歩き回る行動(徘徊)があっても、入居できる施設はあります。施設の種類だけで決めず、「認知症のある方をどう支えているか」という体制で選ぶことが大切です。

中川 優美Yumi Nakagawa
徘徊があっても入居できる施設はある
まずお伝えしたいのは、歩き回る行動があるからといって、施設探しをあきらめる必要はないということです。認知症のある方の暮らしを専門に支える施設は各地にあり、実際に多くの方が入居して生活されています。ご相談の場面でも、「歩き回る状態でも受け入れてくれるのだろうか」という不安から始まり、無事に住まいが決まっていくご家族に何度もお会いしてきました。
ただし、どの施設でも同じように対応できるわけではありません。施設のタイプによって、認知症ケアの慣れや、夜間の人の手、医療との連携の度合いが違います。おおまかな傾向を先にまとめると、次のようになります。
| 施設のタイプ | 認知症ケアの傾向 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 認知症のグループホーム | 認知症の方だけの少人数の暮らし。ケアに慣れたスタッフ | 認知症が中心で、医療的な処置は多くない場合 |
| 介護付き有料老人ホーム | 夜間を含め職員が配置される。認知症の受け入れ体制のある施設が多い | 施設による介護を受けながら、看護職員の配置時間や医療機関との連携を確認したい場合 |
| 特別養護老人ホーム(特養) | 費用を抑えやすい公的施設。認知症の入居者も多い | 費用を抑えたく、要介護度が高めの場合(待機期間に留意) |
それぞれの詳しい違いは、このあと順番に見ていきます。どのタイプが合うかは、親御さんの状態やご希望、費用によって変わりますので、比較しながら読み進めてみてください。
そもそも「徘徊」とは — 理由のある行動
歩き回る行動は、認知症の「周辺症状」と呼ばれるもののひとつです。医学的には BPSD(認知症の行動・心理症状)に含まれ、記憶障害などの中核的な症状を背景に、その方の性格や体調、まわりの環境によって現れます。
認知症のケアでは、行動だけを止めようとするのではなく、体の状態・これまでの暮らし・ご本人の言葉・まわりの環境などから、その行動の理由を探っていきます。理由が見えてくると、対応の糸口も見つかりやすくなります。
「徘徊」という言葉は目的もなくさまよっているような印象を与えますが、実際には本人なりの理由があることが多いとされています。「家に帰らなければ」「仕事に行かなければ」「探し物がある」といった思いから動いていることもあり、不安や落ち着かなさが背景にあるとも考えられています。近年は、こうした受け止め方から「ひとり歩き」と呼ぶ動きもあります。本記事では情報を探しやすいように「徘徊」という言葉も使いますが、ご本人を責める行動ではないという前提でお読みいただければと思います。
在宅で限界を感じやすいのは自然なこと
歩き回る行動があると、ご家族は片時も目を離せなくなりがちです。とくに夜間に起きて動くようになると、介護されるご家族が眠れなくなり、心身ともに疲れてしまいます。外に出て行って戻れなくなる心配や、転んでけがをする心配もあります。
こうした状況で「在宅ではもう難しい」と感じるのは、決してご家族の力不足ではありません。24 時間ひとりで、あるいはご家族だけで見守り続けるのは、そもそも無理のある前提です。ご家族だけで抱え込まず、施設という選択肢を考えることは、親御さんにとってもご家族にとっても現実的な道のひとつです。
なお、施設に入ることで認知症そのものが治るわけではありません。ただし、ご本人に合った環境や関わり、体の状態の調整によって、不安や行動が落ち着くことはあります。施設に期待できるのは、専門のスタッフのもとで、ご本人が少しでも落ち着いて安心して過ごせる環境です。
受け入れやすい施設のタイプ
ここでは、認知症のある方の受け入れに慣れている代表的な施設を紹介します。それぞれに得意なことと、確かめておきたい点があります。
認知症のグループホーム
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は、認知症の診断を受けた方が 1 ユニット 5〜9 人 の少人数で共同生活を送る、介護保険の地域密着型サービスです。要支援 2、または要介護 1〜5 で、認知症の診断を受けている方が対象になります。原則として、施設のある市区町村に住民票がある方が対象ですが、実際の利用の条件は市区町村と事業所にご確認ください。あわせて、共同で生活を送ることができる状態かどうか も施設が確認します。
少人数で顔なじみの関係を作りやすく、料理や洗濯など、できることを一緒に行いながら暮らします。管理者や計画作成担当者には、認知症介護に関する経験や研修の要件 が定められています。介護職員全体の資格・経験や、施設の中で行っている研修の内容は、事業所ごとに確認してください。歩き回る行動についても、頭ごなしに止めるのではなく、その方の気持ちに沿って対応することを大切にしている施設が多い傾向にあります。
一方で、地域密着型サービスのため、原則としてその施設がある市町村に住んでいる方が対象になります。また、看護師が常に施設にいるとは限らず、医療的な処置が多く必要な場合には、対応が難しいこともあります。医療面での見守りがどのくらい必要かを踏まえて考えるとよいでしょう。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設で、夜間を含めて職員が配置され、施設の介護サービスとして必要な介助が行われます。ただし、夜勤の人数や見回りの方法は施設ごとに異なりますので、具体的に確かめてください。認知症の方の受け入れ体制を整えているところが多く、認知症のフロアやユニットを設けている施設もあります。
介護と、ある程度の医療的な見守りをまとめて任せやすいのが特徴です。歩き回る行動への対応も、夜間の人の手を含めて施設ごとに体制が異なりますので、後の章の見学ポイントで具体的に確かめることが大切です。
費用は施設によって幅が大きく、入居時にまとまったお金(入居一時金)が必要なところから、0 円のところまでさまざまです。月額も施設によって差がありますので、予算に合うかどうかを早めに確認しておくと安心です。
特別養護老人ホーム(特養)
特別養護老人ホーム(特養)は、費用を抑えやすい、介護保険制度上の施設です。原則として要介護 3 以上の方が対象ですが、要介護 1・2 でも、認知症の症状やご家族の支援の状況などにより在宅での生活が難しい事情がある場合は、特例入所の対象として検討されることがあります。認知症のある方も多く生活しており、看取りまで対応している施設もあります。
費用が抑えやすい分、入居を希望する方が多く、申し込んでもすぐに入れないことがあります。特養に申し込んでいる方は全国で約 20.6 万人(2025 年 4 月 1 日時点、厚生労働省)とされていますが、この人数の全員が、その時点ですぐに入所を必要としているわけではありません。入所は空いている居室の状況と入所の必要性による優先順位で決まるため、いつ入れるかを予測しにくい のが実際のところです。急ぎで住まいを決めたい場合は、特養だけに絞らず、ほかのタイプも並行して探しておくと現実的です。
そのほかの選び方
このほかにも、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で、訪問看護などと連携しながら認知症の方を受け入れているところがあります。また、認知症に加えて長期の療養や一定の医療管理が必要な場合には、介護医療院が候補になることがあります。医療依存度が高い方の施設選びは、別記事「医療依存度が高い親の入居先」で詳しくまとめています。
タイプの名前だけで判断せず、「その施設が、歩き回る行動のある方をどう支えているか」を一つずつ確かめていくことが、結果的にいちばんの近道になります。特養と介護付き有料老人ホームの違いは、別記事「特養と介護付き有料老人ホームの違い」でも整理しています。
見学で確かめたい「認知症対応」の 5 つのポイント
同じタイプの施設でも、認知症のある方への対応は施設ごとに大きく違います。見学のときに、次の 5 点を具体的に尋ねてみるとよいでしょう。老人ホームの見学で確かめたい点全般については、別記事「老人ホームの見学で社会福祉士が必ず見る 12 のチェック」もあわせてご覧ください。
1. 出入口や動線の工夫
歩き回る行動のある方にとって、外に出て戻れなくなることは大きな心配ごとです。防犯や安全の管理のために出入口を施錠している施設もありますが、それだけに頼らず、さりげない声かけや見守りで安全を保つ工夫があるかを尋ねてみましょう。外に出たいという希望に、どう対応しているか を聞くと、その施設の考え方が見えてきます。館内を自由に歩けるよう、廊下や中庭の通り道を工夫している施設もあります。
2. 見守りの機器の使い方
離れた居室の様子を知らせるセンサーや、外出時に居場所が分かる機器(GPS など)を取り入れている施設もあります。どんな機器を、どのような考え方で使っているのかを聞くと、その施設が見守りをどれだけ大切にしているかが見えてきます。
とくに居場所が分かる機器については、ご本人の安全とプライバシーの両方に配慮し、必要性を一人ひとり個別に検討しているか を確かめてください。「全員に一律で付けています」という説明の場合は、その理由も聞いてみるとよいでしょう。
3. 夜間の人の手
歩き回る行動は、夜間に出やすいこともあります。施設全体の夜勤の人数だけでなく、次の点まで聞いておくと、実際の様子がつかめます。
- 1 つのフロア、または 1 ユニットあたりの夜勤の人数
- 夜勤の職員が担当する入居者の人数
- 休憩をとる時間帯の体制
- 見回りの頻度
- 外へ出ようとされたときの対応
看護職員についても、常駐しているのか、夜間は不在で電話で連絡する体制(オンコール)なのかを確かめます。オンコールの場合は、誰に連絡するのか、電話での助言だけなのか、必要なときには訪問してもらえるのか まで聞いておくと安心です。
4. 身体を縛らないための取り組み
介護保険の施設や事業所には、ご本人の生命や身体を守るためにやむを得ない場合を除いて、身体を縛るなどの行動を制限しないことが運営の基準で求められています(身体拘束の原則禁止)。安全のためといって安易に縛ることは、原則として認められていません。だからこそ、施設が「縛らずに、どうやって安全と自由な暮らしを両立させているか」の工夫を聞くことが、その施設のケアの質を知る手がかりになります。
5. 状態が変わっても住み続けられるか
認知症は年月とともに状態が変わっていきます。歩き回る行動が強くなったときや、医療的なケアが必要になったときに、住み続けられるのか、それとも住み替えが必要になるのかは、施設によって異なります。ここで大切なのは、「歩き回る行動が強くなったら退去」といった 抽象的な説明で終わらせず、契約上の具体的な条件を重要事項説明書などで確かめる ことです。どんなときに退去をお願いすることがあるのか、その場合にどんな相談に乗ってもらえるのかを、入居前に書面で確かめておきましょう。退去を求められたときの考え方は、別記事「老人ホームから退去を求められたら」でも解説しています。
ケース別の考え方
在宅で見守りが限界に近づいている場合
在宅介護を続けるなかで歩き回る行動が増え、ご家族が眠れない、目が離せないという状況であれば、まずは担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。デイサービスやショートステイを組み合わせて在宅を続ける方法もありますし、そのうえで施設という選択肢を一緒に整理することもできます。ご家族だけで結論を出そうとせず、支える人を増やすところから始めて大丈夫です。
入院や退院をきっかけに、認知症が進んだと感じた場合
入院中に認知症の症状が進んだように見えることもあります。ここで大切なのは、急に混乱や落ち着かなさが強くなった場合、認知症の進行だけと決めつけない ことです。せん妄や体の病気、薬の影響がないかを、必ず医師に確認してください。原因が別にあれば、対応も変わってきます。
退院までの時間が限られているときは、病院の相談員(医療ソーシャルワーカー)に、認知症の方の受け入れ先を探していることを早めに伝えておきましょう。あわせて、認知症のケアに慣れた施設を紹介してくれる無料の相談窓口を使うと、限られた時間でも候補を絞りやすくなります。
親御さんが施設入居を強く拒んでいる場合
ご本人が「家にいたい」と強く希望されることもあります。無理に説得しようとすると、かえって関係がこじれてしまうこともあります。
まず、ご本人が何を不安に感じているのか、その理由を確かめる ところから始めてみてください。そのうえで、ご本人が信頼している方から、分かりやすく説明してもらう と、受け止め方が変わることがあります。短時間の見学や体験での利用も、ご本人の同意と体調に配慮しながら検討できます。
伝え方の工夫としては、ご本人が理解しやすい言葉や写真を使い、時間や場面を変えて繰り返し確認する ことが役に立ちます。一度で決めようとせず、何度か話す前提で進めると、ご本人の気持ちも整理されやすくなります。どう進めればよいか迷うときは、相談窓口でご一緒に考えることができます。
費用の目安
費用は、施設のタイプや地域、部屋のつくりによって幅があります。ここでは、おおまかな目安をお伝えします。
特養は、費用を抑えやすいのが特徴です。月におよそ 10〜14 万円程度が一つの目安とされていますが、これは 一定の要介護度・所得区分・居室のタイプを想定した参考例で、すべての方に当てはまる金額ではありません(2026 年時点、厚生労働省の資料や健康長寿ネットの例をもとにした概算)。
費用の軽減については、特養などの対象施設では負担限度額認定 を使える場合があります。また、介護サービスの自己負担については、施設の類型を問わず高額介護サービス費 の対象になる場合があります。
グループホームや介護付き有料老人ホームは、施設ごとの差が大きく、一律の金額をお示しするのが難しいのが実情です。とくに介護付き有料老人ホームは、入居一時金の有無や月額の設定が施設によって大きく異なります。気になる施設が見つかったら、月額の内訳と、退去するときのお金の扱いを、早めに確認しておくと安心です。
なお、所得や資産に応じて、施設での食費や部屋代の負担を軽くする制度や、介護費の自己負担に上限を設ける制度があります。詳しくは、別記事「高額介護サービス費と負担限度額認定」で解説しています。費用の見通しづくりは、無料の相談窓口でもご一緒に整理できます。
よくあるご質問
Q. 歩き回る行動が強いと、施設に断られてしまいますか。
A. 施設や、そのときの状況によって異なります。歩き回る行動があるというだけで、一律に入居できないわけではありません。一方で、夜間の人の手が限られる施設や、医療的なケアが多く必要な場合には、対応が難しいこともあります。受け入れの可否は、施設ごとの入居前のアセスメントで判断されます。複数の施設を並行して当たっておくと、選択肢が広がります。
Q. 施設では、鍵をかけて閉じ込めてしまうのですか。
A. 施設では、防犯や安全の管理のために出入口を施錠している場合があります。ただし、ご本人の行動を一律に制限することは避けるべきとされており、緊急でやむを得ない場合を除いて、身体を固定したり行動を制限したりすることに頼らない支援が求められています。認知症ケアに力を入れている施設ほど、そうした方法に頼らずに安全と自由な暮らしを両立させる工夫をしています。見学のときに、外に出たいという希望にどう対応しているかを、具体的に聞いてみるとよいでしょう。
Q. グループホームと介護付き有料老人ホームは、どちらがよいですか。
A. どちらがよいかは、親御さんの状態やご希望によります。認知症が中心で医療的な処置が多くなければ、少人数で認知症ケアに慣れたグループホームが合うことがあります。介護に加えて医療的な見守りもまとめて任せたい場合は、介護付き有料老人ホームが候補になります。費用や立地も含めて、比較して選ぶことをおすすめします。
Q. 歩いて外に出て、警察に保護されたことがあります。それでも入居できますか。
A. 過去にそうした経験があっても、それだけで入居できないと決まるわけではありません。むしろ、そうした経緯を正直に施設へ伝えることで、施設側も見守りの体制を具体的に考えやすくなります。隠さずに共有することが、結果的にご本人の安全につながります。
Q. 費用はどのくらいを見ておけばよいですか。
A. 特別養護老人ホームは月におよそ 10〜14 万円程度が一つの目安ですが、グループホームや介護付き有料老人ホームは施設ごとの差が大きく、一律には言えません。所得に応じて負担を軽くする制度もあります。気になる施設の月額の内訳を確かめたうえで、無料の相談窓口で見通しを整理すると分かりやすくなります。
まとめ
歩き回る行動のある親御さんの施設探しは、ご家族にとって心細いものです。ですが、認知症のある方を専門に支える施設はあり、入居できる道は残されています。最後に要点を整理します。
- 施設の種類だけで決めず、「認知症のある方をどう支えているか」で選びます
- 見学では、出入口の見守り、夜間の人の手、身体を縛らない工夫、状態が変わったときの対応を確かめます
- ご家族だけで抱え込まず、ケアマネジャーや地域包括支援センター、無料の相談窓口を頼ります
施設選びは情報が多く、ご家族だけで整理しきれないことも少なくありません。どこから手をつければよいか迷われたときは、お気軽にご相談ください。ふれあい入居サポートセンターでは、認知症のある方の施設探しについても、社会福祉士などの専門の相談員が無料でご相談を承っています。
参考文献・公的資料
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」(2026年7月閲覧)
- 厚生労働省「特別養護老人ホームの入所申込者の状況」(2025年4月1日時点、待機者 約20.6万人)
- 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「施設サービス」(2026年7月閲覧)
- 身体拘束の原則禁止は介護保険の運営基準に基づく一般的な記述です。受け入れの可否・体制・費用は施設ごとに異なります。具体的な内容は各施設・主治医・施設の嘱託医にご確認ください。
