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入居後すぐ「合わない」と感じたら
短期解約・クーリングオフ— 90日ルールと前払金の返還を社会福祉士が解説 —

慎重に選んで入居したのに、いざ暮らし始めると「思っていたのと違う」「親御さんに合っていないかもしれない」と感じることがあります。高い費用を払った後だと、「もう引き返せないのでは」と落ち込んでしまうかもしれません。 ですが、入居してすぐの場合には 前払金の一部が戻る短期解約の決まり(90日ルール) があります。本記事では、この決まりと前払金の返還、クーリングオフとの違い、解約の進め方、同じことを繰り返さないための施設選びまでをまとめました。
掲載日:2026.07.11|監修:社会福祉士・入居相談員
この記事の答え

入居してすぐ合わないと感じても、引き返せます。入居後3か月以内なら、前払金から入居日数分などを差し引いた額が返還される決まり(90日ルール)があります。

有料老人ホームなどには、入居後3か月以内に契約を解除した場合、前払金(入居一時金)から実際に入居した日数分の家賃相当額などを差し引いた額を返還する決まりがあります(老人福祉法の短期解約の特例)。これは「クーリングオフ」と呼ばれることもありますが、正確には老人福祉法にもとづく決まりで、無条件に全額が戻るものではありません。3か月を過ぎても、未償却分の返還を受けて解約できます。まずは施設の生活相談員に相談し、次の住まいの情報も並行して集めておくと安心です。
中川 優美(社会福祉士・入居相談員)
この記事の監修者

中川 優美Yumi Nakagawa

社会福祉士。ふれあい入居サポートセンター葛飾相談室にて、入居相談を担当。入居後の住み替えや解約のご相談も含めて、ご家族の住まい選びをサポートしている。
社会福祉士(国家資格)ふれあい入居サポートセンター 葛飾相談室高齢者向け住まい紹介事業者届出 25-0881
編集ポリシー:本記事は、入居後3か月以内の短期解約時の前払金の返還について、老人福祉法 第29条第10項および同法施行規則 第21条に基づいて執筆しています(2026 年 7 月に原文を確認)。返還額の具体的な計算方法は契約書に定められており、施設によって異なります。実際の金額・手続きは各施設の契約書・重要事項説明書でご確認ください。本記事内の事例はイメージで、特定の個人を表すものではありません。

まず知っておきたいこと

慎重に選んだつもりでも、実際に暮らし始めてから「合わない」と気づくことはあります。決して珍しいことではありませんし、選び方が悪かったわけでもありません。まずは、ご自身を責めないでいただければと思います。

入居してすぐに合わないと感じたときは、次のことを知っておくと気持ちが軽くなります。

  1. 入居後でも、解約して別の住まいに移ることはできます
  2. 入居後3か月以内なら、前払金の一部が戻る決まり(90日ルール) があります
  3. あわてて決めず、まず何が合わないのかを整理し、施設に相談することから始めます

高い費用を払ったからといって、我慢して住み続けなければならないわけではありません。引き返せる道はありますので、落ち着いてひとつずつ確かめていきましょう。

「合わない」と感じたら確かめたいこと

解約を考える前に、まず「何が合わないのか」を整理してみましょう。理由によっては、解約しなくても解決できる場合があります。

合わないと感じる理由には、たとえば次のようなものがあります。

  • 食事の内容や生活のリズムが、親御さんに合わない
  • 職員やほかの入居者との相性が気になる
  • 思っていたケアや設備と違った
  • 費用の負担が、続けるには重い

こうした点は、施設の生活相談員に率直に伝えることで、対応を相談できる場合があります。食事や過ごし方の工夫で解決することもあります。

一方で、入居直後は環境が大きく変わったことで、親御さんが一時的に落ち着かなくなることもあります。これは新しい暮らしに慣れる途中の一時的なもので、少し様子を見ることで馴染んでいく場合もあります。「合わない」と感じたのが、環境の変化によるものか、施設そのものによるものかを、少し落ち着いて見極めてみてください。それでも合わないとはっきりしたときに、解約を考えます。

入居後3か月以内の短期解約の決まり

有料老人ホーム(介護付き・住宅型)やサービス付き高齢者向け住宅で、入居時に前払金(入居一時金)を支払った場合、入居後まもない時期の解約には、家計を守るための決まりがあります。

老人福祉法では、入居後3か月以内に契約を解除した場合(または入居者が亡くなって契約が終了した場合)、事業者は、前払金から実際に入居した日数分の家賃相当額などを差し引いた額を返還しなければならないと定められています(老人福祉法 第29条第10項、同法施行規則 第21条)。これが、いわゆる 「90日ルール(短期解約の特例)」 です。

返還されるお金

戻ってくるのは、支払った前払金のうち、まだ使っていない期間に相当する分です。実際に入居した日数分の家賃や、日常生活にかかった費用などは差し引かれます。

返還額の具体的な計算方法は、契約書に定めることになっています。金額の内訳や計算の根拠は、施設に確かめてみてください。前払金の仕組みや返還については、別記事「重要事項説明書の読み方」でも触れています。

クーリングオフとの違い

この決まりは「クーリングオフ」と呼ばれることもありますが、正確には老人福祉法にもとづく短期解約の決まりで、特定商取引法のクーリングオフとは別のもの です。訪問販売などのクーリングオフのように「無条件で全額が戻る」わけではなく、実際に入居した日数分の費用は差し引かれます。

呼び方にとらわれず、「入居してすぐに合わなかったときは、前払金の一部が戻る仕組みがある」と覚えておいていただければ十分です。

3か月を過ぎた場合の解約

入居から3か月を過ぎても、解約はできます。この場合は、短期解約の決まりではなく、通常の中途解約として扱われます。

入居一時金(前払金)を支払っている場合は、想定していた居住期間より前の退去であれば、まだ使っていない期間に相当する 未償却分 が返還されるのが一般的です。前払金は、契約時に定めた想定居住期間をかけて少しずつ償却(費用として差し引くこと)されていく仕組みで、途中で退去すると、残りの分が戻ってくる考え方です。

返還額の計算方法は契約書に明示されていますので、金額の内訳を施設に確かめてください。退去にまつわるお金については、別記事「老人ホームから退去を求められたら」の後半でも詳しくお伝えしています。

解約の進め方

解約を進めると決めたら、次の順番で動いていきます。住む場所がない空白の期間を作らないよう、次の住まいと並行して進めるのがこつです。

1. 施設の生活相談員に相談する

まずは施設の生活相談員に、解約を考えていることを伝えます。合わない理由によっては、解決策を一緒に考えてもらえることもあります。解約する場合の手続きや、返還額の見込みについても確かめておきます。

2. 解約の予告期間を確かめる

契約書や重要事項説明書には、入居者側から解約する場合の予告期間(何日前までに伝えるか)が定められています。手元の書類で確かめておきましょう。

3. 書面で解約を伝える

「言った・言わない」を避けるため、解約の意思は書面で伝えるのが確実です。伝えた日付が分かるようにしておきます。

4. 返還額の内訳を確かめる

戻ってくる前払金の金額と、その計算の根拠を施設に確かめます。納得できないときは、消費生活センター(局番なしの188)に相談する道もあります。

5. 次の住まいの情報を集める

解約と並行して、次の住まいを探します。今回合わなかった理由が、次の施設選びでいちばん大切な条件になります。

同じことを繰り返さないために

せっかく住み替えるなら、次こそ親御さんに合った施設を選びたいものです。同じことを繰り返さないために、次の点を意識してみてください。

  • 今回合わなかった理由を、次の施設選びの条件にします。「食事」「相性」「費用」など、はっきりさせておきます
  • 見学でよく確かめます。実際の暮らしの様子や職員の対応を見るポイントは、別記事「老人ホームの見学で必ず見る12のチェック」にまとめています
  • 体験入居やお試しを活用します。短期間だけ実際に暮らしてみることで、合うかどうかを確かめられる施設もあります
  • 候補の施設に、これまでの経緯を正直に伝えます。合わなかった点を伝えたうえで、対応できるかを確かめると、ミスマッチを避けやすくなります

一度合わない経験をしたことは、決して無駄ではありません。「何が合わなかったか」が分かったことで、次の施設選びの精度は上がります。前向きに、次の一歩を考えていきましょう。

よくあるご質問

Q. 入居してすぐですが、合わないので解約できますか。

A. 解約できます。有料老人ホームなどには、入居後3か月以内に契約を解除した場合、前払金から実際に入居した日数分の家賃相当額などを差し引いた額を返還する決まりがあります(老人福祉法の短期解約の特例、いわゆる 90日ルール)。入居してすぐに合わないと感じたときの、家計を守るための仕組みです。まずは施設の生活相談員に相談してみてください。

Q. これは「クーリングオフ」と同じですか。

A. 呼び方として「クーリングオフ」と言われることもありますが、正確には老人福祉法にもとづく短期解約の決まりで、特定商取引法のクーリングオフとは別のもの です。無条件で全額が戻るわけではなく、実際に入居した日数分の家賃などは差し引かれます。返還の計算方法は契約書に定められていますので、施設に確かめてみてください。

Q. 3か月を過ぎてしまいました。もう解約できませんか。

A. 3か月を過ぎても解約はできます。入居一時金(前払金)を支払っている場合は、想定していた居住期間より前の退去であれば、まだ使っていない期間に相当する 未償却分 が返還されるのが一般的です。返還額の計算根拠は契約書に明示されていますので、金額の内訳を施設に確かめましょう。

Q. 何が合わないのか、うまく言えません。

A. 無理にはっきりさせる必要はありません。食事・生活のリズム・職員との相性・ほかの入居者との関係など、合わないと感じる理由はさまざまです。まずは施設の生活相談員に率直に伝えてみてください。入居直後は環境の変化で一時的に落ち着かないこともあり、少し様子を見ることで馴染む場合 もあります。

Q. 解約するとき、次の住まいはどうすればよいですか。

A. 解約と並行して、次の住まいの情報を集めておくと、住む場所がない空白の期間を避けられます。今回合わなかった理由を、次の施設選びでいちばん大切な条件にすると、同じことを繰り返しにくくなります。次の施設探しのご相談は、ふれあい入居サポートセンターの無料相談もご利用いただけます。

まとめ

入居してすぐ「合わない」と感じたときの選択肢について、大切な点を振り返ります。

  1. 入居後でも 解約して別の住まいに移ることはできます。我慢して住み続ける必要はありません
  2. 入居後3か月以内なら、前払金から入居日数分などを差し引いた額が返還される決まり(90日ルール) があります
  3. これは「クーリングオフ」と呼ばれますが、正確には 老人福祉法の短期解約の決まり で、全額が戻るわけではありません
  4. 3か月を過ぎても、未償却分の返還 を受けて解約できます
  5. 解約は、次の住まいと並行して進め、合わなかった理由を次の施設選びの条件 にします

一度合わない経験をしても、それは次の施設選びに必ず生きます。ご家族だけで抱え込まず、次の住まい探しに迷ったときは、お気軽にご相談ください

参考文献・公的資料

  1. 老人福祉法 第29条第10項(前払金の返還)(e-Gov 法令検索、2026年7月閲覧)
  2. 老人福祉法施行規則 第21条(家賃等の前払金の返還方法・入居後3か月以内の契約終了時の取り扱い)(e-Gov 法令検索、2026年7月閲覧)
  3. 厚生労働省「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」(令和6年12月6日改正、2026年7月閲覧)— 前払金・短期解約に関する事項
  4. 返還額の具体的な計算方法は契約書に定められ、施設により異なります。実際の金額・手続きは各施設の契約書・重要事項説明書でご確認ください。

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