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コラム制度とお金

介護費用と医療費控除
— 施設と在宅で違う、対象になる範囲 —

介護にはお金がかかります。その負担を少しでも軽くする方法として、見落とされやすいのが医療費控除です。 「介護の費用は医療ではないから関係ない」と思われがちですが、じつは介護保険サービスの費用のうち、医療や療養上の世話に相当するとされる一定の費用は、医療費控除の対象になります。ただし、施設の種類やサービスの種類によって対象になる範囲が細かく分かれています。この記事では、その線引きを国税庁の公開情報にもとづいて社会福祉士が整理しました。
掲載日:2026.07.29|監修:社会福祉士・入居相談員
この記事の答え

介護保険サービスの費用のうち、医療や療養上の世話に相当するとされる一定の費用は、医療費控除の対象になります。範囲は施設やサービスの種類ごとに分かれ、特別養護老人ホームは自己負担額の 2 分の 1、介護老人保健施設・介護医療院は自己負担額が対象です。

在宅の場合は、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・通所リハビリテーション・短期入所療養介護がそれだけで対象になります。訪問介護(生活援助中心型を除く)・訪問入浴介護・通所介護は、これらの医療系サービスとあわせて利用したときに対象になります。 医療費控除の額は、支払った医療費から保険金などで補填される額を差し引き、そこから 10 万円(総所得金額等が 200 万円未満の方は総所得金額等の 5 パーセント)を引いて計算します。上限は 200 万円です。本記事は国税庁の公開情報を 2026 年 7 月に確認して作成しています。ご自身の申告についての判断は、お住まいの地域の税務署にご確認ください。
中川 優美(社会福祉士・入居相談員)
この記事の監修者

中川 優美Yumi Nakagawa

社会福祉士。ふれあい入居サポートセンター葛飾相談室にて、入居相談を担当。施設の費用や、負担を軽くする制度についてのご相談も多く、ご家族の状況に合わせて費用の見通しづくりをサポートしている。
社会福祉士(国家資格)ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室高齢者向け住まい紹介事業者届出 25-0881
編集ポリシー:本記事の税制の説明は、国税庁タックスアンサー No.1120・No.1119・No.1125・No.1127 を 2026 年 7 月に確認して作成しています。税制は改正されることがあり、また個別の事情によって扱いが異なります。当センターは税務の専門機関ではありませんので、実際の申告にあたっては税務署または税理士にご相談ください。本記事内の事例はイメージで、特定の個人を表すものではありません。

医療費控除の基本 — 控除額はどう計算するか

医療費控除は、1 年間に支払った医療費が一定の額を超えたときに、所得から差し引ける制度です。課税の対象になる所得から医療費控除額を差し引くため、所得税や翌年度の住民税が軽くなる場合があります。ここで気をつけたいのは、控除額がそのまま戻ってくるわけではない という点です。

計算のしかた

国税庁の説明によると、医療費控除の額は次のように計算します。

保険金などで補填される金額は差し引きますが、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きます。たとえば、ある入院に対して受け取った給付金がその入院費を上回ったとしても、上回った分をほかの医療費から差し引く必要はありません。

ここで誤解が生まれやすいのですが、これは 10 万円(または総所得金額等の 5 パーセント)を超えた部分が「所得から差し引かれる」 という仕組みで、その金額がそのまま返金されるわけではありません。年間の医療費が 10 万円を超えたら必ず還付がある、というものでもありません。実際にどれだけ税額が変わるかは、その方の所得や税率によって異なります。

なお、通常の医療費控除と セルフメディケーション税制(市販薬の控除)は選択制 で、同じ年に両方を使うことはできません。

誰の分をまとめられるか

対象になるのは、本人だけでなく、自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費です。離れて暮らす親でも、生活費を仕送りしているなど生計を一にしていると認められる場合は含められます。

家族の医療費をまとめて 1 人が申告できます。親と子が生計を一にしていて、子が実際に対象となる費用を支払った場合は、原則としてその子の医療費控除に含めます。逆に言えば、生計を一にしていない場合は含められませんので、この点はご注意ください。

また、対象になるのはその年の 1 月 1 日から 12 月 31 日までに実際に支払った医療費です。年内に請求が来ていても、支払いが翌年になった分はその年の対象になりません。

施設で暮らす場合の対象範囲

介護保険施設に入っている場合、施設に支払う費用の一部が医療費控除の対象になります。施設の種類によって、対象になる割合が違う点が最大のポイントです。

施設の種類医療費控除の対象になる額
指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)/指定地域密着型介護老人福祉施設自己負担額の 2 分の 1
介護老人保健施設(老健)自己負担額
介護医療院自己負担額

ここでいう「自己負担額」とは、施設サービスの対価(介護費・食費・居住費)として支払った額のことです。特別養護老人ホームの場合は、この合計額の 2 分の 1 が対象になります。老健と介護医療院は、その全額が対象です。

理美容代など日常生活で通常必要となる費用と、特別なサービス費用は、医療費控除の対象になりません。ただし、老健・介護医療院などで 治療上やむを得ず特別室を利用した場合の費用 は、対象になることがあります。

有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の場合

有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅は、介護保険施設ではありません。そのため、上の表のような「施設サービスの対価」という扱いにはなりません。

住まいの形によって、次のように考え方が分かれます。

  • 住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で、訪問看護などを個別に利用している場合。これらは次の章でお伝えする居宅サービスとしての区分にしたがって判断します
  • 介護付き有料老人ホームなどで提供される特定施設入居者生活介護の自己負担額。これは原則として医療費控除の対象になりません

いずれの場合も、家賃にあたる部分や食費は、医療費控除の対象になりません。

施設の種類による費用の違いは「費用を抑えて入れる老人ホームの探し方」でも整理しています。

在宅でサービスを使う場合の 3 つの区分

在宅で介護保険のサービスを使っている場合は、サービスの種類によって 3 つに分かれます。

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    ① それだけで対象になるもの(医療系サービス)の代表例
    訪問看護・介護予防訪問看護、訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導(医師などによる管理・指導)、通所リハビリテーション、短期入所療養介護。これらは医療系のサービスとして、単独で医療費控除の対象になります。このほか、介護予防サービスや、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護なども、提供される内容によって対象になる場合があります。
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    ② 医療系サービスとあわせて使うときだけ対象になるものの代表例
    訪問介護(生活援助中心型を除きます)、訪問入浴介護、通所介護など。これらは、①の医療系サービスとあわせて利用した場合に、療養上の世話などにあたるものとして対象になります。ここで大切なのは、単に同じ月にそれぞれ別に利用していればよいわけではなく、ケアプランのうえで医療系サービスとあわせて利用していることが必要だという点です。
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    ③ 代表的な対象外サービス
    訪問介護のうち生活援助中心型、福祉用具貸与、認知症対応型共同生活介護(認知症高齢者グループホーム)。これらは医療費控除の対象外とされています。対象外のサービスはこのほかにもあります。なお、介護福祉士などによる喀痰吸引等の費用については、一部が対象になる例外があります。

ご自身が使っているサービスがどれにあたるかは、事業者が発行する領収証を見るのがいちばん確実です。居宅サービス事業者などが発行する領収証には、基本的に医療費控除の対象となる金額が記載されることになっています。記載がない場合は、自分で計算せずに事業者へ対象額を確認してください。

このほか、対象になる介護サービスを利用するための交通費も、通常必要とされる範囲で対象になる場合があります。

在宅でどのサービスを組み合わせるかについては「介護保険サービスを使い始めるまでの流れ」もあわせてご覧ください。

確定申告の手続き

医療費控除を受けるには、確定申告が必要です。会社で年末調整を受けている方も、医療費控除は年末調整では処理されないため、ご自身で申告することになります。

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    1. 「医療費控除の明細書」を作ります
    領収証にもとづいて、医療費控除の明細書を作成し、確定申告書に添付します。加入している健康保険から届く「医療費通知」を添付する方法もあります。医療費通知には、被保険者の氏名・療養を受けた年月・療養を受けた方の氏名・医療機関等の名称・支払った額・保険者等の名称の記載が必要です。なお、介護サービスの費用が医療費通知に記載されていない場合は、施設や事業者の領収証にもとづいて明細書に記載します
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    2. 領収証は自宅で保管します
    明細書を作って申告する場合、領収証は提出せず、自宅で 5 年間保管します。税務署から求められたときに提示または提出できるようにしておくためです。必要な事項がすべて記載された医療費通知をそのまま使った部分については、原則として領収証の保存は不要とされています。ただし、金額や医療機関名などを自分で補ったり訂正したりした部分は、領収証の保存が必要になる場合があります
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    3. 迷うところは税務署に確認します
    どこまでが対象かの線引きは、状況によって判断が分かれることがあります。当センターは税務の専門機関ではありませんので、判断に迷う部分は、申告する方の住所地を所轄する税務署、国税局電話相談センター、または税理士にご確認ください。

見落としやすい点

高額介護サービス費の払い戻しは差し引きます

高額介護サービス費の払い戻しを受けた場合、その金額は支払った医療費から差し引きます。指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)で、施設サービス費にかかる自己負担額に対する払い戻しである場合は、払戻額の 2 分の 1を差し引くとされています。対象になる額を 2 分の 1 で計算するのと同じ考え方です。

ただし、払い戻しが複数のサービスにまたがっている場合や、どの費用に対する払い戻しか分からない場合は、単純に全額や半額を差し引かず、税務署にご確認ください。

高額介護サービス費そのものの仕組みは「介護費用を軽くする 2 つの制度」で解説しています。

おむつ代は条件つきで対象になることがあります

寝たきりで、治療のうえでおむつを使うことが必要な方のおむつ代は、医師が発行する「おむつ使用証明書」や、一定の要件を満たす主治医意見書の確認書類などがある場合に、医療費控除の対象になります。必要な書類は、お住まいの市区町村または税務署にご確認ください。

申告し忘れていた年の分

過去の分についても、あとから手続きできる場合があります。ここで気をつけたいのは、まだ申告していない年について行う「還付申告」と、すでに申告した年の内容を直す「更正の請求」とでは、手続きが異なる 点です。いずれも原則 5 年の期限がありますが、いつから数えるかが異なりますので、対象になる年を確かめたうえで税務署にご相談ください。

よくあるご質問

Q. 特別養護老人ホームの費用は医療費控除の対象になりますか。

A. 対象になります。国税庁の説明では、指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の場合、施設サービスの対価(介護費・食費・居住費)の自己負担額として支払った金額の 2 分の 1 に相当する金額が医療費控除の対象です。ただし、理美容代などの日常生活費や特別なサービス費用は対象外です。

Q. 老健や介護医療院では扱いが違うのですか。

A. 違います。介護老人保健施設(老健)と介護医療院は、施設サービスの対価(介護費・食費・居住費)の自己負担額として支払った金額が対象です。特別養護老人ホームのように 2 分の 1 にはなりません。同じ「施設に入っている」でも、施設の種類によって対象になる額が変わります。

Q. 有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の費用も対象ですか。

A. これらは介護保険施設ではないため、施設サービスの対価という扱いにはなりません。住宅型有料老人ホームや一般型のサービス付き高齢者向け住宅 で訪問看護などを個別に利用している場合は、居宅サービスとしての区分にしたがって対象になるかどうかを見ます。一方、介護付き有料老人ホームなどで提供される特定施設入居者生活介護の自己負担額は、原則として医療費控除の対象になりません。いずれの場合も、家賃にあたる部分や食費は対象外です。判断に迷うときは、お住まいの地域の税務署にご確認ください。

Q. デイサービスやホームヘルプは対象になりますか。

A. 単独では対象になりません。訪問介護(生活援助中心型を除く)・訪問入浴介護・通所介護などは、医療費控除の対象となる医療系サービスとあわせて利用した場合に対象になります。一方、訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・通所リハビリテーション・短期入所療養介護は、それだけで対象です。訪問介護の生活援助中心型・福祉用具貸与・グループホームは対象外とされています。

Q. 高額介護サービス費の払い戻しを受けた場合はどうなりますか。

A. 払い戻しを受けた金額は、支払った医療費から差し引きます。指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の場合は、払戻額の 2 分の 1 を差し引くとされています。医療費控除は「実際に負担した額」に対する制度ですので、あとから戻ってきた分は除いて計算します。

まとめ

介護の費用も、一定の範囲で医療費控除の対象になります。要点は次のとおりです。

  1. 施設では、特別養護老人ホームは自己負担額の 2 分の 1、老健・介護医療院は自己負担額が対象です。理美容代などの日常生活費は対象外です
  2. 在宅では、訪問看護などの医療系サービスは単独で対象、訪問介護(生活援助中心型を除く)などは医療系サービスとあわせて使うときに対象、生活援助中心型・福祉用具貸与・グループホームは対象外です
  3. 控除額は、支払った医療費から補填される額を差し引き、さらに 10 万円(総所得金額等が 200 万円未満の方は総所得金額等の 5 パーセント)を引いて計算します。その金額がそのまま戻ってくるわけではありません
  4. 生計を一にする家族の分をまとめられます。親と子が生計を一にしていて、子が実際に支払った費用は、原則として子の医療費控除に含めます
  5. 金額は、請求書の総額ではなく、領収証に記載された医療費控除対象額を使います

対象かどうかの判断は、事業者が発行する領収証の記載が手がかりになります。記載がないときは、自分で計算せず事業者に確認してください。費用の全体像を整理したいときは、お気軽にご相談ください。ふれあい入居サポートセンターでは、社会福祉士などの専門の相談員が無料でご相談を承っています。なお、税務の判断そのものについては税務署または税理士にご相談ください。

参考文献・公的資料

  1. 国税庁 タックスアンサー No.1120「医療費を支払ったとき(医療費控除)」(控除額の計算式・対象要件・補填される金額の扱い。2026 年 7 月閲覧)
  2. 国税庁 タックスアンサー No.1119「医療費控除に関する手続について」(医療費控除の明細書・医療費通知・領収証の 5 年間保管。2026 年 7 月閲覧)
  3. 国税庁 タックスアンサー No.1125「介護保険制度下の施設サービスの対価に係る医療費控除」(特養は 2 分の 1、老健・介護医療院は自己負担額。日常生活費・特別なサービス費用は対象外。2026 年 7 月閲覧)
  4. 国税庁 タックスアンサー No.1127「医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」(対象サービス・併用時のみ対象のサービス・対象外サービス・領収証の記載。2026 年 7 月閲覧)