つまずきやすいのは「介護扶助が使える事業所かどうか」「居住費・食費の扱いが施設類型で違うこと」「福祉事務所の確認を取る順番」の 3 点です。

中川 優美Yumi Nakagawa
つまずきやすい 3 点
生活保護を受給されている方の入居相談で、実務がつまずきやすいのは次の 3 点です。先に押さえておくと、やり直しを避けられます。
- 介護扶助が使える事業所かどうか — 施設が受け入れていても、そこで使う外部事業所が指定を受けているかは別
- 居住費・食費の扱いが施設類型で分かれる — 介護保険施設と有料老人ホーム等では考え方が違う
- 福祉事務所の確認を取る順番 — 契約を決めてから確認すると、費用面で通らずやり直しになる
以下、順に見ていきます。
介護扶助と介護保険の関係
生活保護には 8 種類の扶助があり、そのひとつが 介護扶助です(生活保護法 第 11 条)。介護扶助は、居宅介護・福祉用具・住宅改修・施設介護・介護予防などの範囲で行われます(同法 第 15 条の 2)。
前提として押さえておきたいのが、保護の補足性の考え方です。生活保護法 第 4 条第 2 項は、他の法律に定める扶助は保護に優先して行われると定めています。介護保険が使えるなら介護保険が先で、介護扶助はその補完という関係になります。
65 歳以上の場合
介護保険の第 1 号被保険者ですので、保険給付が行われ、残る利用者負担分が介護扶助でまかなわれます。介護扶助は現物給付で、費用は直接介護事業者へ支払われるため、原則としてご本人の自己負担はありません。
40〜64 歳(みなし 2 号)の場合
ここが見落とされやすいところです。生活保護を受給している方は国民健康保険の適用から除外されるため、40 歳から 64 歳で他の医療保険に加入していない場合、介護保険の第 2 号被保険者になりません。
この場合、いわゆる **「みなし 2 号」**として扱われ、介護費用の全額が介護扶助の対象になります。保険給付が入らないぶん、扶助の範囲や事業所の指定の有無が、より直接に効いてきます。
なお、40 歳から 64 歳の方が介護サービスを利用するには、介護保険の特定疾病に該当するかどうかの判断も関わります。該当するか、障害福祉の制度を使えるかも含めて個別に検討されますので、この年齢層のケースは早めに福祉事務所へ相談してください。
指定介護機関の確認
介護扶助は、原則として生活保護法にもとづく指定を受けた介護機関で利用します(生活保護法 第 54 条の 2)。
実務でつまずくのはここです。施設そのものが生活保護受給者を受け入れていても、そこで利用する外部の事業所が指定を受けているかは別の話になります。
とくに次のケースでは、確認が必要です。
- 住宅型有料老人ホーム・一般型サービス付き高齢者向け住宅に入り、外部の訪問介護・通所介護を利用する場合 → 施設の受け入れ可否とは別に、その事業所が指定介護機関かを確認する
- 併設の事業所を使う前提になっている場合 → 併設事業所の指定の有無と、他の事業所を選べるかもあわせて確認する
介護保険施設(特養・老健・介護医療院)については、介護保険法上の指定・許可があったときに指定を受けたものとみなされる扱いが定められています(同条第 2 項)。ただし例外もありますので、個別の施設については福祉事務所に確認してください。
施設類型で分かれる費用の扱い
ここを一括に考えると、費用の見通しを誤ります。介護サービス費は介護扶助で共通ですが、居住費・食費・日常生活費の扱いは施設の種類によって分かれます。
| 介護保険施設(特養・老健・介護医療院) | 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅 | |
|---|---|---|
| 介護サービス費 | 介護扶助(65 歳以上は保険給付+介護扶助) | 同左 |
| 食費・居住費 | 負担限度額認定により軽減。生活保護受給者は第 1 段階 | 認定の対象外。契約上の 家賃相当額が住宅扶助の対象として認められる場合がある |
| 管理費・共益費・生活支援費 | — | 住宅扶助の対象にならないことがある。福祉事務所の確認が必要 |
| 日常生活費(食費・日用品費・光熱水費) | 上記の負担限度額の範囲 | 本人の収入と生活扶助などの範囲で支払う。施設の設定額すべてが別途支給されるわけではない |
負担限度額認定について、実務で押さえておきたい点が 2 つあります。
- 第 1 段階に該当するからといって自動的に適用されるわけではありません。 原則として 市区町村への申請と認定証の交付が必要です
- 具体的な額は 施設の種類・居室の種類・利用の形態によって異なります(同じ従来型個室でも、特養と老健・介護医療院では額が違います)
段階ごとの額は「介護費用を軽くする 2 つの制度|高額介護サービス費と負担限度額認定」にまとめています。基準線は年金額の改定に連動して毎年 8 月に見直されることがあるため、金額はそちらでご確認ください。
福祉事務所との進め方
原則として、早い段階でケースワーカーに相談し、施設探しと費用の確認を並行して進めるのが現実的です。
とくに大切なのは、契約・入居を決める前に、候補施設の費用の内訳について福祉事務所の確認を受けることです。ここを飛ばすと、決まりかけた話が費用面で通らず、やり直しになります。
確認していただきたい項目は次のとおりです。
- 月額費用の内訳(どの費目がどの扶助の対象になるか)
- 月額だけでなく、一時的な費用(敷金・保証料・転居費・家具や寝具・退去時の費用)
- 介護保険外のサービス費がいくらあるか
- 費用が住宅扶助などの上限を超えた場合の取り扱い
打診の組み立て方
打診できる施設が限られるぶん、順番の組み立てが効きます。紹介事業者に依頼される場合も、次の情報があると打診が早く進みます。
- 生活保護を受給していること(または申請を検討していること)を、最初に伝える
- 年齢(40〜64 歳の場合は、みなし 2 号かどうかで扱いが変わるため)
- 担当の福祉事務所とケースワーカー名、相談済みかどうか
- 医療処置の有無と内容
- 希望エリアと、実施機関の特例について確認済みかどうか
依頼のしかた全般は、別記事「紹介事業者に入居相談を依頼するとき|伝える情報の型」にまとめています。
なお、身元引受人・連帯保証人を求められて入居が進まないケースもあります。ご家族がいないという理由だけで一律にあきらめる必要はありませんが、施設ごとに契約の条件が異なりますので、代わりの方法があるかを早めに確認しておいてください。
よくあるご質問
Q. 生活保護を受給している方の介護サービス費は、どう扱われますか。
A. 65 歳以上の方は介護保険の第 1 号被保険者ですので、保険給付が行われ、残る利用者負担分が介護扶助でまかなわれます。40 歳から 64 歳の方で医療保険に加入していない場合は介護保険の被保険者にならず、いわゆる **「みなし 2 号」**として介護費用の全額が介護扶助の対象になります。いずれも介護扶助は現物給付で、原則としてご本人の自己負担はありません。ただし介護保険外のサービスや日常生活費は別に確認が必要です。
Q. 施設を探すとき、福祉事務所への相談はどの段階で必要ですか。
A. 早い段階で相談し、施設探しと費用の確認を並行して進めるのが現実的です。とくに重要なのは、契約・入居を決める前に、候補施設の費用の内訳について福祉事務所の確認を受けることです。どの費用がどの扶助の対象になり、どこまで認められるかは、施設の種類やご本人の収入をふまえて福祉事務所が個別に決定します。順番を誤ると、決まりかけた話が費用面で通らずやり直しになります。
Q. 介護扶助はどの事業所でも使えますか。
A. 使えません。介護扶助は原則として、生活保護法にもとづく指定を受けた介護機関で利用します(生活保護法 第 54 条の 2)。施設そのものが生活保護受給者を受け入れていても、そこで利用する外部の訪問介護事業所などが指定を受けているかは別の話です。住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅を検討する場合は、この点をあわせて確認してください。
Q. 居住費や食費の扱いは、施設の種類によって違いますか。
A. 違います。特養などの介護保険施設では、負担限度額認定により食費・居住費が軽減され、生活保護を受給している方は第 1 段階にあたります(適用には市区町村への申請が必要です)。一方、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、契約上の家賃相当額が住宅扶助の対象として認められる場合がありますが、管理費・共益費・生活支援費などは対象にならないことがあります。施設の種類をまたいで一括に考えないことが大切です。
Q. 他の市区町村の施設に入る場合、保護の実施機関は変わりますか。
A. 生活保護法には 保護の実施機関についての特例があり、特定施設に入居している方や介護老人福祉施設に入所している方などについては、引き続き従前の実施機関が担当する扱いが定められています(生活保護法 第 84 条の 3)。ただし施設の種類によって扱いが異なりますので、エリアをまたぐ検討をされる場合は、必ず担当のケースワーカーに確認してください。
まとめ
生活保護を受給されている方の入居相談で、押さえておきたい実務を整理しました。
- 介護保険が優先し、介護扶助が補完する関係です(生活保護法 第 4 条第 2 項)。65 歳以上は保険給付+介護扶助、40〜64 歳で医療保険未加入の方は みなし 2 号として全額が介護扶助
- 介護扶助は指定を受けた介護機関で利用します(同法 第 54 条の 2)。施設の受け入れ可否と、外部事業所の指定は 別の確認です
- 居住費・食費の扱いは施設類型で分かれます。介護保険施設は負担限度額認定、有料老人ホーム等は住宅扶助・生活扶助の考え方になります
- 負担限度額認定は 自動適用ではなく、市区町村への申請が必要です
- 契約・入居を決める前に、費用の内訳について福祉事務所の確認を受けてください。月額だけでなく一時的な費用も含めて
- エリアをまたぐ場合は、実施機関の特例(同法 第 84 条の 3)の扱いをケースワーカーに確認します
打診先が限られるケースこそ、受け入れ実績のある窓口にご相談ください。ふれあい入居サポートセンター(葛飾相談室)では、ケアマネジャー様からのご依頼を承っています。
参考文献・公的資料
- 生活保護法 第4条(保護の補足性)、第11条(種類)、第15条の2(介護扶助)、第54条の2(介護機関の指定等)、第84条の3(保護の実施機関についての特例)(e-Gov 法令検索、2026年8月に条文を確認)
- 厚生労働省「生活保護制度」(2026年8月閲覧)
- 厚生労働省 介護保険最新情報 Vol.1280・Vol.1506(負担限度額の所得段階と額。2026年8月閲覧)
- ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室 入居相談の実務
- 生活保護の運用は自治体・福祉事務所によって幅があります。個別の可否を判断できるのは福祉事務所です。
