容によって分かれます。課税の状況や制度の認定は市区町村、年金額は年金振込通知書や年金事務所、施設の料金は各施設 に確認します。ケアマネジャーには、情報の整理や申請の方法を相談できます。まずは今の状況をつかむところからで大丈夫です。
費用を抑えやすい施設
特別養護老人ホーム(特養)
費用を抑えやすい代表が、特別養護老人ホーム(特養)です。介護保険制度上の施設で、主に社会福祉法人などが運営しています。月額はおよそ 10〜14 万円程度が一つの目安とされていますが、これは 一定の要介護度・所得区分・居室のタイプを想定した参考例 です(2026 年時点、厚生労働省の資料や健康長寿ネットの例をもとにした概算)。要介護度・負担割合・居室のタイプ・所得区分が変われば金額も変わりますので、実際の額は施設に試算してもらってください。
住民税非課税の世帯なら、後で述べる負担限度額認定で食費・居住費がさらに軽くなります。多床室(相部屋)を選ぶと費用はより抑えやすくなりますが、費用だけでなく、ご本人が共同で過ごす暮らしになじめるか もあわせて考えてみてください。
なお、特養の入居は申し込み順だけで決まるわけではなく、ご本人の状態や介護をしている方の状況などをふまえた優先度 で検討されます。
ただし、原則として要介護 3 以上が対象で、入居を希望する方が多く、待つ期間がある点には留意が必要です。特養の詳しい入居条件は、別記事「特養と介護付き有料老人ホームの違い」で解説しています。
ケアハウス(軽費老人ホーム)
ケアハウス(軽費老人ホーム)は、比較的費用を抑えて暮らせる施設です。所得に応じて 事務費が軽減される しくみがあり、月額はおおむね 7〜20 万円程度が目安とされています。ただし、管理費や介護にかかる費用は別に確認が必要です。
介護型のケアハウスでは、施設内で介護を受けられるところもあります。一方 一般型 では、介護が重くなると外部のサービスを使うことになり、施設が対応できる範囲を超えると住み替えが必要になることもあります。費用の安さだけでなく、入居の条件と、これから先も住み続けられるか を確かめておいてください。数が多くはないため、地域にあるかどうかを含めて探すとよいでしょう。なお、ケアハウスは居室の面積の基準が単身と夫婦で別に定められており、ご夫婦での入居が制度上想定されている施設でもあります(別記事「夫婦で入れる老人ホーム」)。
料金を抑えた住宅型有料老人ホーム・サ高住
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)にも、料金を抑えた施設があります。本記事では、特定施設の指定を受けていない一般型のサ高住 を想定しています。これらは介護を外部のサービスで受けるため、介護が重くなると外部サービスの費用が別にかかります。
「年金内で入れます」と表示している施設でも、介護度が上がると総額が年金額を超える可能性があります。月額の家賃だけでなく、見学や契約の前に、介護度が上がった場合を含めた試算を書面で出してもらう ことをおすすめします。あわせて、入居時に必要になる総額(敷金・前払金・生活用品など)も確認してください。
入居後も、家賃・管理費・食費の改定、介護度の上昇、医療の必要性の高まり、保険外サービスの追加などで、総額が増えることがあります。いま年金の範囲に収まっているかだけでなく、月に数千円から数万円増えても続けられるか、予備費を見込んでおくと安心です。サ高住と住宅型の違いは、別記事「サ高住と住宅型有料老人ホームの違い」で整理しています。
費用を下げる制度
施設の費用は、制度を使うことでさらに下げられることがあります。当てはまるものがないか確かめてみましょう。制度の詳しい内容は、別記事「高額介護サービス費と負担限度額認定」で解説しています。
- 負担限度額認定:所得・課税の状況と資産の要件を満たし、市区町村へ申請して認定を受けた方について、特養・老健・介護医療院・ショートステイの食費・居住費が軽くなります
- 高額介護サービス費:ひと月の介護保険サービスの利用者負担に、所得区分別の月額上限が設けられています。上限は課税世帯でも一律ではなく、区分によって異なります。食費・家賃などは対象になりません
- 社会福祉法人による軽減:社会福祉法人が運営する対象サービスで、市区町村と法人の要件を満たす場合に、利用者負担が軽くなることがあります
複数の制度を使える場合がありますが、対象になる費用や、あわせて使うときの計算のしかたが制度ごとに異なります。使えるものと実際の金額は、市区町村の窓口でまとめて確かめてください。
足りないときの選択肢
費用を抑えやすい施設を選び、使える制度を組み合わせても、年金だけでは足りないこともあります。そのときは、次のような選択肢があります。
- 生活保護を利用する:年金などの収入があっても、暮らしに必要な額に満たない場合、その不足分を補う制度です。生活保護を受けながら入居できる施設もあります
- 家族で少しずつ補う:ご家族ご自身の生活を損なわない範囲で、これから先も続けられる援助の額 を話し合っておく
- 地域の相談窓口に相談する:市区町村の窓口や地域包括支援センターで、地域独自の助成がないかを確かめる(制度によって担当の窓口が異なります)
- 養護老人ホームを相談する:費用面で困っている、住まいを失った、虐待がある、家族による支援が難しいといった事情がある場合は、市区町村へ養護老人ホームの対象になるか相談できることがあります
生活保護について、いくつか知っておいていただきたいことがあります。
- 「生活保護を受ければ希望する施設に入れる」という制度ではありません。福祉事務所が収入・資産・生活の状況を確認し、いまの施設で生活できるのか、転居が必要かを含めて決定します
- 生活保護は原則として世帯を単位に行われます。ご本人だけが施設に入る場合でも、配偶者の収入・資産や、世帯を分けたあとの生活の状況などを確認することがあります。「本人の年金が少ない」という一点だけで、保護の可否が決まるわけではありません
- 預貯金・保険・不動産などの使える資産は、原則として生活のために活用することが求められます。ただし、住むための不動産や少額の資産などについては個別に判断されるため、「資産があれば絶対に申請できない」とも言い切れません。申請の前に自己判断で財産を処分せず、まず福祉事務所に相談してください
- ご家族から定期的に援助を受けている場合、その援助が生活保護のうえで収入として認定されることがあります。生活保護を考えている場合は、援助の額をご家族だけで決めず、福祉事務所に説明して相談するほうが安全です
生活保護は、条件に当てはまれば利用できる、暮らしを支えるための制度です。ためらわずに、福祉事務所や無料の相談窓口に相談してみてください。
よくあるご質問
Q. 年金だけで老人ホームに入れますか。
A. 年金の額と、施設の費用の兼ね合いによります。費用を抑えやすい施設を選び、使える制度を組み合わせれば、年金の範囲に収まることもあります。とくに特別養護老人ホーム(特養)は、住民税非課税の世帯なら食費・居住費が軽くなる制度があり、比較的費用を抑えやすい施設です。まずは、親御さんの年金額と、候補になる施設の費用を並べて確かめてみましょう。
Q. いちばん費用を抑えやすい施設はどこですか。
A. 一般的に、費用を抑えやすいのは特別養護老人ホーム(特養)です。公的な施設で、住民税非課税の世帯なら負担限度額認定で食費・居住費も軽くなります。ただし、原則として要介護 3 以上が対象で、入居を待つ期間がある点には留意が必要です。このほか、ケアハウス(軽費老人ホーム)や、料金を抑えた住宅型有料老人ホーム・サ高住も候補になります。
Q. 年金が少なくて、どの施設も難しそうです。
A. 使える制度を組み合わせても費用が足りない場合は、生活保護を利用しながら入居できる施設もあります。生活保護は、年金などの収入があっても、暮らしに必要な額に満たない場合に不足分を補う制度です。まずは市区町村の福祉事務所や、無料の相談窓口に、収入と希望を伝えて相談してみてください。ひとりで結論を出さず、一緒に整理していくことができます。
まとめ
年金だけで入れる施設を探すときは、次の順で考えてみてください。
- 年金額・資産・課税か非課税かを把握します
- 特養やケアハウスなど、費用を抑えやすい施設を候補にします
- 負担限度額認定や高額介護サービス費など、費用を下げる制度を組み合わせます
- それでも足りなければ、生活保護の利用も選択肢になります
費用の心配から、施設探しをためらってしまうご家族は少なくありません。ですが、抑えやすい施設と使える制度を知ることで、利用できる制度や住まいの選択肢を整理できることがあります。どこから手をつければよいか迷われたときは、お気軽にご相談ください。ふれあい入居サポートセンターでは、社会福祉士などの専門の相談員が無料でご相談を承っています。
参考文献・公的資料
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1252(高額介護サービス費の上限額、2026 年 6 月確認)
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1280(負担限度額認定の所得段階・資産要件、2026 年 6 月確認)
- 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「施設サービス」「ケアハウス」(2026 年 7 月確認)
- 年金額・施設費用・使える制度は個人の状況や地域によって異なります。ご自身の場合の見通しは市区町村の窓口・福祉事務所にご確認ください。
