負担割合が変えるのは「介護サービス費」の行だけです。家賃・管理費・食費は変わりません。

中川 優美Yumi Nakagawa
負担割合がかかるのは、月額の一部だけです
介護保険負担割合証は、介護保険被保険者証とは別に届く証です。そこに 1 割・2 割・3 割のいずれかと、適用される期間が書かれています。多くの自治体では毎年 8 月 1 日に新しい期間へ切り替わり、その前に新しい証が郵送されます。
ご相談の場でいちばん多い誤解が、この割合が月額の総額にかかると思ってしまうことです。実際にかかるのは、月額のうちの一部分だけです。
割合がかかる費用
介護保険法は、介護保険から支払われる額を「厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額の 100 分の 90 に相当する額」と定めています(第 41 条第 4 項)。残りをご本人が支払う形になりますので、原則が 1 割負担、所得の状況によって 2 割・3 割になる方がいらっしゃる、という組み立てです。
つまり割合がかかるのは、次のような介護保険の給付の対象になるサービスの費用です。
- 介護付有料老人ホーム・ケアハウスなどで受ける特定施設入居者生活介護
- 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院で受ける介護サービス
- 訪問介護・通所介護・訪問看護など、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅にお住まいの方が外から受けるサービス
- ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)
割合がかからない費用
一方で、次の費用は介護保険の給付の対象ではありませんので、負担割合が変わっても額は変わりません。
| 負担割合の影響を受ける | 負担割合の影響を受けない |
|---|---|
| 介護サービス費(1〜3 割の部分) | 家賃・部屋代にあたる居住費 |
| 同上に加算される各種の加算分 | 管理費・共益費 |
| 施設で受ける医療系のサービスのうち介護保険の対象のもの | 食費 |
| — | おむつ代・理美容代・レクリエーションの実費 |
| — | 施設が独自に設けている上乗せの介護サービス費 |
介護保険法も、特定施設入居者生活介護に要した費用について「食事の提供に要する費用、滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用として厚生労働省令で定める費用を除く」と書いています(第 41 条第 1 項)。食費や居住費は、初めから介護保険の給付の外に置かれている費用です。
施設の種類で、変わり方が違います
同じ 1 割から 2 割でも、お住まいの施設の形によって影響の大きさが変わります。
介護付有料老人ホーム・特養など
介護付有料老人ホームやケアハウス(特定施設)、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設では、介護サービス費が要介護度ごとに毎月ほぼ決まった額になります。使った回数で増減するものではありません。
そのため、負担割合が 1 割から 2 割になると、この決まった額の自己負担が計算のうえでは倍になります。もとの額が大きい方ほど、差も大きくなります。ただし後述の高額介護サービス費の上限に届く場合は、そこで頭打ちになります。要介護度ごとの額そのものは厚生労働大臣が定める基準によりますので、具体の額は施設にご確認ください。
住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、介護サービスを外部の事業者から個別に受ける形が一般的です。この場合の自己負担は使ったサービスの量に応じて決まりますので、負担割合が上がったときの影響も、月にどれだけ使っているかによって変わります。
なお、介護保険には 1 か月に使えるサービスの量の上限(区分支給限度基準額)があり、法律はこの上限についても「100 分の 90 に相当する額を超えることができない」と定めています(第 43 条第 1 項)。上限を超えて使った分は、もともと全額がご本人の負担です。ここは負担割合が上がっても額が変わらない部分ですので、ケアプランの中でどこまでが保険の中でどこからが外なのかを、担当のケアマネジャーに一度整理してもらうとよいかもしれません。
施設の種類ごとの費用のかかり方の違いは、別記事「特養と介護付き有料老人ホームの違い」「サ高住と住宅型有料老人ホームの違い」でも整理しています。
高額介護サービス費という月の上限があります
負担割合が上がったときに、まず確かめていただきたいのがこの制度です。
1 か月の介護サービスの自己負担が所得に応じた上限を超えた場合、超えた分が払い戻されます。1 割のときは上限に届いていなかった方が、2 割・3 割になって初めて届くようになるということが起こります。その場合、負担割合が倍になっても、実際にお支払いいただく額は倍にはなりません。
多くの自治体では、対象になると市区町村から申請の案内が届きます。一度申請して口座を登録すれば、以後は該当する月の分が自動的に振り込まれる運用が一般的です。案内が届かないこともありますので、心当たりのあるときは市区町村の介護保険担当課に問い合わせてみてください。
上限の額や所得の区分は、別記事「介護費用を軽くする 2 つの制度|高額介護サービス費と負担限度額認定」に一覧でまとめています。
食費・居住費の軽減が、同時に外れることがあります
もうひとつ、あわせて確かめていただきたいことがあります。
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院・ショートステイの食費と居住費を軽くする負担限度額認定(補足給付)という制度があります。負担割合とは別の制度ですが、どちらも所得の状況をもとに判定されるという共通点があります。
そのため、所得が増えたことで負担割合が上がった年に、負担限度額認定の対象からも外れるということが起こり得ます。片方だけを見ていると、翌月の請求書で思っていた以上の差が出て驚かれることがあります。
負担割合証が届いたら、負担限度額認定証の有効期間もあわせて確かめてください。制度の中身は、別記事「介護費用を軽くする 2 つの制度」と「負担限度額は2026年8月から改定|変更点と対象になる人」にまとめています。
なお、負担限度額認定(法律の上では特定入所者介護サービス費といいます)の対象として介護保険法が挙げているのは、特別養護老人ホーム(地域密着型のものを含みます)・介護老人保健施設・介護医療院・ショートステイです(第 51 条の 3 第 1 項)。介護付有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、この中に入っていません。有料老人ホームにお住まいの方については、この点は初めから変わりません。
覚えのない上がり方をしたとき
「収入は変わっていないのに割合が上がった」というご相談をいただくことがあります。
負担割合の判定に用いられる所得には、年金以外のものも含まれます。たとえば土地や建物を売ったとき、保険の一時金を受け取ったときなど、その年かぎりの収入が判定に反映されることがあります。ご本人もご家族も心当たりがない、ということも珍しくありません。
このようなときは、どの所得で判定されたのかを市区町村の介護保険担当課で確かめられます。判定の根拠になった数字を見せていただいたうえで、思い当たる出来事と突き合わせてみてください。
説明を聞いても内容に納得がいかない場合は、その決定に対して不服を申し立てられるかどうかもあわせて、担当課に手続きの案内を求めてみてください。
施設を探している途中で気づいたら
施設探しの最中に負担割合が変わることもあります。8 月 1 日に切り替わりますので、夏に動いている方はとくに起こりやすい場面です。
- 1見積もりがどの割合で作られているかを確かめます施設から受け取った見積もりには、たいてい前提とした要介護度と負担割合が書かれています。1 割で作られているなら、介護サービス費の行だけを新しい割合で計算し直してもらってください。施設に伝えれば、作り直してもらえます。
- 2高額介護サービス費の上限に届くかを確かめます新しい割合で計算した介護サービス費の自己負担が、その月の上限を超える見込みであれば、実際にお支払いいただく額はそこで止まります。見積もりの数字だけで判断すると、実態より重く見えることがあります。
- 3総額ではなく、何年続けられるかで比べます月額がいくらかよりも、年金と預貯金で何年支えられるかのほうが、施設選びでは大切な物差しになります。負担割合は今後も変わり得ますので、少し余裕を見た形で見通しを立てておくと安心です。
- 4候補の「形」を変える余地がないかを見ます介護サービス費のかかり方は施設の種類によって違います。同じご予算でも、特定施設と住宅型では負担の出方が変わります。候補の形を広げると、選べる範囲が変わってくることがあります。
すでに入居されている場合も、すぐに住み替えを考える必要はありません。まず軽減の制度を確かめ、それでも続けるのが難しいと分かってから、住み替えの話に進むという順番をおすすめしています。費用の面から住まいを見直すときの考え方は、別記事「老人ホームの費用が払えなくなったら」にまとめました。
年間の医療費と介護の費用の合計が大きい場合は、医療費控除の対象になることもあります(「介護費用と医療費控除」)。
よくあるご質問
Q. 負担割合が 2 割になると、老人ホームの月額も 2 倍になりますか。
A. いいえ、月額の全部が変わるわけではありません。割合がかかるのは介護保険の給付の対象になるサービスの自己負担の部分だけです。家賃・管理費・食費・おむつ代・理美容代などは対象外ですので、額は変わりません。介護付有料老人ホームでは要介護度ごとに毎月決まった額の介護サービス費がかかりますので、その行の額が計算のうえでは倍になります。実際にいくら変わるかは施設と要介護度によって違いますので、施設に新しい割合での見積もりを出し直してもらってください。
Q. 負担割合はどこを見れば分かりますか。
A. 介護保険負担割合証に書かれています。介護保険被保険者証とは別に届く証で、1 割・2 割・3 割のいずれかと、適用される期間が記載されています。多くの自治体では毎年 8 月 1 日に新しい期間へ切り替わり、その前に新しい証が郵送されます。お手元にないときや、どの所得で判定されたのかを知りたいときは、市区町村の介護保険担当課にお問い合わせください。
Q. 上がった分を軽くする方法はありますか。
A. まず高額介護サービス費をご確認ください。1 か月の介護サービスの自己負担が所得に応じた上限を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度です。負担割合が上がると、この上限に届く方が出てきます。多くの自治体では対象になると案内が届き、一度申請すれば以後は自動的に振り込まれる運用です。案内が届かないこともありますので、心当たりのあるときは市区町村にお尋ねください。このほか、年間の医療費と介護の費用の合計が大きい場合は医療費控除の対象になることもあります。
Q. 負担割合が上がると、食費や居住費の軽減も外れますか。
A. 外れることがあります。特養などの食費・居住費を軽くする負担限度額認定は負担割合とは別の制度ですが、どちらも所得の状況をもとに判定されます。所得が増えて負担割合が上がった年に、負担限度額認定からも外れるということが起こり得ます。二つが重なると差が大きくなりますので、負担割合証が届いたら認定証の有効期間もあわせて確かめてください。
Q. 施設を探している途中で負担割合が上がりました。候補を変えるべきでしょうか。
A. すぐに外す必要はありません。まず、手元の見積もりがどの割合で作られているかを確かめ、介護サービス費の行だけを計算し直してください。そのうえで、高額介護サービス費の上限に届くかどうかも含めて、何年続けられるかという見方で比べ直してみてください。施設の種類によって介護サービス費のかかり方が違いますので、候補の形を変えると負担の見え方が変わることもあります。
まとめ
負担割合証の数字が変わると、月額の全部が変わるように感じられます。けれども実際に動くのは、そのうちの一部です。
- 割合がかかるのは介護サービス費の部分だけです。家賃・管理費・食費・おむつ代などは変わりません
- 介護保険法は給付の額を「算定した費用の額の 100 分の 90 に相当する額」と定めています(第 41 条第 4 項)。原則が 1 割負担で、所得の状況により 2 割・3 割になる方がいらっしゃいます
- 介護付有料老人ホームや特養では介護サービス費が毎月ほぼ決まった額ですので差が見えやすく、住宅型やサ高住では使った量によって変わります
- 介護サービスの自己負担には高額介護サービス費という月の上限があります。上がって初めて上限に届く方もいらっしゃいますので、必ず確かめてください
- 食費・居住費の負担限度額認定が同じ年に外れることがあります。認定証の有効期間もあわせて確認してください
- 覚えのない上がり方をしたときは、どの所得で判定されたのかを市区町村で確かめられます
請求書を「介護サービス費」と「それ以外」に分けて見直すだけで、直すべき数字がはっきりします。そのうえで続けられるかどうかを見ていただくと、あわてて住まいを変える判断を避けられることが少なくありません。見通しの立て方に迷われたときは、お気軽にご相談ください。
参考文献・公的資料
- 介護保険法(平成9年法律第123号)第41条第1項・第4項(居宅介護サービス費の支給。特定施設入居者生活介護に要した費用から食事の提供に要する費用・滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用として厚生労働省令で定める費用を除くこと、給付の額が算定した費用の額の100分の90に相当する額であること)(2026年9月18日に原文を確認)
- 介護保険法 第43条第1項(居宅介護サービス費等に係る支給限度額。区分支給限度基準額を基礎として算定した額の100分の90に相当する額を超えることができないこと)(2026年9月18日に原文を確認)
- 介護保険法 第51条の3第1項(特定入所者介護サービス費の支給。対象として指定介護福祉施設サービス・介護保健施設サービス・介護医療院サービス・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護・短期入所生活介護・短期入所療養介護の6つを掲げる)(2026年9月18日に原文を確認)
- 介護保険負担割合証の記載事項・有効期間および、2割・3割となる所得の基準については、市区町村の介護保険担当課にご確認ください。本記事には金額の基準を記載していません
