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コラムケアマネジャー向け医療との連携

医療依存度が高い利用者の受け入れ先の探し方
— 処置別の当たり方を入居相談員が整理 —

「喀痰吸引に対応可」と聞いていた施設に打診したら断られた。あるいは、受け入れは可能と言われたのに、入居前面談で条件が付いた。医療的なケアが必要な利用者の施設探しでは、こうした行き違いが起きやすくなります。 理由ははっきりしていて、「対応可」という言葉が指す範囲が、施設ごとに違うからです。この記事では、処置ごとに何を確認すれば打診が空振りしないかを整理しました。介護職員が実施できる範囲、夜間体制の見方、施設類型による違いまでまとめています。
掲載日:2026.08.06|監修:社会福祉士・入居相談員
この記事の要点

「対応可」という言葉が指す範囲は施設ごとに違います。処置名ではなく「何を・1 日に何回・どの時間帯に・誰が実施するか」で当たると、打診が空振りしません。

介護職員が喀痰吸引・経管栄養を実施するには、研修を修了して認定を受けた「認定特定行為業務従事者」であることと、事業所が「登録特定行為事業者」として登録されていることの両方が必要です。研修は第 1 号・第 2 号・第 3 号に分かれ、実施できる行為の範囲が異なります。点滴・インスリン注射・褥瘡の処置などは看護職員以上が担うため、看護職員の配置時間そのものが受け入れの条件になります。とくに 夜間に処置が必要かどうかで、打診できる施設の範囲は大きく変わります。
中川 優美(社会福祉士・入居相談員)
この記事の監修者

中川 優美Yumi Nakagawa

社会福祉士。ふれあい入居サポートセンター葛飾相談室にて、入居相談を担当。医療的なケアが必要な方の入居相談も日常的にお受けしており、処置の内容を施設へ具体的に伝えて受け入れの可否を確認する役割を担っている。
社会福祉士(国家資格)ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室高齢者向け住まい紹介事業者届出 25-0881
編集ポリシー:本記事の喀痰吸引等制度に関する記述は、厚生労働省の公開情報(喀痰吸引等研修、認定特定行為業務従事者、登録特定行為事業者)を 2026 年 8 月に確認して執筆しています。施設類型ごとのサービス利用の可否については介護保険法にもとづく給付の考え方によりますが、適用の可否は個別性が高く、最終的には保険者の判断によります。医療的な判断にあたる内容は記載しておらず、主治医の医学的な見解を前提に整理しています。本記事内の事例はイメージで、特定の個人を表すものではありません。

処置名だけで探すと外れる理由

「喀痰吸引 対応可」という情報だけを頼りに打診すると、断られることがあります。理由は 3 つです。

  1. 実施できる行為の範囲が違う — 同じ「吸引」でも、口腔内までか、気管カニューレ内部まで対応できるかで分かれます
  2. 実施できる時間帯が違う — 日中は対応できても、夜間は職員体制が変わるため対応できないことがあります
  3. 誰が実施するかで条件が変わる — 看護職員が行うのか、認定を受けた介護職員が行うのかで、必要な体制が異なります

つまり、「対応可」という言葉が指す範囲が施設ごとに違うのが根本の理由です。

打診の段階で **「何を・1 日に何回・どの時間帯に・誰が実施しているか」**まで伝えると、施設側がその場で判断できることがあります。ここを最初に揃えるだけで、往復の回数がかなり減ります。

介護職員が実施できる範囲

受け入れの可否を左右するのが、介護職員がどこまで実施できるかです。ここを押さえておくと、施設の回答の意味が読み取れます。

2 つの要件がそろって初めて実施できます

介護職員が喀痰吸引・経管栄養を行うには、次の 両方が必要です。

  • 職員側 — 研修を修了し、認定を受けた 認定特定行為業務従事者であること
  • 事業所側登録特定行為事業者として登録されていること

片方だけでは実施できません。 「研修を受けた職員がいます」という回答があっても、事業所の登録がなければ実施できませんので、両方を確認します。

研修の区分によって、できる行為が変わります

喀痰吸引等研修は 第 1 号・第 2 号・第 3 号に分かれ、実施できる行為の範囲が異なります。

区分対象おおまかな範囲
第 1 号研修不特定多数の方喀痰吸引と経管栄養の対象となる行為全般
第 2 号研修不特定多数の方上記のうち 一部の行為
第 3 号研修特定の方その方に必要な行為

対象となる行為は、口腔内の喀痰吸引・鼻腔内の喀痰吸引・気管カニューレ内部の喀痰吸引・胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養・経鼻経管栄養です。

実務では、区分の名称を聞くより「うちの利用者に必要なこの行為を、実施できますか」と具体で尋ねるほうが確実です。第 3 号研修は特定の方を対象とする仕組みのため、その方について改めて対応が必要になる場合もあります。

処置別の当たり方

処置ごとに、確認する順番が変わります。

処置まず確認すること次に確認すること
喀痰吸引部位(口腔内/鼻腔内/気管カニューレ内部)と 1 日の回数夜間の実施の有無。認定を受けた職員の夜勤体制
経管栄養経路(胃ろう・腸ろう・経鼻)と 1 日の回数・時間帯注入中の見守り体制。トラブル時の対応
点滴頻度と、実施するのは誰か(訪問看護か施設の看護職員か)看護職員の配置時間。訪問診療・訪問看護との連携体制
インスリン注射1 日の回数と時間帯(毎食前なら夜間も関わる)血糖測定の実施者。低血糖時の対応
在宅酸素流量と、労作時の変更の有無機器の管理と、停電時の備え
尿道カテーテル(バルーン)交換の頻度と実施者閉塞・感染時の対応と連絡先
褥瘡処置部位・程度と処置の頻度看護職員の配置時間。皮膚科・訪問看護との連携

あわせて、どの処置でも共通して確認したいのが 急変時の対応です。かかりつけ医、協力医療機関、これまでの搬送先、夜間に状態が変わったときの連絡の流れ。ここまで揃うと、施設側も具体的に検討できます。

夜間体制が分かれ目になる

実務でいちばん効くのがここです。同じ処置でも、日中だけか夜間もあるかで、打診できる施設の範囲が大きく変わります。

多くの施設では、夜間は看護職員が不在で、電話で連絡を受けて対応するオンコールの体制になります。この場合、夜間の医療処置は実施できないことがあります。

確認していただきたいのは次の点です。

  • 看護職員の在籍時間(何時から何時まで)
  • 夜間は常駐かオンコールか。オンコールの場合、どのような場合に訪問してもらえるのか、到着までの目安
  • 夜勤帯に、認定を受けた介護職員が入るか
  • 夜間に状態が変わったとき、介護職員が誰に連絡し、看護職員や医師がどう判断・指示するか

「看護師 24 時間対応」と書かれていても、常駐なのかオンコールなのかで中身は別物です。ここは言葉で判断せず、必ず具体を確認してください。

施設類型による違い

外部のサービスを組み合わせて補えるかどうかは、施設の類型によって異なります。 ここを一括に考えると、見込み違いが起きます。

施設類型医療的なケアの担い手外部の訪問看護
介護付き有料老人ホーム(特定施設)施設の看護職員・介護職員。嘱託医・協力医療機関と連携特定施設入居者生活介護を受けている場合、介護保険による訪問看護は原則として利用できません
住宅型有料老人ホーム・一般型サ高住外部の訪問看護・訪問診療を個別に契約居宅サービスとして利用できます
介護保険施設(特養・老健・介護医療院)施設の看護職員・配置医師。類型により体制が異なります施設サービスに含まれるため、扱いが異なります

なお、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合など、医療保険による訪問看護が利用できるケースもあります。ただし 適用の可否は個別性が高く、最終的には保険者の判断によりますので、「訪問看護を付ければ住み続けられる」と見込む前に、保険者や訪問看護事業所へご確認ください。

見つからないときの選択肢

打診を重ねても受け入れ先が見つからない場合、施設探しの枠の外に選択肢があります。

  • 介護医療院 — 長期の療養のための医療と、日常生活上の介護を継続して必要とする場合の選択肢です
  • 在宅の継続 — 訪問診療・訪問看護・定期巡回随時対応型訪問介護看護などを組み合わせ、在宅を続ける組み立て
  • 医療機関での療養をいったん挟む — 状態が落ち着いてから改めて施設を探す

どれが適するかは、ご本人の状態と見通しによって変わります。主治医の医学的な見解を確認したうえで検討してください。

よくあるご質問

Q. 「喀痰吸引に対応可」と聞いていたのに、打診で断られることがあるのはなぜですか。

A. 実施できる範囲と時間帯が施設ごとに異なるためです。介護職員が喀痰吸引や経管栄養を行うには、研修を修了して認定を受けた 認定特定行為業務従事者であることと、事業所が 登録特定行為事業者として登録されていることの両方が必要です。研修は第 1 号・第 2 号・第 3 号に分かれ、実施できる行為の範囲が異なります。加えて、認定を受けた職員が夜勤に入るとは限りません。「対応可」という言葉だけでなく、必要な行為を必要な時間帯に実施できる体制かを確認してください。

Q. 点滴やインスリン注射は、介護職員が実施できますか。

A. できません。介護職員が実施できるのは、研修と登録の要件を満たしたうえでの 喀痰吸引と経管栄養に限られます。点滴・インスリン注射・褥瘡の処置などは看護職員以上が担うことになりますので、看護職員の配置時間そのものが受け入れの条件になります。とくに夜間に処置が必要な場合は、打診できる施設がかなり絞られます。

Q. 介護付き有料老人ホームでも、外部の訪問看護を使えますか。

A. 施設類型によって扱いが異なります。特定施設入居者生活介護を受けている場合、介護保険による訪問看護は原則として利用できません。一方、住宅型有料老人ホームや一般型のサービス付き高齢者向け住宅では、居宅サービスとして訪問看護を利用できます。なお、厚生労働大臣が定める疾病等に該当する場合など、医療保険による訪問看護が利用できるケースもあります。適用の可否は個別性が高いため、保険者や訪問看護事業所にご確認ください。

Q. 打診のときは、何をどう伝えると早いですか。

A. 処置の名称だけでなく **「何を・1 日に何回・どの時間帯に・誰が実施しているか」**まで伝えると、その場で可否を判断できることがあります。とくに 夜間の処置の有無は、打診できる施設の範囲を大きく変えます。あわせて、急変時にこれまでどう対応してきたか(かかりつけ医・協力医療機関・搬送先)も共有していただけると、医療連携の見通しが立てやすくなります。

Q. 受け入れ先が見つからないとき、ほかにどんな選択肢がありますか。

A. 長期の療養のための医療と介護を継続して必要とする状態であれば、介護医療院が候補になることがあります。また、在宅療養支援診療所や訪問看護と組み合わせて在宅を継続する方法、いったん医療機関での療養を挟む方法もあります。状態によって適する選択肢が変わりますので、主治医の医学的な見解を確認したうえで検討してください。

まとめ

医療依存度が高い利用者の受け入れ先を探すときの実務を整理しました。

  1. 「対応可」の指す範囲は施設ごとに違います。 処置名ではなく「何を・1 日に何回・どの時間帯に・誰が実施するか」で当たります
  2. 介護職員が喀痰吸引・経管栄養を行うには、認定特定行為業務従事者であること事業所の登録の両方が必要です。研修の区分で実施できる行為の範囲も変わります
  3. 点滴・インスリン注射・褥瘡処置などは看護職員以上が担うため、看護職員の配置時間が受け入れの条件になります
  4. 夜間に処置があるかどうかが、打診できる施設の範囲を最も大きく変えます。「24 時間対応」は常駐かオンコールかを必ず確認します
  5. 外部の訪問看護で補えるかは施設類型によって異なります。 特定施設では介護保険の訪問看護は原則利用できません
  6. 見つからないときは、介護医療院・在宅の継続・医療機関での療養も含めて、主治医の見解を前提に検討します

処置の内容から打診先を組み立てるところから、お手伝いできます。ふれあい入居サポートセンター(葛飾相談室)では、ケアマネジャー様からのご依頼を承っています。

参考文献・公的資料

  1. 厚生労働省「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度」(認定特定行為業務従事者・登録特定行為事業者・喀痰吸引等研修の区分。2026年8月閲覧)
  2. 社会福祉士及び介護福祉士法(介護福祉士等による喀痰吸引等の実施)
  3. 介護保険法にもとづく給付の考え方(特定施設入居者生活介護と居宅サービスの関係)。適用の可否は保険者の判断によります
  4. ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室 入居相談の実務
  5. 医療的な判断にあたる内容は記載していません。主治医・施設の嘱託医にご相談いただく前提で整理しています。

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