看取り対応の施設選びは「施設の医療連携と夜間体制」「看取りの方針と実績」「本人とご家族の希望の整理」の 3 つを軸に確かめます。施設のタイプによって対応の幅が違います。

中川 優美Yumi Nakagawa
施設での看取りとは
施設での看取りとは、治療によって回復を目指す段階を過ぎたあと、無理な延命を行わず、本人が穏やかに過ごせるように支えながら最期のときを迎えることをいいます。住み慣れた施設で、なじみのスタッフに見守られて過ごせることが、本人にとってもご家族にとっても安心につながると、ご相談の場面でも感じています。
ただし、看取りに対応している施設であっても、「必ず施設で最期まで」とお約束できるものではありません。急に容体が変わって医療機関での治療が必要になることもありますし、本人やご家族の希望が途中で変わることもあります。大切なのは、施設の方針と、いざというときの対応の取り決めを、入居前にすり合わせておくことです。
医療上の判断(治療を続けるかどうか、どのような処置をするかなど)は、主治医や施設の嘱託医が、本人・ご家族と話し合いながら決めていきます。本記事は施設選びの考え方を整理するもので、医療の判断そのものに踏み込むものではありません。
対応しやすい施設のタイプ
看取りには医師の関わりと夜間の体制が欠かせないため、施設のタイプによって対応のしやすさに違いがあります。下の表は一般的な傾向で、最終的には施設ごとの体制で判断します。
| 施設のタイプ | 看取りへの対応の傾向 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 看取りの体制を整えているところが多い傾向にあります |
| 介護医療院 | 長期療養と看取りを担う施設として位置づけられています |
| 介護付き有料老人ホーム | 嘱託医と連携し、看取りに対応するところがあります |
| 認知症グループホーム | 看取りの体制を整えているところがあります |
| 介護型のサ高住・ケアハウス | 特定施設として看取りに対応するところがあります |
| 住宅型有料老人ホーム・一般型サ高住 | 外部の訪問診療・訪問看護と連携して看取るかたちが多いです |
| 介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰を目的とする施設のため、看取りが中心ではありません |
「ナーシングホーム」と呼ばれる施設を見かけることがありますが、これは法律上の施設のタイプではなく、多くは住宅型有料老人ホームに訪問看護を組み合わせたかたちです。医療への対応を掲げている場合も、訪問診療や夜間の体制の中身は施設ごとに異なりますので、具体的に確認することが大切です。
同じタイプの施設でも、看取りに積極的なところと、そうでないところがあります。タイプはあくまで目安として、次の章の 5 つのポイントで一つひとつ確かめていきましょう。
見極めたい 5 つのポイント
1. 協力している医療機関との連携
施設での看取りには、医師の関わりが欠かせません。施設に協力医療機関や訪問診療の体制があるか、どのくらいの頻度で医師が関わってくれるかを確認します。
確かめたいのは、たとえば次のような点です。
- 協力医療機関や訪問診療の医師がいるか
- 定期的に医師が往診する体制があるか
- 入院が必要になったときに連携できる病院があるか
医療との連携がしっかりしている施設ほど、状態が変わったときに落ち着いて対応しやすくなります。
2. 夜間・休日の体制
容体の変化は、夜間や休日に起こることも少なくありません。そのときに誰が対応してくれるのかは、看取りを考えるうえで特に大切なポイントです。
施設によって、夜間に看護師が常駐しているところと、看護師は不在でオンコール(電話連絡を受けて駆けつける体制)のところがあります。どちらが良い悪いというより、夜間に急な変化があったとき、どこに連絡し、誰が判断するのかという流れを具体的に確認しておくと安心できます。
3. 看取りの方針と実績
その施設が、これまで看取りにどのように向き合ってきたかを聞いてみましょう。看取りを行っているか、年間でどのくらいの方を看取っているか、どのような方針で支えているかは、施設の姿勢がよく表れる部分です。
数の多さだけで判断する必要はありません。「ご本人とご家族の希望をどう受け止めてくれるか」「最期の時間をどう支えてくれるか」という、施設の考え方を確かめることが大切です。
4. 急変したときの取り決め
施設での看取りを希望していても、急に状態が変わることがあります。そのときに、救急車を呼んで医療機関で治療を受けるのか、施設で見守るのかは、本人・ご家族の希望と施設の方針をすり合わせて、あらかじめ決めておくことが大切です。
この取り決めがあいまいなままだと、いざというときに現場が迷い、本人の希望と違う対応になってしまうことがあります。入居前の面談や、入居後の話し合いの場で、施設・主治医とていねいに共有しておきましょう。
5. 費用の見通し
看取りの時期には、介護報酬上の加算(看取り介護加算など)が算定されることがあり、その分の自己負担が生じる場合があります。金額は施設のタイプや介護報酬の改定によって変わりますので、入居前に施設へ確認してください。
医療費やおむつ代など、月額の利用料以外にかかる費用もあります。費用の軽減制度については、別記事「高額介護サービス費と負担限度額認定」もあわせてご覧ください。
希望を整理する(人生会議)
看取りの施設選びでいちばん土台になるのは、「本人がどう過ごしたいか」です。元気なうちから、本人とご家族、主治医とで少しずつ話し合っておくことがすすめられています。これは人生会議(ACP)と呼ばれ、将来の医療やケアについて、本人の希望を中心に話し合っておく取り組みです。
一度で決めきる必要はありません。状態の変化に合わせて、何度でも見直すことができます。話し合っておくとよいのは、たとえば次のようなことです。
- どこで過ごしたいか(住み慣れた場所か、医療機関か)
- 食べられなくなったときに、どこまでの医療を望むか
- 大切にしたい時間や、会っておきたい人
こうした希望を、施設や主治医と共有しておくと、いざというときにご家族が迷いを抱えにくくなります。「本人の気持ちが分からないまま判断を迫られる」というつらさを、少しでもやわらげることにつながります。医療上の判断は主治医・施設の嘱託医にご相談いただく前提で、まずは本人の気持ちを聞いておくところから始めてみてください。
ケース別の考え方
ご家族の状況によって、見ておきたい点は少しずつ変わります。代表的な例で整理します。
認知症が進んできた親御さんの場合
認知症の方になじみの環境が大切なため、グループホームや、認知症の方を多く受け入れている施設で、そのまま看取りまで対応してもらえるかを確認しておくと、住み替えの負担を減らせます。本人の希望を直接聞くことが難しくなる前に、人生会議で気持ちを聞いておけると安心です。
医療的なケアが必要な親の場合
たんの吸引や経管栄養など、医療的なケアが続いている場合は、その対応ができる施設かを先に確認します。医療依存度が高い方の施設選びは、別記事「医療依存度が高い親の入居先」で詳しくまとめています。
在宅で看ていて限界を感じ始めた場合
ご家族だけで在宅の看取りを抱えるのが難しいと感じたときは、施設での看取りも選択肢のひとつです。ご家族だけで抱え込む必要はありません。まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみてください。
よくあるご質問
Q. 看取り対応の施設なら、必ず最期まで施設で過ごせますか。
A. 看取りの方針は施設ごとに異なり、本人やご家族の希望、そのときの状態によっても変わります。施設での看取りを希望していても、急変して医療機関での治療が必要になることもあります。「必ず施設で最期まで」とお約束できるものではありませんので、入居前に施設の方針と、急変したときの対応の取り決めを確認しておくことが大切です。
Q. 看取りに対応しやすいのはどのタイプの施設ですか。
A. 特別養護老人ホーム、介護医療院、介護付き有料老人ホーム、認知症のグループホームなどは、看取りの体制を整えているところが比較的多い傾向にあります。住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅でも、訪問診療や訪問看護と連携して看取りに対応しているところがあります。タイプだけで決めず、その施設ごとの体制を確かめることが大切です。
Q. 夜間に容体が変わったとき、誰が対応してくれますか。
A. 施設によって、夜間に看護師が常駐しているところと、看護師は不在でオンコール(電話連絡で駆けつける体制)のところがあります。夜間や休日に急な変化があったとき、どこに連絡し、誰が判断するのかは施設ごとに違います。看取りを考える場合は、夜間・休日の体制を具体的に確認しておくと安心です。
Q. 延命治療をどうするかは、いつ決めればよいですか。
A. 元気なうちから、本人とご家族、主治医とで少しずつ話し合っておくことがすすめられています(人生会議・ACP と呼ばれます)。一度で決めきる必要はなく、状態の変化に合わせて何度でも見直せます。医療上の判断は主治医や施設の嘱託医にご相談いただく前提で、本人がどう過ごしたいかを共有しておくと、いざというときに迷いが減ります。
Q. 費用は通常の入居よりも高くなりますか。
A. 看取りの時期には、介護報酬上の加算(看取り介護加算など)が算定されることがあり、その分の自己負担が生じる場合があります。金額は施設のタイプや介護報酬の改定によって変わりますので、入居前に施設へ確認してください。費用の見通しづくりは無料の相談窓口でもご一緒に整理できます。
まとめ
看取りを見据えた施設選びは、いくつかの点を順番に確かめていけば、落ち着いて進められます。最後に要点を整理します。
- 看取り対応の施設でも「必ず最期まで施設で」とは限らないため、方針と急変時の取り決めを確認します
- 特養・介護医療院・介護付き有料・グループホームなどは体制を整えているところが多い傾向にあります
- 見極めたいのは、医療連携・夜間の体制・看取りの方針と実績・急変時の取り決め・費用の 5 点です
- 土台になるのは本人の希望です。元気なうちから人生会議で気持ちを共有しておきましょう
- 医療上の判断は主治医・施設の嘱託医にご相談いただく前提で、施設選びを進めます
最期の過ごし方を考えるのは、ご家族にとって心の負担が大きいものです。ひとりで抱え込まず、専門の相談員や主治医、ケアマネジャーと一緒に整理していくことができます。お気軽にご相談ください。
参考文献・公的資料
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」(2026年6月閲覧)
- 厚生労働省「介護医療院について」(2026年6月閲覧)
- 厚生労働省「人生会議(ACP)」普及・啓発(2026年6月閲覧)
- 看取りの方針・体制・加算の有無は施設ごとに異なります。具体的な内容は各施設・主治医・施設の嘱託医にご確認ください。
