最初の一報で「要介護度・医療処置・認知症の状況・費用の上限・希望エリア・希望時期」の 6 点がそろうと、確認の往復を挟まずに候補の絞り込みに入れます。

中川 優美Yumi Nakagawa
最初の一報で決まること
紹介事業者に相談が入ってから候補をお返しするまで、実際には次の順で動いています。
- いただいた情報で、受け入れの可能性がある施設を絞る
- 施設へ打診し、受け入れの可否と空室の状況を確認する
- 費用の試算を取り、条件に合うものを候補としてお返しする
このうち 2 の打診で施設が判断するために必要な情報が欠けていると、1 に戻って確認の往復が発生します。ここが時間のかかるところで、退院期日が決まっているケースではそのまま日程の余裕を削ることになります。
逆に言えば、最初の一報で施設が判断できるだけの情報がそろっていれば、その日のうちに打診まで進められることもあります。次の章の 6 項目は、その「施設が判断するために必要な最小限」です。
必ず伝えたい 6 項目
1. 要介護度と認定の有効期間
要介護度は、施設の受け入れ要件に直結します。あわせて 認定の有効期間もお伝えください。更新の時期が近い場合、入居のタイミングと重なると手続きが立て込みます。
区分変更の申請中であれば、その旨と申請日も共有していただけると、施設側の判断が変わることがあります。
2. 医療処置
ここが最も差が出る項目です。処置の名称だけでは、施設は受け入れの可否を判断できないことがほとんどです。
次の 4 点まで伝わると、その場で回答できることがあります。
- 何を(喀痰吸引・経管栄養・インスリン・在宅酸素・褥瘡処置 など)
- 1 日に何回
- どの時間帯に(日中のみか、夜間もあるか)
- 誰が実施しているか(本人・家族・訪問看護・介護職員による喀痰吸引等)
とくに 夜間の処置の有無は、打診できる施設の範囲を大きく変えます。看護職員が夜間不在でオンコール対応の施設では、夜間の処置が入ると受け入れが難しくなることがあるためです。
あわせて、急変したときにこれまでどう対応してきたか(かかりつけ医・協力医療機関・搬送先)も共有していただけると、医療連携の見通しが立てやすくなります。
3. 認知症の状況
診断名の有無と、具体的な場面をお伝えください。「認知症あり」だけでは、受け入れの判断材料になりません。
「徘徊」「暴言」といった言葉でまとめず、どんな場面で・どのくらいの頻度で起きているかを共有していただけると、施設側も自分たちの体制で対応できるかを具体的に検討できます。実際、同じ「ひとり歩き」でも、日中に施設内を歩かれるのか、夜間に外へ出ようとされるのかで、打診先が変わります。
服薬でコントロールされている場合は、その内容と経過も重要な情報です。
4. 費用の上限
月額でいくらまで出せるかを、初期費用(入居一時金・敷金)と分けてお伝えください。
年金額と預貯金からの持ち出しの見込み、ご家族からの援助の有無まで分かると、現実的に続けられる範囲で候補を出せます。生活保護を受給されている場合、または申請を検討されている場合は、その旨を最初にお伝えください。受け入れ実績のある施設が限られるため、打診先の組み立てが変わります。
5. 希望エリア
ご本人の生活圏か、ご家族が通いやすい場所か、どちらを優先されているかまで分かると絞りやすくなります。「この駅から徒歩圏」「乗り換えなしで行ける範囲」といった条件があれば、あわせてお伝えください。
なお、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は地域密着型サービスのため、原則として施設がある市区町村に住民票がある方が対象になります。エリアをまたぐ検討をされる場合は、この点も判断に関わります。
6. 入居の希望時期
「退院期日が◯月◯日」「在宅の限界が近く 1 か月以内」「特養の順番待ちの間だけ」というように、時期と背景をセットでお伝えください。
背景が分かると、打診の順番が変わります。退院期日が決まっているケースでは、空室があり判定が早い施設から当たっていく必要がありますし、特養の待機中であれば、期間を限った利用も含めた組み立てになります。
本人の同意の扱い
利用者の心身の状況やご家族の状況を紹介事業者へ伝えることは、第三者への個人情報の提供にあたります。
あらかじめ ご本人(判断が難しい場合はご家族等)から同意を得たうえでお伝えください。多くの居宅介護支援事業所では、契約時の同意書に「サービス担当者会議等における個人情報の使用」に関する項目がありますが、そこに紹介事業者への提供が読み取れる範囲で含まれているかは、事業所ごとに異なります。
あわせて、ご本人が施設入居についてどう受け止めているかも共有していただけると助かります。ご本人が納得されていない段階なのか、前向きに検討されているのかで、見学の組み立て方が変わります。ご本人の意向を確認しないまま話が進むと、見学や契約の段階で止まってしまうことがあります。
精度が上がる情報
次の情報は、最初から全部そろえる必要はありません。候補が絞れてから、あるいは見学や入居前面談の前までにご提供いただければ間に合うことが多いものです。
| 情報 | 何に効くか |
|---|---|
| ADL の具体(移乗・排せつ・入浴・食事の形態) | 人員配置や設備との適合、入居前面談の準備 |
| 生活歴・これまでの暮らし方 | 施設側のアセスメント、なじみやすさの見立て |
| キーパーソンと連絡先、家族の関わり方 | 契約手続きの段取り、緊急時の連絡体制 |
| 服薬の内容と管理方法 | 服薬管理の体制、一包化の要否 |
| 入院歴・直近の経過 | 医療連携の見通し |
| 身元引受人・連帯保証人の見込み | 契約条件の確認、代替手段の検討 |
これらは施設側の入居前アセスメントで必ず確認される項目です。先に整理しておくと、候補が決まってからの動きが速くなります。
折り返しで確認したいこと
候補の提案を受けたときは、次の点を確認しておくと、利用者・ご家族に説明しやすくなります。
- その施設を選んだ理由(条件のどこが合致したか)
- 受け入れの可否は、どの段階まで確認済みか(打診しただけか、入居前面談の日程まで進められるか)
- 空室の状況と、いつまで押さえられるか
- 費用の内訳(月額に含まれるもの・別途かかるもの。医療費やおむつ代の扱い)
- 条件に合わなかった施設があれば、その理由
最後の項目は見落とされがちですが、外した施設とその理由まで示されるかどうかは、その紹介事業者が候補を偏りなく検討しているかを見る手がかりになります。提案された施設だけが示され、なぜ他が外れたのか説明がない場合は、理由を尋ねてみてください。
紹介事業者の選び方そのものについては、別記事「紹介事業者の選び方|手数料の仕組みと見分けるポイント」で整理しています。
断るときの伝え方
提案された候補が合わなければ、「今回は見送ります」とお伝えいただければ十分です。理由を詳しく説明していただく必要はありません。
ただ、どこが合わなかったかを一言添えていただけると、次の候補の精度が上がります。「費用が想定より高い」「本人が個室を希望している」「家族が通うには遠い」といった一言で、次の打診先の組み立てが変わります。
なお、断りにくさを感じさせる対応をされる場合は、その事業者との付き合い方そのものを見直す材料になります。ケアマネジャーには特定の事業者に偏らない立場が求められますので、複数の紹介事業者を比べられる状態を保っておくことが、結果的に利用者の選択肢を守ることにつながります。
よくあるご質問
Q. 利用者の情報を紹介事業者に伝えるとき、本人の同意は必要ですか。
A. 必要です。利用者の心身の状況やご家族の状況を 第三者である紹介事業者へ提供することになりますので、あらかじめご本人(判断が難しい場合はご家族等)から同意を得たうえでお伝えください。多くの居宅介護支援事業所では、契約時の同意書に「サービス担当者会議等での個人情報の使用」に関する項目がありますが、紹介事業者への提供が読み取れる範囲かは事業所ごとに異なります。範囲が不明なときは、その都度あらためて同意を得るのが確実です。
Q. 最初の連絡で、どこまで伝えれば候補が出てきますか。
A. 要介護度、医療処置の有無と内容、認知症の状況、費用の上限、希望エリア、入居の希望時期。この 6 点がそろうと、多くのケースで候補の絞り込みに入れます。逆にこの中に空白があると、施設への打診の前に確認の往復が発生し、その分だけ時間がかかります。ADL の細かい情報や生活歴は、候補が絞れてからの提供でも間に合うことが多いです。
Q. 医療処置の内容は、どこまで具体的に伝えるべきですか。
A. 処置の名称だけでは、施設側が受け入れの可否を判断できないことがほとんどです。**「何を・1 日に何回・どの時間帯に・誰が実施しているか」**まで伝えると、受け入れの可否がその場で判断できることがあります。たとえば喀痰吸引であれば、日中のみか夜間もあるか、頻度はどのくらいかによって、打診できる施設が変わります。あわせて、急変時にどう対応してきたかも共有していただけると助かります。
Q. 紹介事業者に依頼すると、利用者や事業所に費用はかかりますか。
A. 当センターの場合、利用者・ご家族・ケアマネジャーからの費用はいただいていません。紹介事業者の多くは、入居が決まった施設から紹介手数料を受け取る仕組みで運営しています。この仕組みは事業者によって異なりますので、依頼の前に確認しておくと安心です。仕組みと確認のしかたは、別記事「紹介事業者の選び方」で整理しています。
Q. 候補が合わなかった場合、断っても差し支えありませんか。
A. 差し支えありません。「今回は見送ります」とお伝えいただければ十分で、理由を詳しく説明していただく必要もありません。むしろ、どこが合わなかったかを一言添えていただけると、次の候補の精度が上がります。断りにくさを感じさせる対応をする事業者であれば、その事業者との付き合い方自体を見直す材料になります。
まとめ
紹介事業者への入居相談は、最初の一報の情報量で、その後の速さが決まります。
- 必ず伝えたい 6 項目は、要介護度・医療処置・認知症の状況・費用の上限・希望エリア・希望時期
- **医療処置は名称だけでなく「何を・何回・いつ・誰が」**まで伝えると、その場で可否が判断できることがあります
- 認知症は「徘徊」等の言葉でまとめず、場面と頻度で共有すると、打診先が具体的に絞れます
- 利用者情報の提供には、あらかじめご本人(または家族等)の同意が必要です。同意の範囲が読み取れないときは、あらためて得るのが確実です
- ADL の具体や生活歴は、候補が絞れてからで間に合います。そろわない項目があっても、まず連絡を
- 折り返しでは、外した施設とその理由まで確認すると、偏りなく検討されているかが見えます
ふれあい入居サポートセンター(葛飾相談室)では、ケアマネジャー様からの入居相談を承っています。ケアマネジャー様・利用者様からの費用はいただいておりません。 打診先が限られるケースこそ、お気軽にご相談ください。
参考文献・公的資料
- 個人情報の保護に関する法律(第三者提供の制限)(e-Gov 法令検索、2026年8月閲覧)
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(厚生労働省令。個人情報の適正な取扱い)
- 厚生労働省「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(2026年8月閲覧)
- ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室 入居相談の実務
- 個人情報の取り扱いは事業所ごとの同意書の記載範囲・運用によって異なります。実際の取り扱いは所属事業所の規程と、必要に応じて保険者にご確認ください。
