透析そのものは施設で行いません。受け入れが限られる理由は、週2〜3回の通院を誰がどう支えるかが決まらないことにあります。まず送迎から考えてください。

中川 優美Yumi Nakagawa
まず知っておきたいこと
「透析をしています」と伝えた途端に話が止まってしまう。そんな経験をされた方は少なくありません。ただ、断られる理由を正しく知っておくと、探し方が変わります。
まず押さえておきたいのは、透析そのものは施設で行うわけではないということです。多くの場合、週に2〜3回、1回あたり数時間かけて、透析を行う医療機関に通います。つまり施設に求められるのは透析の実施ではなく、通院を支える体制です。
受け入れが限られる理由を分けると、次のようになります。
| 理由 | 中身 | 解けるか |
|---|---|---|
| 通院の送迎 | 週2〜3回。施設が毎回担うのは負担が大きい | ここが最大。解き方は3つある |
| 透析日の体調変動 | 透析の後は血圧が下がる、疲れが出ることがある | 看護体制で対応できることが多い |
| シャントの管理 | 血液の出入り口となる腕の血管を守る配慮が要る | 職員への周知で対応できる |
| 食事の制限 | 塩分・水分などの調整が必要になることがある | 施設の対応力による |
| 緊急時の対応 | 体調が急に変わったときの連絡先 | 事前の取り決めで対応できる |
このうち、実際に入居の可否を左右しているのはほぼ「送迎」です。 そこが決まれば、残りは調整できることが多い——これが実務での感覚です。
ですから、施設を先に探すのではなく、送迎から逆算して施設を絞るのが近道になります。
最大の壁は「送迎」
送迎の解き方は、実質的に3つです。
1. 透析を行う医療機関の送迎車を使う
まずこれを確認してください。 透析を行う医療機関の多くは、患者さんの送迎を行っています。ただし送迎できる範囲が決まっているのが普通です。
確認することは3つです。
- 送迎の範囲はどこまでか(住所を伝えて、その施設まで来られるか)
- 施設への送迎も対象になるか(自宅は対象でも施設は対象外というところがあります)
- 玄関まで来てくれるのか、車まで誰かが付き添う必要があるのか
この範囲が分かると、探すエリアが一気に絞られます。 順序としては、施設を探してから送迎を考えるのではなく、送迎の範囲を先に確認して、その中で施設を探すほうが確実です。
2. 介護タクシー・福祉タクシーを使う
送迎の範囲外にある施設を選ぶ場合、あるいは医療機関が施設への送迎に対応していない場合の選択肢です。
週2〜3回、往復で使うことになりますので、費用が積み上がります。1回あたりの料金と、月あたりの見込み額を必ず計算してください。介護保険が使えるかどうかは、次の章のとおり施設の種類によって変わります。
3. ご家族が担う
近くにお住まいで、時間の融通が利く場合の選択肢です。ただし週2〜3回を長期間続けることになりますので、始める前に無理のない形かをよく考えてください。
ご家族が担う前提で入居を決めたものの、途中で続かなくなり、住み替えを検討することになる——という相談を受けることがあります。最初から「続けられる形」で組むことが大切です。
施設の種類で使える手段が変わる
ここが見落とされやすい点です。介護保険の通院の介助が使えるかどうかは、施設の種類によって変わります。
介護保険の訪問介護には「通院等のための乗車又は降車の介助」(通院等乗降介助)というサービスがあり、要介護1以上の方が対象です。ところが、これを使えるかどうかは住まいの形で分かれます。
| 施設の種類 | 外部の訪問介護 | 通院等乗降介助 |
|---|---|---|
| 介護付き有料老人ホーム・介護型サ高住(特定施設) | 原則として使えない(包括的な報酬に含まれるため。一部の例外を除く) | 原則として使えない |
| 住宅型有料老人ホーム・一般型サ高住 | 外部の事業者と契約して使う | 条件を満たせば使える可能性がある |
| 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院 | 施設サービスに含まれる | 使えない |
| グループホーム | 原則として使えない | 原則として使えない |
つまり、送迎に介護保険を使いたい場合は、住宅型有料老人ホームや一般型サービス付き高齢者向け住宅のほうが選択肢が広がるということです。
一方で、介護付き有料老人ホームは施設の職員による介護が手厚いという利点があります。透析日の体調変動への対応を重視するなら、そちらが向いていることもあります。
「送迎に保険を使えること」と「介護の手厚さ」は、しばしばトレードオフになります。 どちらを優先するかは、ご本人の状態と、送迎をどう解くかによって決まります。
なお、実際に通院等乗降介助を使えるかは、要介護度・ケアプランの内容・保険者の判断によって変わります。担当のケアマネジャーとお住まいの市区町村に必ずご確認ください。 住まいの種類そのものの違いは、別記事「サービス付き高齢者向け住宅と住宅型有料老人ホームの違い」で整理しています。
施設に確認する6項目
問い合わせのとき、次の6点を確認してください。「透析の方は受け入れていますか」だけでは、実態が分かりません。
1. 送迎
- 医療機関の送迎車がここまで来られるか(施設が把握していることがあります)
- 施設として送迎に対応できるか、できる場合の費用
- 送迎車まで職員が付き添えるか
2. 透析日の体調変動
- 透析の後、血圧が下がったり疲れが出たときにどう対応するか
- 看護職員がいる時間帯(透析からの帰りの時間に職員がいるか)
- 体重や血圧の測定を日常的に行えるか
3. シャントのある腕の扱い
血液の出入り口となるシャントは、日常の介助で守る配慮が要ります。
- シャントのある腕で血圧を測らない、採血をしないという注意が職員に共有されるか
- 就寝時や移乗のときに腕を圧迫しない配慮ができるか
4. 食事
- 塩分や水分の調整にどこまで対応できるか
- 主治医から指示が出ている場合、それに沿った食事を用意できるか
- 対応できない場合、どう補うか
5. 入浴
- 透析日の入浴をどう扱うか(透析当日は避けるよう指示が出ることがあります)
- 入浴日を透析日以外に調整できるか
6. 緊急時
- 体調が急に変わったとき、透析を行う医療機関と協力医療機関のどちらへつなぐか
- 夜間の連絡体制
医療的な処置がある方の施設探し全般については、別記事「胃ろう・痰の吸引がある親の入居先」もあわせてご覧ください。
費用の考え方
透析があると医療費が高額になるのではと心配されますが、医療費については仕組みが整っています。
医療費 — 特定疾病療養受療証
人工透析を受けている方は、申請により 特定疾病療養受療証 の交付を受けられます。これがあると、透析にかかる医療費の1か月の自己負担が、医療機関ごとに1万円までになります(70歳未満で所得の高い方は2万円)。
申請先は、加入している医療保険です(国民健康保険なら市区町村、後期高齢者医療なら広域連合、健康保険組合・協会けんぽならそれぞれの窓口)。
医療費 — 障害者手帳と自治体の助成
腎臓の機能の障害により、身体障害者手帳の交付を受けられる場合があります。手帳があると、自治体の医療費の助成を受けられることがあり、自己負担がさらに軽くなることがあります。
助成の内容は自治体によって大きく異なります。 お住まいの市区町村の障害福祉の窓口にご確認ください。
施設の費用と送迎の費用は別
注意していただきたいのは、上の仕組みで軽くなるのは医療費だけだということです。施設の費用(家賃・管理費・食費・介護サービスの自己負担)と、送迎の費用は別にかかります。
とくに介護タクシーを使う場合、週2〜3回の往復が積み上がります。 月あたりいくらになるかを、入居を決める前に必ず計算してください。
介護保険の費用を軽くする仕組みは、別記事「介護費用を軽くする 2 つの制度|高額介護サービス費と負担限度額認定」にまとめています。
探し方の手順
次の順で進めると、行き詰まりにくくなります。
1. 透析を行う医療機関に、送迎の範囲を確認する
いちばん最初にここです。エリアが決まります。
2. 医療機関のソーシャルワーカーに相談する
透析を行う医療機関には、医療ソーシャルワーカーがいることがあります。同じ医療機関に通いながら施設に入居した方の前例を知っていることがあり、実際に受け入れた施設の名前が出てくることもあります。ただし、ソーシャルワーカーは施設を探す立場ではありませんので、情報提供として伺う形になります。
3. 担当のケアマネジャーに相談する
在宅で介護保険を使っている場合は、担当のケアマネジャーに状況を伝えます。ケアプランの見直しや、通院等乗降介助が使えるかの確認もここです。
4. 送迎の範囲内で、施設の候補を出す
5. 上の6項目を各施設に確認する
6. 見学のときに、透析日の1日の流れを具体的に聞く
朝は何時に出るのか、帰ってきてから何をするのか、その日の食事や入浴はどうなるのか。1日の流れで聞くと、対応できるかどうかが見えてきます。
なお、シャントの部分が腫れる・痛む・音が変わった、あるいは透析の予定日に体調が悪いといったときは、様子を見ずに透析を行う医療機関へ連絡してください。 透析は命に直結する治療です。ここは施設に相談する前に、医療につなぐ場面です。
よくあるご質問
Q. 人工透析を受けていても入れる老人ホームはありますか。
A. あります。ただし受け入れている施設は限られます。透析そのものを施設で行うわけではなく、週に2〜3回、透析を行う医療機関へ通うことになりますので、その通院を誰がどう支えるかが決まらないと話が進みません。対応できるかは施設の種類だけでは決まらず、通っている医療機関との位置関係や送迎の手段によって変わります。
Q. 施設が透析への送迎をしてくれますか。
A. 施設が毎回送迎するのは負担が大きく、対応していないところが多いのが実情です。現実的には、透析を行う医療機関の送迎車が施設まで来てくれるか、介護タクシーなどを使うか、ご家族が担うかのいずれかになります。まず医療機関に送迎の範囲を確認し、その範囲内にある施設を候補にすると話が早く進みます。
Q. 介護保険の通院の介助は使えますか。
A. 施設の種類によって変わります。介護付き有料老人ホームなどの特定施設に入居している間は、原則として訪問介護を別に使うことができず、通院等乗降介助も使えません。一方、住宅型有料老人ホームや一般型サービス付き高齢者向け住宅は外部の介護サービスを契約する形ですので、条件を満たせば使える可能性があります。実際に使えるかは担当のケアマネジャーと保険者にご確認ください。
Q. 透析の医療費はどれくらいかかりますか。
A. 特定疾病療養受療証という仕組みがあり、申請すると透析にかかる医療費の1か月の自己負担が医療機関ごとに 1万円までになります(70歳未満で所得の高い方は2万円)。さらに身体障害者手帳の交付を受けられる場合があり、自治体の医療費助成が受けられることもあります。助成の内容は自治体によって大きく異なります。施設の費用と送迎の費用は、これとは別にかかります。
Q. 施設に確認しておくことは何ですか。
A. 送迎・透析日の体調変動・シャントのある腕の扱い・食事の制限・透析日の入浴・緊急時の連絡先の6点です。とくに送迎は、決まらないまま入居すると毎週の負担がご家族に残ります。見学のときは「透析日の1日の流れ」を具体的に聞いてみてください。
まとめ
透析を受けながらの施設探しについて、大切な点を振り返ります。
- 透析そのものは施設で行いません。求められるのは通院を支える体制です
- 断られる理由はほぼ 送迎に集約されます。ここが解ければ残りは調整できることが多いです
- まず医療機関に送迎の範囲を確認し、その範囲内で施設を探します
- 通院等乗降介助が使えるかは施設の種類で変わります。介護付き有料老人ホームでは原則使えず、住宅型有料老人ホームや一般型サ高住なら可能性があります
- 医療費は 特定疾病療養受療証で1か月1万円まで(所得により2万円)。施設費用と送迎費用は別です
- 施設には 6項目を確認します。見学では「透析日の1日の流れ」を聞きます
- シャントの異常や透析日の体調不良は、様子を見ずに医療機関へ
送迎の条件が分からないまま探しても候補は絞れません。どこから手をつければよいか迷われたときは、お気軽にご相談ください。ケアマネジャーの方からのご相談も承っています。
参考文献・公的資料
- 健康保険法施行令 — 特定疾病(人工腎臓を実施している慢性腎不全等)に係る高額療養費の自己負担限度額(e-Gov 法令検索、2026年8月閲覧)
- 指定居宅サービス等の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)— 訪問介護(通院等のための乗車又は降車の介助)および特定施設入居者生活介護(厚生労働省法令等データベース、2026年8月閲覧)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」— 通院等乗降介助の算定要件(2026年8月閲覧)
