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コラムケアマネジャー向け認知症

認知症で複数の施設に断られたとき
— 次の一手を入居相談員が整理 —

3 件、4 件と打診しても断られ続ける。ご家族からは「まだ決まらないのか」と問われ、在宅の限界は近づいている。認知症のある利用者の施設探しでは、こうした行き詰まりが起こります。 同じリストを当たり直しても、結果は変わりにくいものです。この記事では、打診先を増やす前にやると効くことから、候補の広げ方、間をつなぐ方法までを順に整理しました。
掲載日:2026.08.08|監修:社会福祉士・入居相談員
この記事の要点

打診先を増やす前に、「断られた理由を分けて聞く」「伝え方を変える」「状態そのものを見直す」の 3 つをやると、同じ候補でも結果が変わることがあります。

「徘徊」「暴言」といった言葉でまとめて伝えると、施設は最も重い状態を想定して判断せざるを得ません。どんな場面で・どのくらいの頻度で起き、どう対応すると落ち着くかまで伝えると、施設が自分たちの体制で対応できるかを具体的に検討できます。また、急に症状が強くなっている場合は、認知症の進行だけと決めつけないことが大切です。せん妄・身体の疾患・薬の影響がないかを主治医に確認すると、状態が落ち着いて受け入れの可否が変わることがあります。
中川 優美(社会福祉士・入居相談員)
この記事の監修者

中川 優美Yumi Nakagawa

社会福祉士。ふれあい入居サポートセンター葛飾相談室にて、入居相談を担当。認知症のある方の入居相談も日常的にお受けしており、施設への打診と受け入れ条件の確認を担っている。
社会福祉士(国家資格)ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室高齢者向け住まい紹介事業者届出 25-0881
編集ポリシー:本記事は、当センターが居宅介護支援事業所のケアマネジャーからお受けしている入居相談の実務と、厚生労働省の公開情報(施設類型・特例入所の考え方)にもとづいて執筆しています。医療的な判断にあたる内容は記載しておらず、主治医の医学的な見解を前提に整理しています。受け入れの可否は施設ごとの入居前アセスメントで判断されます。本記事内の事例はイメージで、特定の個人を表すものではありません。

断られる理由は 4 つに分かれる

認知症を理由に断られたと感じても、施設側の事情は 1 つではありません。おおまかに次の 4 つに分かれます。

理由施設側で起きていること
夜間の体制夜勤の人数が限られ、夜間に見守りが必要な方を受け入れる余力がない
ほかの入居者との関係現在の入居者の構成や、フロアの状況から難しいと判断された
医療面併存する疾患や服薬の管理に、看護体制が追いつかない
空室受け入れ自体は可能だが、条件に合う居室が空いていない

この 4 つは、次の一手がまったく違います。 夜間の体制なら夜勤配置の厚い施設へ、空室なら時期をずらすか別の施設へ、というように分岐します。

だからこそ、理由を分けずに「認知症だから断られた」とまとめてしまうと、次の打診も同じ結果になりやすいのです。

まず、断られた理由を分けて聞く

「今回は難しいです」で終わらせず、どれにあたるのかを尋ねてください。 尋ねれば具体的に返ってくることが多くあります。

聞き方の例です。

「差し支えなければ、どのあたりが難しかったか教えていただけますか。夜間の体制でしょうか、それともほかの入居者様との関係や、医療面でしょうか」

理由を尋ねることは失礼にあたりません。むしろ、次に同じ理由で断られるのを避けるために必要な確認です。施設側も、条件が合えば受け入れたいと考えていることがほとんどです。

伝え方を変える

打診の内容を変えずに件数だけ増やしても、結果は変わりにくいものです。同じ方の同じ状態でも、伝え方で受け止められ方は変わります。

言葉でまとめない

「徘徊があります」「暴言があります」という伝え方をすると、施設側は 最も重い状態を想定して判断せざるを得ません。想像の余地が大きいほど、判断は慎重な方向に傾きます。

次のように、場面と頻度で伝えてください。

✕ まとめた伝え方○ 場面と頻度で伝える
徘徊があります夕方 16 時ごろに玄関へ向かわれることが週に 2〜3 回。「家に帰る」とおっしゃる。声をかけてお茶に誘うと座られることが多い
暴言があります入浴の声かけのときに強い口調になることがある。同性の職員が対応し、時間をずらすと入られる
夜間不穏21 時ごろに起きて廊下に出られることが週 1〜2 回。トイレの誘導で落ち着かれる

「落ち着く対応」まで伝える

上の表の右側で大切なのは、どう対応すると落ち着くかまで書かれている点です。

施設が知りたいのは「困った行動があるかどうか」ではなく、**「自分たちの体制で対応できるか」**です。すでに有効な対応が分かっているなら、それは施設にとって受け入れやすくなる材料になります。

在宅で成り立っていた条件も伝える

これまで在宅で暮らせていたのであれば、それを支えていた条件があります。デイの利用日、家族の関わり方、なじみの環境、生活のリズム。これらを共有すると、施設側が 入居後の組み立てを想像できます

状態そのものを見直す

ここは見落とされやすい視点です。

急に症状が強くなっている場合は、認知症の進行だけと決めつけないでください。

入院や環境の変化がきっかけで状態が変わっている場合も同様です。いま見えている状態が、その方の定常状態とは限りません。 落ち着くのを待ってから打診し直したほうが、結果として早いこともあります。

打診先の広げ方

理由を確認し、伝え方を整えたうえで、候補を広げます。

  • 認知症グループホーム — 少人数での共同生活。要支援 2・要介護 1 以上で認知症のある方が対象です。原則として、施設のある市区町村に住民票がある方が対象になります
  • 認知症の受け入れ体制がある介護付き有料老人ホーム — 認知症のフロアやユニットを設けている施設もあります。夜間を含む職員配置があり、施設の介護サービスとして対応します
  • 認知症に対応する住宅型有料老人ホーム・サ高住 — 訪問看護などと連携して受け入れている施設があります。ただし利用できる外部サービスは施設の類型によって異なります
  • 特別養護老人ホームの特例入所 — 原則は要介護 3 以上ですが、要介護 1・2 でも、認知症の症状やご家族の支援の状況などにより在宅での生活が難しいやむを得ない事情がある場合は、特例入所の対象として検討されることがあります
  • 介護医療院 — 認知症に加えて、長期の療養のための医療と介護を継続して必要とする場合の候補です

類型の名前だけで絞り込まないことが大切です。同じ「グループホーム」でも受け入れの幅は事業所ごとに違い、「住宅型」でも重度の方を長く支えている施設があります。

間をつなぐ方法

受け入れ先がすぐに決まらないとき、間をつなぐ選択肢があります。

  • ショートステイ — 在宅を続けながら、打診を並行して進めます
  • 医療機関での療養 — 状態が不安定な場合は、落ち着いてから改めて探す組み立て
  • 一時的な入居 — 受け入れ可能な施設にいったん入り、その後に本命を探す方法

一時的な入居を検討する場合は、ご本人への負担・費用・契約の期間・退去の条件・次の住まいへ移れる見通しを確認してください。環境の変化を短期間に繰り返すことは、ご本人にとって負担になります。

よくあるご質問

Q. 断られた理由を、施設はどこまで教えてくれますか。

A. 尋ねれば具体的に返ってくることが多くあります。「今回は難しいです」で終わらせず、夜間の体制なのか、ほかの入居者との関係なのか、医療面なのか、空室の問題なのかを分けて確認してください。理由が分かれば、次の打診先の選び方が変わります。理由を尋ねること自体は失礼にあたりません。むしろ、次に同じ理由で断られるのを避けるために必要な確認です。

Q. 伝え方を変えるだけで、結果が変わることはありますか。

A. あります。「徘徊」「暴言」といった言葉でまとめて伝えると、施設側は 最も重い状態を想定して判断せざるを得ません。どんな場面で、どのくらいの頻度で起きているか、そのときどう対応すると落ち着くかまで伝えると、施設が自分たちの体制で対応できるかを具体的に検討できます。同じ方の同じ状態でも、伝え方で受け止められ方は変わります。

Q. 断られ続けるとき、状態そのものを見直す視点は必要ですか。

A. 必要です。急に症状が強くなっている場合は、認知症の進行だけと決めつけず、せん妄・身体の疾患・薬の影響・環境の変化がないかを主治医に確認してください。原因が別にあれば、そちらへの対応で状態が落ち着き、受け入れの可否が変わることがあります。施設探しを続ける前に、一度立ち止まる価値があります。

Q. 打診先はどう広げればよいですか。

A. 認知症グループホームのほか、認知症の受け入れ体制を持つ介護付き有料老人ホーム、認知症対応のフロアやユニットを設けている施設が候補になります。要介護 1・2 の方でも、認知症の症状やご家族の支援の状況などにより在宅での生活が難しい事情がある場合は、特別養護老人ホームの特例入所が検討されることがあります。長期の療養のための医療と介護が継続して必要な場合は 介護医療院も候補です。

Q. すぐに見つからないとき、間をつなぐ方法はありますか。

A. ショートステイの利用や、状態が不安定な場合は 医療機関での療養を挟む方法があります。一時的な入居を検討する場合は、ご本人への負担、費用、契約の期間、退去の条件、次の住まいへ移れる見通しを確認してください。あわせて、ご家族が限界に近いときは、ご本人の受け入れ先が決まるのを待たずに、レスパイトの利用を先に組む判断もあります。

まとめ

断られ続けているときは、打診先を増やす前にやることがあります。

  1. 断られた理由を 4 つに分けて聞く(夜間の体制・ほかの入居者・医療面・空室)。次の一手が変わります
  2. 空室が理由なら候補から外さない。条件は合っているということです
  3. 「徘徊」「暴言」でまとめず、場面と頻度、落ち着く対応まで伝えます
  4. 急に症状が強くなっている場合は、認知症の進行だけと決めつけない。主治医に確認します
  5. 候補は グループホーム・認知症対応の介護付き有料・住宅型・特養の特例入所・介護医療院まで広げます
  6. 間をつなぐ選択肢を用意し、ご家族が限界に近いときは順番を変える判断もします

打診先の組み立て直しから、お手伝いできます。ふれあい入居サポートセンター(葛飾相談室)では、ケアマネジャー様からのご依頼を承っています。

参考文献・公的資料

  1. 厚生労働省の公開情報(施設類型、認知症対応型共同生活介護の対象者、特別養護老人ホームの特例入所の考え方。2026年8月閲覧)
  2. ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室 入居相談の実務
  3. 受け入れの可否は施設ごとの入居前アセスメントで判断されます。本記事は打診の進め方を整理したもので、個別の結論を示すものではありません。
  4. 医療的な判断にあたる内容は記載していません。主治医・施設の嘱託医にご相談いただく前提で整理しています。

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